*解説を追加しました→「 上級国民が「SNS等の削除を指示した」としても逮捕勾留の原因にならない理由 」
*裁判についての解説も追加しました→「『上級国民』は刑事裁判で有利」と弁護士が思う理由
立て続けに、大きな交通事故がおきました。その交通事故をめぐって、あの人は逮捕されたのに、この人は逮捕されないのはなぜか、それは上級国民だからではないか、などという議論が、ネットで巻き起こっています。
この上級国民というのは、ネット上のスラングの一種です。高級公務員や大企業の重役、あるいは、政権の関係者、それらの経験者など、とにかく偉い人で、特別扱いを受けるべき人、という程度の意味だそうです。
さて、上級国民といわれるような方々は、本当に逮捕されない、あるいは、普通だったら逮捕されるのに、上級国民だと逮捕を避けられるとか、そういったことがあるのでしょうか。
これについてですが、誤解を恐れずに、でも、はっきりと申し上げると、「上級国民は逮捕されにくい」という事は間違いなくいえると思います。
それは、どういう理由からでしょうか。
逮捕やそれに続く勾留(両者は別物ですが、解説すると長くなるので、一括して説明します。)という手続き・身体拘束は、懲役刑など、刑罰としての拘束とは異なります。
これについてですが、誤解を恐れずに、でも、はっきりと申し上げると、「上級国民は逮捕されにくい」という事は間違いなくいえると思います。
それは、どういう理由からでしょうか。
逮捕やそれに続く勾留(両者は別物ですが、解説すると長くなるので、一括して説明します。)という手続き・身体拘束は、懲役刑など、刑罰としての拘束とは異なります。
逮捕や勾留は、有罪判決の確定前に行われているのであり、決して刑罰ではありません。
さらに被疑者が、関係者と口裏合わせをしたり、証拠品を廃棄したりなどすると、これまた、捜査は適正に行えませんし、真実も発見できず、適正な裁判を行うことも難しくなります。
そういうわけで、上級国民という身分(そんなものがあるわけではないですが)そのものに着目をしているというわけではありませんが、結果的に、上級国民の持つような属性が、逮捕勾留を否定するような事情になっている、ということがいえると思います。
以上乱暴にまとめてしまうと、上級国民だと逮捕されにくいというのは、一応は真実であるといえると思います。
これは、上級国民「も」逮捕しろ、ということではありません。上級国民でなくても、しっかりと逃亡や証拠隠滅の現実的な可能性、相当な理由を確実な資料から認定し、そうでないなら、「一般国民」も逮捕勾留するべきではない、ということです。上級国民でない人々にも、かけがえのない生活があることには変わりありません。
逮捕や勾留は、捜査の適正の確保のため、あるいは裁判の維持のため、あるいは判決後の刑の執行の確保のために行われるものです。
これは、どういうことかというと、例えば、被疑者(犯罪の嫌疑を受けている人をいい、逮捕の有無は問いません。)が逃亡してしまった場合には、裁判にかけるという事はできません。
これは、どういうことかというと、例えば、被疑者(犯罪の嫌疑を受けている人をいい、逮捕の有無は問いません。)が逃亡してしまった場合には、裁判にかけるという事はできません。
また、判決が出ても、刑を執行するということができません。さらに、そもそも裁判を開くこともできなくなってしまいます。
さらに被疑者が、関係者と口裏合わせをしたり、証拠品を廃棄したりなどすると、これまた、捜査は適正に行えませんし、真実も発見できず、適正な裁判を行うことも難しくなります。
逮捕や勾留は、このような弊害を避けるために、被疑者に、犯罪の疑いがあることを前提として、証拠隠滅したり、逃亡するような危険がある場合に限り認められます。
正確には、これらの疑いには、そう疑うに足りる相当な理由、というレベルの根拠が必要であるとされています。
そして、証拠隠滅や逃亡の可能性というのは、理論上は犯罪の疑いとは別の概念です。
犯罪をしたというのは間違いなく認定できたとしても、逃亡や、証拠隠滅の可能性がなさそうであれば、逮捕勾留されないこともあります。また、犯罪をしたという事について、確信がもてない場合であっても、逃亡や証拠隠滅をする可能性が高い、というケースでは、逮捕勾留が認められやすくなります。
以上を前提に、上級国民について、考えています。
正確には、これらの疑いには、そう疑うに足りる相当な理由、というレベルの根拠が必要であるとされています。
そして、証拠隠滅や逃亡の可能性というのは、理論上は犯罪の疑いとは別の概念です。
犯罪をしたというのは間違いなく認定できたとしても、逃亡や、証拠隠滅の可能性がなさそうであれば、逮捕勾留されないこともあります。また、犯罪をしたという事について、確信がもてない場合であっても、逃亡や証拠隠滅をする可能性が高い、というケースでは、逮捕勾留が認められやすくなります。
以上を前提に、上級国民について、考えています。
上級国民は、通常、職業や、住居がしっかりしている、また、財産もあるでしょう。ですから、それらを全部なげうって逃亡するという事はなかなか考えにくいです。そうすると、逃亡する可能性はほとんどないという判断に結びつくでしょう。
また、上級国民といえども、証拠隠滅をすれば身柄を拘束されることになります。そうなると、そんなリスクを冒して証拠隠滅をする可能性もない、ということになるでしょう。
また、上級国民といえども、証拠隠滅をすれば身柄を拘束されることになります。そうなると、そんなリスクを冒して証拠隠滅をする可能性もない、ということになるでしょう。
上級国民は、身体拘束で失うものが大きいので、そんなリスクを無視して、証拠隠滅には及ばない、ということです。
さらに、上級国民は、前科や前歴もなく、証拠隠滅をそそのかすような組織、団体との関わりもないでしょう。
加えて、上級国民は、殺人や放火など、法律上、重たい法定刑が定められている犯罪を犯す、疑いをかけられることは稀であり、通常は、過失犯など法定刑がそこまで重くない犯罪が中心になります。
そうなると、20年、30年の服役の可能性があるのであれば別格、執行猶予の可能性が高い、実刑になっても、2、3年というのであれば、情状が悪くなる、身体拘束される、あるいは終わりのない不自由な逃亡生活を覚悟して逃亡し、証拠隠滅をする可能性は、ますます下がります。
そういうわけで、上級国民という身分(そんなものがあるわけではないですが)そのものに着目をしているというわけではありませんが、結果的に、上級国民の持つような属性が、逮捕勾留を否定するような事情になっている、ということがいえると思います。
以上乱暴にまとめてしまうと、上級国民だと逮捕されにくいというのは、一応は真実であるといえると思います。
もっとも、私としては、このような取り扱いが、妥当であると思いません。
上級国民は逃亡したら失うものが大きいから逃亡するという事はなかなか考えにくい、とはいえるかもしれませんが、それは、上級国民に限りません。
上級国民の持つ高い地位、生活など「だけを」特別扱いして、そうでない人の立場を軽視するような判断は、あまり賛成できるものではありません。
上級国民の持つ高い地位、生活など「だけを」特別扱いして、そうでない人の立場を軽視するような判断は、あまり賛成できるものではありません。
これは、上級国民「も」逮捕しろ、ということではありません。上級国民でなくても、しっかりと逃亡や証拠隠滅の現実的な可能性、相当な理由を確実な資料から認定し、そうでないなら、「一般国民」も逮捕勾留するべきではない、ということです。上級国民でない人々にも、かけがえのない生活があることには変わりありません。
今回、このような疑問が湧き上がったのは、市民の認識としては、悪いことをしたから逮捕勾留されるという認識が強い一方で、法律上は、それだけでは足りず、証拠隠滅や逃亡の可能性が審理されるということ、そして、いわゆる上級国民といわれる方々については、犯罪の内容や身分・地位から、逃亡や証拠隠滅のリスクが比較的低いと判断されやすい、こういう、認識のギャップというか、食い違いが、誤解を生んだのではないか、と思います。
コメント
コメント一覧 (2)
この間の那覇簡裁の件では、自動発券機どころか偽装発券機だったようですが。
逮捕の取り扱いについても、社会通念上の考え方や扱われかたと裁判所の判定が著しく乖離しているのも問題です。
逮捕された時点で、一般社会では犯罪者扱いです。
警察もその威嚇力を利用して運用しているのに、不必要(不当ではなく)な逮捕に対しての損害賠償も認められないのは、はっきりいって異常です。
さすが日本の司法が中世と言われるだけのことはあるな、というのが今回の事件を見た印象です。
弁護士の先生方に置かれましては、不当な扱いに対して断固抵抗していただきたく思います。