『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』というタイトルはおかしいんだが。
前回の記事で「“第1話を観るかどうか”の時点で食わず嫌いをしている作品にも自分が大好きになれるものがあるかも知れない」という話を書いて、その例に『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』を出しました。
今日の記事はそこから更に踏み込んで、「どうして自分がこのアニメを危うく食わず嫌いするところだったのか」「実際に観たらどうだったのか」「どうしてそんなに絶賛するほど好きになったのか」を書こうと思います。「どうせエロだけのアニメでしょ?」ってワケじゃないのですよ!
まず、作品名。
『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』の原作は漫画ですが、こういう「作品名が文章になっている」作品って最近のライトノベルなんかには多いって言われますよね。ネットではそれが馬鹿にされている論調でよく見かけるのですが、私はこの「作品名が文章になっている」作品名の付け方って上手いと思っているんです。
例えば、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』という作品名。
・「俺の」→主人公が「男」
・「妹が」→ヒロインが「妹」
・「こんなに可愛いわけがない」→「本来は可愛くない」のに「今は可愛い」ということは、妹は二面性を持った「ツンデレ」キャラか?
―――と、作品名を見ただけで大体の設定が想像出来るようになっているのです。
ライトノベルに限らず小説ってたくさんの作品が出ていますよね。実店舗の本屋ならパラパラ中身をめくることも出来ますが、インターネットで物色する際にはそんなことも出来ませんし、そもそも大多数の作品は「中身が気になる」ところまで行けないワケです。
タイトルで「どういう作品かを説明してしまう」ことで、様々な場所で作品名が表記される度に内容を説明してくれる宣伝になっているとも言えて……自分は非常に上手い手段だなと思っているんです。
それでは『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』はどうでしょう。
・「だが。」という語尾→主人公が「男」
・「妹の」→ヒロインが「妹」
・「最近~~おかしい」→妹の身に何かが起こっていて、関係性が変化する
こう推測されます。
なので、自分は冬アニメのリストをチェックしている時に「こういう話なんだろうな」と第1話を観る前に想像してしまっていたんですね。「主人公の男が、妹を始めとするたくさんの女のコに囲まれてラッキースケベで羨ましい目に合うエロハーレムアニメ」なんだろうなと。これは自分には関係のないアニメだと思ってスルーしていたのです。
違いました。
いや……現象的には近いことは起きていますが、決定的に違うのは
このアニメの主人公は「妹」の方なんですよ。
自分はアニメを観終わるまで原作を読まないようにしているので原作もそうかは分からないのですが、原作者は女性だそうなんで、多分原作もそうじゃないかなと思います。
このアニメって「女性目線」の物語なんですよ。
番組ラジオで確か金元さんの方だったと思うのですが「少女漫画みたいなところがある」と仰ってて、おしっこのシーンを除けば(笑)、自分も同じように思っています。そう言えば、金元さんも『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』でひたすらおしっこを我慢する回があったな……
閑話休題。
この作品は「たくさんの女のコに囲まれているモテモテ男」が主人公ではなく、「たくさんの女のコに囲まれているモテモテ男を囲んでいる女のコの一人」が主人公とも言えて。ハーレムアニメを、ヒロインの一人の視点で描くとこうなる―――というハーレムアニメの分解・再構築みたいな作品と言えるんじゃないかと思います。
第1話のAパートのみ「兄」視点で始まるところも、「普通のハーレムアニメですよ」と見せかけるためと考えられますし。
そう考えるとこの作品名も「普通のハーレムアニメに見せかける」ために付けられたのかもですね。実際もし作品名が『最近、私が兄とラブラブしなければならなくなってしまったんですけど。』だったら、設定は説明出来ているけど、フックは弱いと思いますしねぇ。
『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』と言えば、こんな話題もありました。
アニメ「妹ちょ。」エッチすぎてBPO審議入り後に放送時間変更
BPOの審議入り扱いになったことで、東京MXテレビやサンテレビは放送時間を変更するという措置を取りました。BPOから何か言われる前に動いたってことですね。審議入りになった理由は以下の通りです。
<以下、引用>
「22時台の中高生が視聴してもおかしくない時間帯で、女子高生が自慰行為をするなどの性表現のあるアニメが放送されている」などの視聴者意見が多数あった。
</ここまで>
女性を性欲の対象としてしか見ていない人&そう見られているんじゃないかと思っている人にとっては「こんないやらしい番組を放送するなんてけしからん!」と感じられるのかも知れませんが、4話まで観た人は「え?」と思いますよね。
美月のオナニーシーンも日和とのレズシーンも、単にエロイシーンというワケじゃなくて、「人間は一人では幸せになれない」ことを描くためのシーンなんですもの。
美月というキャラの生い立ちを知れば……父親に捨てられ、母親を救おうと頑張ったのだけど母親は娘ではなく男にしか救われず、新しく出来た兄も日和や雪那の方が自分より仲良くなれている。自分は一人ぼっちだし、自分なんかいなくてもイイんじゃないかと思っているキャラだと分かるんです。
「確かに……日和の方が仲良くできるし、その方がコイツだって楽しそうだけど……
そんなことになったら、お母さんが困る!!……
……
……ワケないか。
もしかして、邪魔なのって……私の方……」
オナニーシーンを描いているのも、日和とのレズシーンを描いているのも、単なるエロサービス描写じゃないですよ。一人で自分の体を慰めているだけではTSTのゲージは溜まらないし、美月は幸せになれないと描いているんですよ。(日和は実体のない幽霊なのでカウント対象外なのだと思います)
自らの存在意義を肯定できない美月の孤独と絶望を象徴するシーンなのです。
でも、夕哉は「それでイイんだ」と言う。「そのままでイイんだ」と言うのです。
「無理して俺と兄妹になろうって言うんなら、そんなことしなくてイイ。
確かに、今日のオマエは話しやすかったけど、無理してまで馴染んでくれなくてイイよ。
イイんだよ。別にいつも通りで。仲良くなんて、無理矢理なるもんじゃないだろ。
別に俺……美月の性格、悪いとか思っていないし。そりゃ難しいなとは思うけど……時間をかけて、家族になればイイと……思っているから」
「美月」と「日和」……
一つの体に「月」と「日」の心が入っているのだけど、本体が「月」で幽霊が「日」だという。「月」は自分の力だけでは輝けない。「日」の光を浴びることで「月」もまた輝く。
「日和」と出会えたおかげで「美月」は光がそこにあることを知れたのです。
このアニメを「22時台の中高生が視聴してもおかしくない時間帯で放送するのはダメだ」と断ずる人は、中高生が何の悩みもなく、真っ白で、自分の力だけで輝けるような存在だと思っているのでしょうか。美月のように「自分は一人ぼっちだ」「自分なんか存在しなくてもイイんだ」と思ってしまっている中高生だっていっぱいいるでしょうし、そんな人達の力になれるのはこういう娯楽しかないと私は思うのです。
だから私は主張します。
このアニメは「中高生こそが観るべきな作品だ」と。
ただ……
たまたまチャンネルをザッピングしていて、お茶の間でいきなりオナニーシーンが映った空気を想像したら。まぁ、放送時間の変更は仕方ないかなとも思います(笑)。
1~4話までちゃんと観れば「あのオナニーシーンにもこんな理由がある」と分かると思うのですが、1話のあのシーンだけ観てしまったら「けしからん」と思われちゃっても仕方ないですし。私も以前「エロアニメだけど面白い」と紹介していましたしね。
放送時間が変更になったのも「それだけで済むのならマシだ」と思います。
とにかく無事にアニメが最終話まで放送されることを願います。
(関連記事:テレビって“ちゃんと観ていない人”もいるメディアなんだよね)
(関連記事:漫画業界も“レーティング制度”を導入すべきだったのか)
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