家庭をやさしさで満たすことの効用『家族のトリセツ』
おはようございます。やまのてです。
先日読んだ黒川伊保子さんの『妻のトリセツ』が面白かったので、今回は『家族のトリセツ』を読みました。
めちゃくちゃいい本でした。
本書は、脳の仕組みから考える、「家族とはどういうものなのか」「どういう接し方がいいのか」「逆にどういう接し方はまずいのか」、そういうことを解説するエッセイ集です。
『妻のトリセツ』同様、様々な現実的なシチュエーションにおけるケーススタディが用意されており、とても参考になります。
「とにかく甘やかすでいい」というのが著者の論で、家の中はやさしさに満ちているのがいいということでした。
- 家族のトリセツ (NHK出版新書)
- NHK出版
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失敗は宝 家は休む場所
人は、何から学ぶかといえば、それは失敗であり、いかに多くの失敗を重ねるかで人生の豊かさは変わるとよく言われます。
脳科学的には、失敗をすることで、脳がその回路を「使わなくていい回路」として認識し、寝ている間に回路の整理を行い、次からそうではない回路を使うようになるそうです。
センスがいい、勘がいい、発想力がある、展開力がある。こういう能力は、知識(成功事例) の上書きでは手に入らない。自ら失敗して痛い思いをすることで、脳の中に「信号が行きにくい場所」ができ、「信号が行きやすい場所」が浮き立ってくる。そうして手に入れる能力なのである。
家族のトリセツkindle版位置: 578
したがって、正しい失敗の仕方は、以下のとおり。 一、失敗を恐れず、挑戦すること。 一、失敗してしまったら、潔く失敗を認め、きちんと胸を痛めること。 一、「今夜、頭がよくなる」と信じて、 清々しい思いで眠ること。 これが脳を最大限に活性化する失敗法である。
家族のトリセツkindle版位置: 635
つまり、失敗をすると、寝てる間に頭がよくなる。
ということで、しっかり寝れることが大切なのですね。
これが家族とどう関係するのかといえば、要するに「人は外で学んでくる」ので「家では休むことが大事」ということです。
失敗をしやすくできる環境が必要で、失敗をしていいんだと学ぶ環境が必要で、失敗してもリカバリーできる環境が必要で、それができるのが家であり、家族なのかもしれません。
「確信」が持てないと、「承認」や「賞讃」を求めて、「他人の思惑」を生きる人になってしまう。「他人の思惑」を生きると、永遠に「確信」に至らないから、さらに「承認」を求めて、心の 飢餓 地獄を生きることになる。 そして「確信」に至るためには、失敗を重ねないといけない。脳はそういうふうに出来ている。だから、「失敗」を忌避したり、恐れたり、ましてやなじったりする子育ては、考えられなかった。
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ここまで述べてきた、せっかくの失敗を、脳に活かす三つのコツをまとめよう。 一、失敗を誰のせいにもしない。 一、過去の失敗をくよくよ言わない。 一、未来の失敗をぐずぐず言わない。 本番の勝負では、失敗は避けなければいけない。 けれど、家庭を「本番の勝負と同じ場所」にしておく必要はない。家庭は、失敗を許し、それを脳に最大限に活かす場所にしておけばいい。
家族のトリセツkindle版 | 位置: 810
こうしたことを実践するために、著者の家庭には「失敗した人はその失敗をリカバリーしなくていい」という暗黙のルールがあるそうです。
失敗した人が一番びっくりしているのだから、周りが後処理をフォローすることで、本人は学びを得ながら、家族の共感を得ることができ安心できるという。
素晴らしいなぁと思いました。
たとえば、我が家には、失敗した人は、その後の片づけをしなくていい、という暗黙のルールがある。 コップを割った人は、「大丈夫?」「けがはない?」と言われて、抱きしめてもらえる。片づけは、他の家族がやる。まぁ、そうは言いながら、本人が片づけることも多いけれども、片づけなくても許されると知っているだけで、勇気が出る。 なくしものは、家族全員で捜索する。リカバーが必要なことは、家族全員で善後策を考える。誰かが悲しい思いをしたときには、おしくらまんじゅうのように押し寄せて、二重三重にハグして、なぐさめる。 だから、1人でコップを割ってしまったときや、1人で悩むときは、寂しくてしかたない。ここに家族がいて欲しいと切に思う。
家族のトリセツkindle版 | 位置: 1,292
凸凹は仕方ない プラスとマイナスはセット
脳科学的には、凸凹というのは当たり前なのだそうです。
問題解決能力が高い人は周りが見えず、共感力が高い人は結論を急げない。
しかし、それが個性というもので、周りを見ようとすればその人の目的解決能力は弱まり、結論を急げば共感力が減じる。
けれど、それも、よくよく考えれば、私の遺伝なのである。私も、いつでも、何かを探している。きっと傍から見たら、私も絶望的な「ぐずぐず」「ぼんやり」なのだろう。 それがわかっているのなら、治そうと努力すればいいのに、と思われるかもしれないが、そう簡単じゃない。私たち母子の「ぐずぐず」「ぼんやり」を、誰かが治すことができたら、そのときは、私たちらしさが失われるときである。私は本が書けないし、息子は森が開拓できなくなる。
家族のトリセツkindle版 | 位置: 570
個性はプラスとマイナスのセットで受け入れることが大事ということでしょう。
そして、著者はそのために「家族は弱点を甘やかせることが大事」と論じます。
感性の尖った部分=その個体が生き残るための才能(おおむね世間から見て長所と言われる) をうまく使うためには、凹んだ部分=その個体の弱点(世間からは必ず否定される) を温存する必要がある。 つまり、他人の評価をまったく気にしない強さか、弱点をチャーミングだと思って、甘やかし、支えてくれる人が要るということだ。それこそが、家族の真の役割なのではないだろうか。 ≪中略≫ならばいっそ、弱点をチャーミングだと思える相手と、結婚すべきなのでは? 長所を判定基準にするよりも、たとえ、世間が彼女(彼) をののしっても、それでも甘やかしたいと思う相手と。 弱点を容認し合う──これを家族の原点としたらどうだろうか。
家族のトリセツkindle版 | 位置: 442
さて、そろそろ家族を甘やかしたくなってきたのではないでしょうか。
でもまだ甘やかすことに、優しくすることに抵抗があるかもしれません。
そんな私たちない著者は優しく諭してくれます。
「家族や友人の弱点、怠惰やわがまま」をひたすら許す1週間とか、作ってみたらどうだろう。最初はきついかもしれないが、許してもらった人の反応があまりにも素敵で(心から反省してくれたり、ねぎらってくれるようになったり)、けっこう癖になるかもしれない。 やがて、自分の弱点も、家族にさらけ出せるようになって、自分自身が許せるようになるはず。 弱点は、チャームポイントだ。それを、自分自身の潜在意識に叩きこむのである。自分が誰かにそうすることで、自分の脳に「優しさの証明」をするのだ。自分を許せた日から、「人生は不公平」が消える。だって、得する側に回ってしまうのだから。
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ということで、まずは家からやさしさの泉を湧かせましょう。
源泉はあなたでいいではないですか。
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最後にそうしたやさしさのあふれる家庭を実現させるために覚えておきたいことを2つメモしておきます。
答えのいらない5W1Hは基本的に威嚇(マウンティング)(同著位置:1317)
→どうしたの?と聞いてみよう
向上心と正義感が家族関係をとげとげさせる。(同著位置:1162)
→どうしても真面目さに苦しむのなら、距離を取るのが吉
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