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『Splatoon(スプラトゥーン)』が大ヒットするためには何が必要か

 今年のE3で話題をかっさらった任天堂の新作ゲーム『Splatoon(スプラトゥーン)』。



 Twitterの自分のタイムラインでも期待する声が山ほど挙がりましたし、自分も含めブログに「『Splatoon(スプラトゥーン)』がどうしてこんなに楽しみか」という記事を書く人もたくさん現れました。日本では特に「据置機が次世代機になっても大して変わらないね……」という空気が強かったこともあって、新しい時代を感じさせるゲームの登場に胸が躍った人も多かったのでしょう。

 しかし、そうなると今度はカウンターで。
 『Splatoon(スプラトゥーン)』を楽しみだという記事を書いた人達に対して、「禄にFPSもTPSも知らないクセに知ったかぶって」とか「発売前のゲームを過剰に持ち上げるようなことを言って責任が取れるのか」とか、『Splatoon(スプラトゥーン)』に対してというよりも“『Splatoon(スプラトゥーン)』に期待する人達”への批判が巻き起こっていて。



 じゃあ、ウチのブログとしてはもっともっと『Splatoon(スプラトゥーン)』に対する期待の記事を書き続けなきゃな!と思った次第であります。
 「書くな」と言われたら書きたくなる。「書け」と言われたら書きたくなくなる。このご時勢にわざわざブログなんて書いている我々は「どうしても自分の意見を書き残したい人達」なんだから、「書くな」なんて言われたら「何くそー」と思うに決まっているじゃないですか。



 さて……こんな風にネット上で話題を集めている『Splatoon(スプラトゥーン)』が、仮に発売してみて期待通り超面白かったとして、日本国内でどれだけ売れるのかと言うと……私は「このままなら大して売れない」と思っています。ネットで絶賛を集めているゲームが、売上としては大したことがなくて「知る人ぞ知る名作」みたいに言われてしまうことは今までもありました。『Splatoon(スプラトゥーン)』もそうなる可能性が極めて高いぞと思うのです。

 「大ヒット」の定義は難しいですが、とりあえずこの記事では「日本国内で100万本の売上」という条件にしましょうか。『Splatoon(スプラトゥーン)』はそれくらい売れることが出来るのか、そのためには何が必要か、今日の記事ではそれを考えていこうと思います。




1.今、『Splatoon(スプラトゥーン)』に期待している人達はどういう人達か
 私はこの記事の冒頭で『Splatoon(スプラトゥーン)』を“今年のE3で話題をかっさらった”と書きました。しかし、それは裏を返せば「E3に注目している人達の中」で言えば「『Splatoon(スプラトゥーン)』に注目している人が多かった」というだけの話です。

 今年のE3では特に、XboxOneやPS4のカンファレンスに「銃を撃つリアルなグラフィックのFPSやTPS」が多かったために、そうした映像に食傷気味だった人達がWii Uの「一味変わったTPS」である『Splatoon(スプラトゥーン)』に注目をした―――という流れがあったみたいです。

 しかし、日本でゲームを100万本売ろうとするなら、「E3」も「FPS」も「TPS」も全く知らないような人達を相手に売り込まなければなりません。「今までのTPSとはここが違うんですよー」と言っても「TPSって何の略ですか……」って思われてしまうような人達に、『Splatoon(スプラトゥーン)』をどう売っていくのか。これは果てしなく難しそうな課題です。


 ちなみに冒頭で埋め込んだ『Splatoon(スプラトゥーン)』の出展映像の再生回数は、6月23日時点で約20万回です。私はこの動画を1人で20回は再生しているので、20万回を20回で割って1万人しかこの映像を観ていない計算になるのですが(笑)。
 もちろんライブ映像でのみ観たという人も、eShopの映像で観たという人もいるでしょうし、今年のE3に任天堂が出展した映像の中でも再生回数は高い方なんですが。国内100万本を売ろうと考えるなら、これからどんどん知名度を上げていく必要があるのです。

 アメリカではどうだか分かりませんが、日本市場においては「E3で話題をかっさらった」だけでは勝者になれないんですね。


2.完全新作のゲームでどう注目を集めるか
 そう言えば、任天堂はこんなページを作っていました。

 Nintendo News


 これって、「ニャニャニャ!ネコマリオタイム」と同じような狙いだと思うんですね。




 “注目を集めているゲームの情報”と“まだ注目を集めていないゲームの情報”をセットで提供しようという試みです。ニンテンドーダイレクトにも同様の意図があったと思いますが、数ヶ月に1度のニンテンドーダイレクトよりも、もっと定期的に更新できる場所を作ろうとしているみたいです。

 今の若いもんには想像もつかんかも知れんがのぅ、わしらの若い頃にはインターネットなんてものはなかったから、「ゲーム雑誌」とか「ゲーム屋のチラシ」とか「ゲーム屋の棚」とかでまとめてゲームの情報を得ることしか出来んかったのじゃよ……ふぉっふぉっふぉっ。


 という昔話はさておき。
 インターネットが普及することで、「個別のゲームの情報」は発信しやすくなったし受信もしやすくなったと思います。ほとんどのゲームには公式サイトがありますし、そこでPVは見られますし。ゲーム情報サイトでは、それぞれのゲームのスタッフインタビュー記事が読めたりするもので……「深く」情報を得ることは出来るようになったと思うのですが。

 逆に言うと、「目当てのゲーム」以外のゲームの情報ってなかなか見に行きませんよね。
 私だって、全然興味のないゲームの公式サイトなんか見ませんし、PVも再生しませんし、スタッフのインタビューも読みに行きませんもの。ゲーム屋さんにも行かず、Amazonで欲しいゲームのページだけ開いてポチるだけ。「興味のないゲームの情報」に触れる機会が減っているんです。インターネット時代になって「深く」情報を得ることが出来るようになった一方で、「広く」情報を得る機会は減っていると思うのです。


 『Splatoon(スプラトゥーン)』は完全新作ですから、現時点では全く知名度がありません。このまま発売しても、「ゲームの情報を広く集めようとしている人」にしか手に取ってもらえないことでしょう。
 任天堂はWiiの時に「完全新作のゲームを売ることの難しさ」を痛感しているので、『Splatoon(スプラトゥーン)』に限ったことではありませんが、「Nintendo News」や「ニャニャニャ!ネコマリオタイム」を始めたんだと思います。


 『スマブラ』や『ポケモン』や『マリオカート』の情報を目当てにアクセス&再生した人に、『Splatoon(スプラトゥーン)』の情報を見せつける!すっごい地味で地道な作戦ですけど、こうやって少しずつ知名度を上げていくのは一つの手でしょうね。


3.「Wii U専用ソフト」によるジレンマ
 『Splatoon(スプラトゥーン)』がE3で発表された際、これまで「Wii Uはソフトがないから買わない」と言っていた人が、「『Splatoon(スプラトゥーン)』はどうしてWii Uで出すんだ!3DSで出してくれれば遊べるのに!」と言っていて。どっちやねん、とツッコまざるを得なかったという。


 しかしまぁ……これは難しい話で。
 任天堂からすれば、『Splatoon(スプラトゥーン)』はWii Uを代表する「Wii U専用ソフト」として売り出したいでしょう。ゲームパッドを駆使したゲームなんですよとE3で繰り返し言っていたくらいですから。だから、安易に「3DSでも出せば売れそうだから3DSでも出します」なんて展開にはならないと思うのですが。


 ただ、「Wii U専用ソフト」として出して売れるのか―――という不安も確かに大きいです。
 まずは「普及台数」。2014年3月の時点で日本国内でのWii U普及台数は約180万台だそうで、『Splatoon(スプラトゥーン)』が国内100万本を売るためには「Wii U所有者の過半数に売らなくてはいけない」という苦しい状況です。

 ただ、逆に言えば『Splatoon(スプラトゥーン)』がWii Uを普及させるという可能性だって全然ありますし、そういう時に大事なのは「『Splatoon(スプラトゥーン)』のためだけにWii Uを買うのはイヤだなぁ」という人の背中を押す『Splatoon(スプラトゥーン)』以外のソフトを充実させることなので。実はあまりここは重要じゃないかなと思っています。

 任天堂だってそれが分かっているから、『マリオカート』や『スマブラ』だけじゃなくて『ベヨネッタ』や『デビルズサード』を支援しているのでしょうし、『ゼルダ無双』や『女神転生meetファイアーエムブレム』みたいなコラボも行っているのでしょう。


 私が不安なのは、据置機のソフトは口コミで広がっていかないという点です。
 DSで『脳トレ』が広がったり、PSPで『モンハン』が広がったり、最近ではスマホで『パズドラ』が広がったりした背景には、携帯機でゲームを遊んでいる姿が宣伝になるし広告塔にもなるということがあったと思います。携帯機のソフトは、比較的シリーズソフトでなくても口コミで広がっていく土壌が日本にはあると思うのです。

 では、据置機ではそれがムリかというと……そんなことはなく。
 例えば、『Wii Sports』のように自宅に遊びに来た友達と一緒に遊べるようなゲームは、友達と一緒に遊ぶということが宣伝になっていきます。
 これは別に『Wii Sports』だけでなく、『スマブラ』だって『みんゴル』だって『ファミスタ』だってそうだったと思います。友達と一緒に遊びたいから友達を自宅に呼ぶ、呼ばれた友達は一緒に遊んだそのゲームを知る、自分も欲しいなと思って買う、買ったからには自分も友達を呼びたいなと新たな友達を呼ぶ――――


 つまり、焦点はここです。
 『Splatoon(スプラトゥーン)』には、「友達が自宅に遊びに来た時に一緒に遊べるようなマルチプレイモードが入っているのか―――」

 もしオンラインでしかマルチプレイが遊べないのなら、それは『Splatoon(スプラトゥーン)』を持っている人同士でしか遊べませんし、Wii Uを持っている人同士でしか遊べません。それでは口コミも何もあったもんじゃありません。
 しかし、オフラインのマルチプレイを入れようとすると今度は新たな問題が生まれます。「Wii Uゲームパッドを活かしたゲーム」なのに、Wii Uにはゲームパッドが1台ずつしか接続できないという問題。これではオフラインのマルチプレイは難しいじゃないか―――と。


 ということで……既にこの疑問はスタッフにインタビューされていて、『Splatoon(スプラトゥーン)』のオフラインマルチプレイのモードがあるけど「オンラインのマルチプレイとは異なるルールの1vs1のモード」「1人がゲームパッド、もう1人がPROコンを使う」と回答されているそうです。

 WiiU『Splatoon』はパッケージタイトルとして発売予定。シングルプレイやローカルマルチプレイモードも搭載
 ‘Splatoon’ Will Feature Local Multiplayer and Single Player Modes(←原文)

 私としては、簡単な番外ミニゲーム的なものであってもオフラインで4~5人で遊べるモードも入れた方がイイとは思っているんですけどねぇ。「イカを動かすのがキモチイイ」「インクを撃つのがキモチイイ」ことを体感させるためにも。
 ただ、あんまりモード数を増やしていくと開発期間が膨大になってしまいそうだし、その辺は難しいんですかね。


4.「体験版」か、「F2P」か
 さて……この記事は、『Splatoon(スプラトゥーン)』が国内で100万本を売り上げるためにはどうすればイイのかみたいな方向性で書き始めましたけど。ぶっちゃけ今の日本のゲーム市場は「大ヒット=パッケージソフトを100万本を売る」というだけじゃないですよね。


 これはちょうど1年前のE3のアナリストブリーフィングの質疑応答(A3)から。

<以下、引用>
 デジタルの形でソフトウェアが供給できるようになったことで、私たちがお客様にソフトを提供し、そこでどのようにマネタイズ(収益化)するかという方法に自由度が生まれました。

 ただし、マリオやポケモンのようなゲームをFree to Play型にしようと考えているわけではありません。なぜかと申しますと、マリオやポケモンのようなゲームは、パッケージソフトとして最初にまとまった金額を払っていただける信頼関係が、すでにお客様との間に確立できているからです。
 一方で、私たちが、何かまったく新しいチャレンジをするときに、お客様は「それがまだ面白いかどうかわからない」としたらどうでしょうか。お客様は、それにまとまったお金を払ってよいものかどうかわかりません。そのようなときに、過去の任天堂のプラットフォームではできなかった、さまざまな柔軟なマネタイズの仕組みがある今のプラットフォーム(ニンテンドー3DSやWii U)であれば、Free to Play型でご提案ができると思います。

</ここまで>
※ 改行・強調など、一部手を加えました


 実際、この1年間で任天堂は「さまざまな柔軟なマネタイズの仕組み」を使ってのゲームの提案をしてきたと思います。

 例えば『だるめしスポーツ店』(2013年8月)。
 ソフト自体は無料だけど、ゲームの中の「野球ゲーム」をリアルマネーで購入していくという試みでした。言ってしまえば「体験版」をダウンロードさせて、後からリアルマネーで「製品版」の欲しい部分だけ買っていくというだけなんですけど、「値切り」システムによって賛否両論まきおこして話題になりました。


 例えば『Wii Sports Club』(2013年10月~)。
 2014年の7月には5種目全てが入ったパッケージ版が発売されますが、先行で1種目ずつ遊べるダウンロード版も発売されていました。これもまたソフト自体は無料だけれど、「200円払うと全ての種目が24時間遊べるチケット」と「1000円払うと1種目がずっと遊べるチケット」という料金体系と、「起動後24時間は全ての種目が無料で遊べる体験入会」という体験版の側面がありました。

 友達が遊びに来た時に「とりあえず200円」で遊べるのは面白い試みだなと思います。Free to Play型とはちょっと違いますけど。


 例えば『Wii Fit U』(2013年10月~)。
 2013年10月31日~2014年1月31日の期間のみ、バランスWiiボードを持っている人が対象ですが「1か月先行体験キャンペーン」として製品版と全く同じ無料版がダウンロード出来ました。遊べる期間は1ヶ月ですが、別売りのフィットメーター(定価2367円)を買うと2ヵ月目以降もずっと遊べるようになるという仕組みでした。

 ちょっと複雑ですけど……これも言ってしまえば、「(内容は一緒だけど遊べる期間が決まっている)体験版を無料配布して、追加料金を払えば製品版と同じになる」仕組みですね。


 例えば『スティールダイバー サブウォーズ』(2014年2月)。
 これもソフト自体は無料で、マルチプレイモードまで無料で遊べました。
 ただ、無料版だと使用できる潜水艦が少なく、シングルモードのミッションも限られていて、952円(税別)で正規版を購入すると全ての要素が解放されるとか。




 どれも「ソフト自体は無料」だけど、「無料版は制限はかかっていて」「料金を支払うことで制限が解除される」という共通点がありますね。
 「ソフト自体は無料」にする理由は、単純に「気になっている人の背中を押す」体験版としての意味もありますし、『Wii Fit U』なんかは「無料版を遊んだ人からの口コミを期待している」ということもあったらしいんですが、『スティールダイバー サブウォーズ』なんかは特に「オンラインモードに人を集める」目的があるんだと思います。

 これは任天堂以外でも、『DOA』『鉄拳』といった格闘ゲームでも取り入れられている方法ですけど、せっかくオンライン対戦が売りのゲームなのにソフト自体が全く売れなかったら対戦相手が誰もいなくなってしまうという事態になりかねないので……機能限定の「無料版」をダウンロードしてもらって人を集めるというのが一つのトレンドとなっています。


 『Splatoon(スプラトゥーン)』は「パッケージ版も出す」と明言されていますが、オンライン対戦が売りの新作ゲームですから……何らかの形の機能限定版を無料でダウンロードさせて、そこから「追加でお金を払ってくれればパッケージ版と同じだけの機能になりますよ」とする可能性は非常に高いと思います。

 仮にそうなった場合……「パッケージ版を100万本売る」ことは最初から狙っていないことになるし、これからのゲーム業界では「大ヒット=パッケージ版を100万本売る」なんて考え方自体がもう古いのかもなぁって思うのです。

 私は何のためにこの記事を書いてきたんですか!(逆ギレ)


 しかし、その場合は「何の機能を限定するのか」が気になりますよねぇ……。
 『だるめし』のように各モードを別売りにするのか、『Wii Sports Club』のように200円で24時間遊べるようにするのか、『Wii Fit U』のように1ヶ月無料で遊べるようにするのか(これは流石にないか)、『スティールダイバー サブウォーズ』のように例えば着せ替えアイテムを有料で売るとか。


 いずれにせよ、『Splatoon(スプラトゥーン)』ももちろん楽しみですけど、任天堂が『Splatoon(スプラトゥーン)』の成功のためにどういう試みをしてくるのかも非常に楽しみです。


【三行まとめ】
・今の時点での『Splatoon(スプラトゥーン)』の知名度は高くないと思うので、
・F2Pや「ネコマリオタイム」は『Splatoon(スプラトゥーン)』を売る伏線だったんだよ!!
・Ω ΩΩ<ナンダッテー


| ゲーム雑記 | 18:01 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

三行まとめが素晴らしすぎます。なんて分かりやすい結論!

| kanata | 2014/06/25 18:44 | URL | ≫ EDIT

ビジネスモデルはオンライン部分を初月無料の月額課金制が良いかと思う。
あとスマホで宣伝目的のミニゲームは恐らく出しそうです。

| ああああ | 2014/06/25 18:51 | URL |

芸能人対抗でイカのコスプレをしてリアルスプラトゥーンをやってもらいましょう。
バラエティ番組で。

| 児斗玉文章 | 2014/06/26 12:48 | URL |

E3で置いてあった試遊台を全国のゲームセンターに一定期間置かしてもらい遊んでもらい口コミを狙う。
発売日一か月前ぐらいに遊んでもらう

| 匿名希望 | 2014/08/09 07:47 | URL |

まあtpsをしらないひとにはインクを撃ちまくるゲームだといえば

| ああああ | 2014/12/24 21:47 | URL |

スプラトゥーンの評判を漁っていて辿り着きました。
インターネットで情報を集める時代のメリット&デメリットを
分析してあり、とても面白い記事でした!

深く知りたい情報は得やすい世の中ですが
広く知るためには情報の受信者の能動的検索が求められますよね。

僕はてっきりこのゲームは4人で画面分割で通常プレイ可能だと
勘違いしていましたw
執筆お疲れ様です。

| 通りすがり | 2015/06/02 02:22 | URL |















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