あなたは耳を傾け聴いている
しかし足元では死が裾を引っ張っている
そして帰るだろう
あなたはあなたの部屋のくたびれたソファーの上へ
あなたは心を痛めて聴いている
しかし襟首を惰性と習慣の日常が掴んで離さない
そして帰るだろう
あなたはあなたの仕事が待っている暗い作業場へ
あなたは後悔するだろうか
聴くだけで行動しなかった自分に
そして帰るだろう
あなたはあなたの国家が用意した戦場へ
あなたは今日も聴いている
戦争が不変の愚かさを纏ってやって来る
そして帰るだろう
あなたはあなたの石の下の冷たい寝床へ
春には春の人が来て
夏には春の人が去る
夢から覚めて笑顔は風に散る
夏には夏の人が来て
秋には夏の人が去る
流した汗が嘘になる夕暮れに
秋には秋の人が来て
冬には秋の人が去る
長い会話の途中で切れた言葉の欠片
冬には冬の人が来て
春には冬の人が去る
出会って別れる人生という四季
人と人の間に機械が横たわり
差別のない世の中が
新しい差別を手に入れる頃
愛は変換され憎悪となり
励ましは変換され悪口となった
なんと素晴らしいテクノロジーの進歩なのだろう
誰もが私の正しさを声高に主張し
他人の言葉を狩ることに無我夢中
世界は被害者と加害者で溢れている
そして今日の被害者は明日の加害者になるだろう
銃を持たない戦争は終わることがない
苦痛が続く永遠の地獄
これこそが僕たちが待ち望んだ未来の姿だ
人と人の間の愛は死んでしまった
他者理解の世の中が
新しい無理解を手に入れる頃
優しさは変換され偽善となり
自由は変換され不自由となった
なんと美しい持続可能な進化した世界なのだろう
誰もが私の正しさを躊躇なく垂れ流し
他人の振る舞いに難癖をつける
世界は善人と悪人で溢れている
そして今日の善人は明日の悪人になるだろう
心の中の戦争は誰にも止められない
賢い者は目を閉じて無言を貫け
これこそが僕たちが待ち望んだ未来の真実だ
生き物の最期は
みんな「ありがとう」になる
僕も君もやがて
誰かの「ありがとう」になるのだろう
なんて美しい
涙声の「ありがとう」なんだろう
なんて穏やかで潔い
心からの「ありがとう」なのだろうか
色とりどりの花を
眠っている「ありがとう」に手向けよう
長いクラクションが鳴り響き
僕はもう一度「ありがとう」と呟く
手を合わせると
雨の中に「ありがとう」が走り去る
掲げられた写真の中に
永遠の「ありがとう」が笑っている
18年続いた静かな乾杯だ
永遠に若いままのお前を羨んで
ウイスキーグラスの氷を指でかき混ぜた
あの頃と同じ音がした
18年続いた無言の会話だ
不自由な世の中を見ずに去ったお前を羨んで
ため息をついて古い写真を見つめた
お前の笑顔に励まされた
18年続いた誰も知らない夜だ
新時代を嘆く必要もないお前を羨んで
部屋の明かりを消した
青春の残り香が心に沁みた