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鈴木宗男氏の上告が棄却され、実刑が確定したことに関して、昨日(9月8日)、とあるブログで「今日は、国民の憎悪が検察に向けられる記念日です。祝日にしましょう。」というタイトルの記事(http://richardkoshimizu.at.webry.info/201009/article_22.html)を見て、目を疑った。そこには、

「NYのユダヤ人が、日本で飼っている検察のゴロツキどもを使って冤罪で陥れた日露フィクサー、鈴木宗男先生が収監されます。

いつまでも日本を支配下に置き、日本から生き血を吸いたいNYの金融ユダヤ人たちは、下品な検察のゴロツキ役人を使って、鈴木氏を排除することで「二島先行返還」による日ロ関係改善を阻止したのです。そして、今日、鈴木氏の冤罪は、ついに実刑として確定してしまいました。今日は、その意味で日本検察が金融ユダヤ人に飼われたゴロツキ・人間の屑であると確定した記念日でもあります。鈴木先生、どこにあっても戦うことは可能です。逆境での奮闘の仕方を我々に見せてください。」

と書かれていたのだ。鈴木宗男氏がユダヤの手先である検察によって事件をでっち上げられ、実刑を押しつけられたの? 私はこれまでずっと、鈴木宗男氏はイスラエルと大変深い友好関係を持っている政治家だとばかり思ってきたのだけど。現に、鈴木氏の盟友と思われる佐藤優氏は次のように述べている。

「日本の政治家、外交官で、対米配慮からイスラエルに対する友好関係を口にする人たちは時折います。しかし、日本の国益のために政治的リスクを冒して日本とイスラエルの関係を勧めようとした政治家は、私が知る中では鈴木宗男さんだけです。」(『国家の罠』岩波書店2006年12月)

また、昨年の初頭、イスラエルによるパレスチナ自治区・ガザへの見境のない猛攻撃が行なわれていた最中、週刊誌などで、イスラエルの攻撃は正当である、悪いのはハマスだ、パレスチナだ、というようにイスラエル全面擁護論を展開した佐藤氏に加えて、鈴木宗男氏も、こちらのサイトで次のような指摘を受けていた。

「イスラエルがガザ地区に対して攻撃を加える最中、新党大地の鈴木宗男衆議院議員が、「ハマスがテロリストである事を政府に対して確認する質問主意書」を繰り返し提出している事が判明しました。
内容的には、「ハマスがテロリストである」とすることで、イスラエルによる虐殺を正当化するものであるのみならず、それをファタハのパレスチナ自治政府、パレスチナ民衆全体をも「テロリスト」だとして描き出そうとする、恐るべきものでした。」

このサイトには、鈴木氏からの日本政府に対する幾つもの質問書が掲載されているが、これによると、鈴木氏は、イスラエルのガザ攻撃に対して日本政府が、「イスラエル、パレスチナ自治政府、エジプト、イラン等の政府関係者」と電話協議をしたり、「一千万ドル規模の緊急人道支援、有馬龍夫外務省参与(中東和平問題担当特使)の現地派遣による現地政府要人に対する停戦に向けた働きかけといった関与を行ってきた。」ことについて執拗な質問を行ない、暗に政府のパレスチナへの支援行為を批判している。この質問書を読むかぎりでは、鈴木氏も、佐藤氏同様、日本政府は全面的にイスラエル寄りの位置に立つよう働きかけているとしか思えない。

佐藤氏といい、鈴木氏といい、イスラエルにすればこんな有り難い人物は日本国中探してもそうそう見つからないはずだ。こういう貴重な人材(しかも大物政治家)を「NYのユダヤ人」の命を受けた検察が陥れるというようなストーリーが成り立つの? どうして? 何の目的で? 荒唐無稽すぎて私には想像もおよばない。

このブログだけではない。鈴木氏の上告棄却を受けて佐藤優氏も早速、「佐藤優の眼光紙背:第79回」において、「なぜ最高裁はこのタイミングで鈴木宗男衆議院議員 の上告を棄却したか?」というタイトルの下、超主観的というか、陰謀論的というか、いつもながらの佐藤氏特有の論説を披露している。

 「 このタイミングで最高裁判所の司法官僚が鈴木氏の上告棄却を決定したことは、きわめて合理的だ。それには2つの理由がある。

 第1の理由は、9月10日に大阪地方裁判所で行われる村木厚子元厚生労働省局長の裁刑事判で、無罪判決が予想されているからだ。そうなれば特捜検察は正義の味方であるという神話が裁判所によって覆される。当然、世論の特捜検察の取り調べに対する疑念と批判がかつてなく強まる。そうなると、「国策捜査」によって事件が作られたという鈴木氏の主張を完全に無視することができなくなる。

 第2の理由は9月14日の民主党代表選挙で小沢一郎前幹事長が当選する可能性があるからだ。最高裁判所の司法官僚にとっては、これも頭痛の種だ。小沢氏は鈴木氏の政治的能力を高く評価している。そもそも鈴木氏を衆議院外務委員長に抜擢したのは小沢氏だ。小沢政権になれば鈴木氏が政府の要職に就くなど、政治的影響力が高まるのは必至だ。そうすれば排除が困難になる。」

上の文章のうち、「村木厚子元厚生労働省局長の裁刑事判で、無罪判決が予想されている」ことについてはそのとおりなのだろうが、これは何ら驚くべきことでも意外なことでもない。私たち大衆は、冤罪が多発していることもよく知っているし、またその中には単なる過誤ばかりではなく、でっち上げもかなり入っているのではないかという疑いも常々持っている。しかし、村木さんが無罪判決を受けたら、検察は、「「国策捜査」によって事件が作られたという鈴木氏の主張を完全に無視することができなくなる」という佐藤氏の主張はどうだろうか。裁判所は、村木さんが事件への関与を認めた供述調書の大半を採用しなかったというではないか。鈴木氏や佐藤氏の場合とは全然事情が異なっているらしいこともさることながら、そもそも「特捜検察は正義の味方であるという神話」など今さら無邪気に信じている人はそういないだろう。佐藤氏も鈴木氏も、自分たちを「国策捜査」の犠牲者だというのならば、その訴えを真に理解してもらうためになすべきことは、裁判の経過を公にすることだったのではないだろうか。特に事件の核心部分については欠かせなかったはずである。

私は、4、5年前から佐藤氏らがあれほど「国策捜査」を訴えているのだから、その訴えを証明しえる(読者の立場からすれば検証可能な)具体的かつ詳細な裁判記録が雑誌やネット上に公開されるのではないかと思ってきたが、いまだにそれはなされていないようなのだが? 無実を主張する以上、その根拠、証拠をきちんと表示するのは当人の当然の責任であり、これまで無実(「国策捜査」の場合も同様のはず)を訴える一般市民は誰でもそのようにしてきたはずである。鈴木氏、佐藤氏が忙しくてそれができないのならば、『岩波書店』、『週刊金曜日』、『講談社』など、佐藤氏が連載を持っている雑誌社、あるいは魚住昭氏、青木理氏などの親しいライターなど人材には事欠かないのだから、依頼すればよかったのではないだろうか。私はその欠如をかねがね不審に感じてきた。青木氏などは、佐藤氏の有罪が確定したとき、『週刊金曜日』に「「国策捜査」追認する最高裁佐藤優氏上告棄却で有罪に」というタイトルで、次のように書いている。

「多くの人が既に周知の事実として認識しているように、これらはいずれも、政界やメディアなどを覆い尽くした鈴木宗男氏バッシングの中で「ムネオ逮捕ありき」の捜査に突き進んだ検察が無理矢理に描き出した「虚構の絵図」に過ぎない。いまさら語るまでもないが、佐藤氏は二〇〇五年に『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)を著し、「国策捜査」という言葉を人口に膾炙させるきっかけをつくった。その後の活発な言論活動を含め、佐藤氏の言説が広く受け入れられているのは、検察捜査の歪みを何よりも雄弁に物語る。」(「金曜アンテナ」2009.07.10)

お分かりのように、「虚構の絵図」である根拠は示されていない。また、「「国策捜査」という言葉を人口に膾炙させるきっかけをつくった」ことや「佐藤氏の言説が広く受け入れられている」ことが、「検察捜査の歪みを何よりも雄弁に物語る」という青木氏の主張はあまりにも無責任である。裁判は一にも二にも証拠、根拠である。根拠なしの無実の主張などあり得ないことは誰でも分かること。まして青木氏は物書きではないか。これは上述した雑誌社にも言えることだが、私は今では「国策捜査」であることの根拠を明示しようにも明示できないので、こういう詭弁を用いてすましているのではないかという疑いさえおぼえる。

さて、このタイミングで最高裁が鈴木氏の上告棄却を決定したことのもう一つの理由として、佐藤氏は、下記の点を挙げている。

「小沢氏は鈴木氏の政治的能力を高く評価している。そもそも鈴木氏を衆議院外務委員長に抜擢したのは小沢氏だ。小沢政権になれば鈴木氏が政府の要職に就くなど、政治的影響力が高まるのは必至だ。そうすれば排除が困難になる。」

鈴木氏を衆議院外務委員長に抜擢したのは小沢氏だということを佐藤氏のこの証言で私ははじめて知ったが、鈴木氏の有罪の可能性がきわめて高いということは小沢氏も重々承知していたはずである。それにもかかわらず、鈴木氏を重要な役職に任命したというのは、小沢氏の政治的失点であろう。それ以外に感想は浮かんでこない。

鈴木氏は記者会見で、検察のなかに青年将校がいて、その人たちが自分に対する「国策捜査」をでっち上げたというような趣旨の話をしていた。これは佐藤氏の持論でもあるようで、私は佐藤氏がそのように述べるのを昨年から今年にかけて何度か聞いた覚えがある。民主党政権になったら検察には都合が悪いことがあるというような話だったと思うが、しかし、佐藤氏は、たしか2005~2006年頃にも同じことを言っていた。魚住昭氏との対談か座談会でそのような話をしきりにしていたのを私は週刊誌で読んだ記憶があるのだが、もちろん当時は自民党政権下であった。

そもそも現在の検察が青年将校化しているというのはどういう意味なのだろうか? 「青年将校」と聞いて私たちがとっさに思い浮かべるのは、戦前の海軍および陸軍の若い将校たちによって引き起こされた「5・15事件」とか「2・26事件」のようなテロを含んだ国家革新運動であるが、両者の間に一体どのような類似性、共通性があるのか、私などにはさっぱり分からない。具体的な説明や指摘もなくこのような特異かつ意味不明の言辞が飛び交う現状に私は不審と危険を感じる。
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2010.09.09 Thu l 裁判 l コメント (0) トラックバック (1) l top

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