ゆとりずむ

東京で働く意識低い系ITコンサル(見習)。金融、時事、節約、会計等々のネタを呟きます。

勉強になる面白い歴史漫画を感想付きで紹介してみる(2016)

こんにちは。

おっさんなので(?)少年漫画よりも青年漫画、特に歴史漫画が大好きです。歴史漫画といえば、日本の歴史や中国の歴史(三国志とか)が人気になることが多いような気がします。わたしの場合、教科書には中々載らない、載ったとしても1行2行の西洋の歴史を取り上げたものが大好きです。

ここ暫く、漫画を読む時間すら忙しかったのですが、一段落しましたので、今まで読んできたものの整理も兼ねてご紹介していきたいと思います。主に、史実を元にしたフィクションがメインですが、当時の『雰囲気』を感じられる歴史ものっぽい作品をピックアップしてみました。

ご参考になれば幸いです♪

ヒストリエ

蛮族スキタイの出身でありながらそれを知らず、都市国家カルディアでギリシア人養父母に育てられたエウメネスは、そのおかげでギリシア的教養を身につけることとなる。ある日養父がスキタイ人に殺され、自分の出自を知ったエウメネスは奴隷の身分に落とされてしまう。それが彼の波乱の旅の始まりだった!

最近は、映画『寄生獣』で人気となった岩明均御大の名作ですね。ネットでは、『ばっかじゃねーの』などの画像が有名なアレです。

出自が怪しいことをみんなに隠されて育った秀才エウメネスが、自らの才覚と数奇な運命に翻弄されながら、アレクサンドロス大王の書記官(文官を統制する官房長官みたいな感じでしょうか)にまで出世していくストーリーです。

個人的にお気に入りのシーンは、故郷を奴隷として追放されたエウメネスが、助けてもらった蛮族の人々に、ギリシャの知識を伝える一コマです。『知識や技術は他人に教えたりすることによって本当の知識として”自分のもの”となっていく』。運命に翻弄されながらも、生きていくためのヒントの多い一冊です。

 ヴィンランド・サガ

 千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。そのなかにあってなお、最強と謳われた伝説の戦士が息子をひとり授かった。トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド”を目指す!! 『プラネテス』の幸村誠が描く最強民族(ヴァイキング)叙事詩、堂々登場!

こちらも、名作なのでご存じの方も多いかと思います。 幸村さんは、プラネテスのころから読ませて頂いていたのですが、『生きること』『働く・戦うこと』について、しっかりとした思想をお持ちの方だと思います。

『卑怯な戦い』で、尊敬した父親を亡くしたトルフィンは、仇敵アシュラッドを討つために何故か同じ船で戦いの世界に身を投じる事になります。

この作品、『父』と『子』が大きなテーマの作品だと思います。トールズとトルフィン、スヴェンとクヌート、そして『神』と『人類』。父のやり方を嫌い、それを乗り越えようとし、そこで父の苦悩を知り、それでもなおその先を目指す。そんな構成となっているのでは?と思い、読み返すと中々良かったです。

軍靴のバルツァー

19世紀のヨーロッパ。戦乱の世で、若いがメキメキと頭角を現すバルツァーは、戦後の論功により通常より3年は早い左官への昇進。まさに順風満帆の出世街道を歩いているはずだった。
ところが、次の転属先は「戦場の華」である最前線ではなく、なんと軍事後進国の士官学校の教官だった!
戦術は一昔前のものばかり、射撃授業は自粛中という、平和ボケした二流軍事国の生徒たちを、一流の兵に変えるため、バルツァーによる文字通り「命がけ」の策が始まった!

『このマンガがすごい!(2013)』に 選ばれていましたが、かなり濃い作品です。近代が舞台なので資料は豊富にありますが、それを文化・社会・政治も含めて、端から端まで目を通したのか??と思う濃さです。下手な小説よりよっぽど時代考証が深く、原作なしで初っ端からこれは、次元がひとつ違う感じですね・・・。

軍事大学を卒業し、エリート将校であったはずのパルツァーは、何故か同盟小国のバーゼルラントに『お子様たち』の教育係として赴任させられます。色々な事態に巻き込まれ、ひよっ子だった子どもたちが成長していく中で、国際政治の中の権謀術数の世界の中に巻き込まれていきます。

個人的には、主要キャラではないのですが、ヴァイセン王国の国王陛下がすごく面白いい。『全く自分の使いどころがよく分かっている』と言われ、『王族としての責務を背負う覚悟はあるか?』というだけのことはある。あんな王様だったら、みんな付いて行きたくなるんでしょうね。

リープクネヒトの野望の真実など、謎解き的な要素も多く、今後も展開が気になります。

 アド・アストラ

紀元前3世紀、台頭著しい共和政ローマを恐怖の底に突き落とした男がいた。ハンニバル・バルカ── ローマ史上最大の敵となった怪物と、彼からローマを守った英雄プブリウス・コルネリウス・スキピオ。同時代を生きた二人の戦いが、今幕を開ける!! 

塩野七生大先生のお陰で、『ポエニ戦争』については、ご存知のかたも多いんじゃないでしょうか。本作品では、『スキピオ』と『ハンニバル』という、それぞれ両極端な性格を持つ武将の心理描写にフォーカスをあてて描かれております。

ハンニバルは、誰からの理解も得られず、祖国からの支援もほとんど無い中で、ひとり孤独の中で考えた戦略を駆使し、大国ローマを追い詰めていきます。一方、スキピオは、持って生まれた天性の人当たりの良さで、自分の考えを、周囲の人達を上手く動かしながら、孤高の天才に立ち向かう、という設定です。

これは、『二人』の考え方でもあるのですが、つきつめれば、みんなで考えて進んだローマと、個人の才覚で国を動かしていったカルタゴ、その『二国』の考え方の違いなのかなあとも思いました。

至って真面目で硬派な漫画なのですが、貴族であるスキピオと平民のガイウス、その二人のお馬鹿なやりとりと熱い友情も見どころの一つですね。

ジゼル・アラン

「その仕事、私が頼まれようか?」20世紀初頭、ヨーロッパ。主人公の少女の名は、ジゼル・アラン。アパートの大家をしているジゼルが、ある日“何でも屋”を開業。店子のエリックを助手に、さまざまな依頼をこなしていくものの、お嬢様育ちで好奇心旺盛なジゼルは、何かと暴走しがちで――。無理矢理仕事を手伝わされるエリックをはじめ、個性豊かなアパートの住人たちを巻き込んで、ジゼルお嬢様の可憐で、危なっかしい活躍が始まる。

戦記モノが続いたので、ここいらで趣向を変えて、街が舞台の作品を。

召使いが何人も住んでいるようなお屋敷から飛び出し、アパートの大家さんをすることになったジゼル。元々がお嬢様育ちの為、街のひとびとの生き様との違いに右往左往しながらも、ひとつずつ問題を解決していくお話。

ヴィクトリア朝のイギリスの『ジェントルマン』の世界観なんでしょうね。登場する人物ひとりひとりの、その当時の生き様が魅力的。ジゼルだけでなく、その周囲の人達の関係の変化も見どころですね。

アルテ 

16世紀初頭・フィレンツェ。
芸術など文化活動が花開いたルネサンス発祥の地。
そんな活気あふれる華やかなる時代に、貴族家生まれのアルテが画家工房への弟子入りを志願する。
女性がひとりで生きて行くことに理解のなかった時代、様々な困難がアルテを待ち受ける。

 頑張っている女性に読んでもらいたい一冊。

家庭に入るか、働くか。今も色んな女性が悩みを持つ普遍的なテーマですね。与えられたレールから外れる生き方をするのは勇気のいることです。特に、周囲の人達からは『恵まれている』と思われている立場から、別の路線を取ることは、周囲の理解も得られず大変な話です。

一番好きなシーンは、レオがアルテを弟子に取ることを決めるところ。自分を『貴族の娘』ではなく、ひとりの人間として見てくれたことに喜ぶアルテ。彼女を、『貴族の娘』ではなく、若いころの自分と同じ挑戦者として見たレオ。そこに、性別とか身分とかを越えて、同じ場所にいる二人が響きあうシーンがお気に入りです。

また立場を捨てることは、潔いことですが、それが最善なのか?貴族として、女性として身につけた術を活かしながら、どんどん成長していくアルテの姿にも、何かのヒントがある気がします。

乙嫁語り

中央ユーラシアに暮らす、遊牧民と定住民の昼と夜。
美貌の娘・アミル(20歳)が嫁いだ相手は、若干12歳の少年・カルルク。遊牧民と定住民、8歳の年の差を越えて、ふたりは結ばれるのか……? 『エマ』で19世紀末の英国を活写した森薫の最新作はシルクロードの生活文化。馬の背に乗り弓を構え、悠久の大地に生きるキャラクターたちの物語!

 『エマ』で有名になった、森薫さんの作品です。

舞台となった19世紀の中央アジアって、日本人の歴史の知識の中では最も薄いところじゃないでしょうか?ざっくり言うと、帝国主義が台頭する欧州各国とロシア帝国に挟まれ、オスマン帝国の体力がどんどん薄れて行き、伝統的な生活を送ることが少しづつ難しくなっていった時代といった感じでしょうか。

ストーリーは、断続的に当時の風俗をテーマにした形で進んで行きますが、もう全てが全て聞いたことのない話で、中々面白いです。人物の描写もさることながら、町並みや衣装の描写は『よくもまあ、ここまでやれるなあ』と関心しっぱなしです。

碧いホルスの瞳

運命を切りひらき、少女は偉大な王となる――。

現代から約3500年前、古代エジプト。
男性が王座につくことが当たり前だった時代に、
女ファラオとして国を治めたハトシェプストという人物がいた。
“男装の女王"と謳われるほど、強く気高く生きた彼女の激動の生涯、その幕が、いま上がる!
新鋭・犬童千絵が鮮やかに描き出す、古代エジプトの風景とそこに暮らす人々、
そして自ら運命を切りひらいたひとりの女性。

 『女性の生き方』の話が続きましたが、最後にエジプトの女王の話を。

近年日本でも『女性天皇』の議論が現実味を帯びてきましたが、125代を数える天皇のうち、女性は10代8人。随分と少ない数に思えますが、古代エジプトのファラオは247人中、女性はたったの3人。その中のひとりが、本作の主人公ハトシェプストです。

史実によると、彼女は武力ではなく平和外交で交易を活性化させ、建築に興味を示し多くの神殿などを作らせたのだとか。物語は、おてんば娘から名君へと成長していくところから描かれ始めています。

本作の見所は、やっぱり『よい政治とは何か?』について、ハトシェプストがひとつずつ考えながら成長していくところでしょうか。統治者は、ただ正しいだけでも、ただ優しいだけでもいけない。清濁併せ呑んだ上で、決断を下さなければならない。そんな描写が魅力的な作品だと思います。

ルドルフ・ターキー

1950年代、アメリカ。大都市ゴンドランドを取り仕切っているルドルフ・ターキーは、次期市長となる男。彼には常に無数の敵がいた――。
欲望全開に生きるルドルフ様の、危うくも華麗なる日々!俊英・長蔵ヒロコが描く超弩級娯楽活劇、待望の第1巻。

 終戦直後の頃の、アメリカを舞台としたお話です。

無数のカジノを経営する一族のお坊ちゃまでゴンドランド市長代理のルドルフ・ターキー。まあ、お坊ちゃまといっても、大人しくしているタイプではなく、次々と襲い掛かってくる問題を、秘書のモモコ・エグマリヌを中心とした仲間たちと、金・権力、そして自らの腕力で解決していく物語。

まあ、スネオとジャイアンと出木杉の三人を足して割らないような男です(笑)。ただ、そんな典型的な『嫌なやつ』が、みんなから憎まれ口を叩かれながらも、なんやかんやで愛されて、味方を増やしていきます。

ちょっとここに入れるのも違うかな?とは思いつつ、この辺りの時代のアメリカを舞台とした作品も珍しいので、面白い作品です。

チェーザレ

1491年、11月。フィレンツェの大富豪ロレンツォ・デ・メディチに見込まれたアンジェロは、各国から貴族や有力市民の子弟が集まる名門・サピエンツァ大学ピサ校に入学、一人の青年と出会う。彼の名はチェーザレ。スペイン出身で、父は教皇庁のナンバー2という名門貴族。はるか昔、全ヨーロッパを支配し巨大な帝国を築いた英雄と同じ名を持つ青年は、のちに現代政治学の祖・ニッコロ・マキァヴェッリの名著『君主論』のモデルとなり政治の天才と謳われた人物だった……。
闇に葬られた若き英雄が、今甦る。超美麗ルネッサンス絵巻!

『人の動かし方』について取り上げた作品が続きましたので、最後はこちらを。

ルネサンス期のイタリアといえば、日本では戦国時代にあたります。日本では、全国の戦国武将が覇権を争う時代でした。ヨーロッパでもジェノヴァとヴェネチアは交易合戦を行い、メディチ家はレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロを支援し、フィレンツェの地に文化を花開かせました。

多種多様な地域の思惑が渦巻く時代、イタリア半島は『微妙なバランス』の元に保たれて居ました。特に要となったのは、教皇の存在。本作の主人公、チェーザレ・ボルジアは、教皇となった父の右腕として、その政治力を奮います。その巧みな手腕は、冷酷な一方で秩序をもたらしたと同時代人のマキャベリは『君主論』の中で述べています。

本作は、そんな彼の生涯を、アンジェロという別の人物の視点から描いているのですが、なんでもない描写が後に大きな伏線になっていたり、小さな出来事が思いもよらぬ結果に繋がっていたりと、登場人物の議論もまた複数の解釈が出来たりと、読みながらも随分と考えさせられる作品で、中々楽しめます。

シュトヘル

 13世紀初頭。史上最強のモンゴル軍に「悪霊」と恐れられた女戦士がいた。 戦士の名はシュトヘル。彼女と、一族を敵に回したモンゴルの皇子の壮大な物語。

また少し方向性を変えて、血なまぐさい、クセのある作品を。

モンゴル軍に祖国西夏を滅ぼされ『悪霊』となったシュトヘルと、一族を敵に回しても西夏の文字を守ることになったモンゴルの皇子ユルール、そして執拗に西夏の文字を地上から消し去ることに固執する皇帝チンギス・ハーン。その周囲の人達との、『文字』を巡る物語です。

西夏文字は、長らく解読が出来ていなかった文字です。『文字を解読するために、字典が残っていればなあ』という思いから書かれた作品だったりするのでしょうか?

ユルールが語っているように、文字があれば、その時代の人々が考えていたことを、場所や空間を越えて残すことが出来ます。一方では、チンギス・ハーンのように、大きな傷となってしまうこともあります。ある意味、現代の『忘れ去られる権利』問題に近い側面を持っているのかも?なんて、読んでしまいます。

狼の口 ヴォルフスムント

14世紀初頭、アルプス地方。イタリアへと通じるザンクト=ゴットハルト峠には、非情な番人が守る関所があった。難攻不落をもって知られるその場所を、人々はこう呼んだ。ヴォルフスムント―――“狼の口”と。

頭の上にリンゴを乗っけて矢で射るシーンで有名な、ウィリアム・テルの息子たちのお話。

当時、彼らの住んだ、後のスイス連邦となるシュバイツ、ウンターヴァルデン、ウリの3つの自治邦では、ハプスブルク家の圧政の元にありました。その象徴が、大事な権益奪い、団結し戦うことを封鎖する巨大な関所。その悪魔の様な砦を如何に攻め落とすのか、多くの犠牲を払いながらも、自由のために戦っていくお話。

しかし、どこまでが史実でどこからがフィクションかは分かりませんが、良くここまで残虐な描写が出来ますね((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

実際の史実では、盟約者団は、ハプスブルク家から自治を勝ち取り、後のスイス連邦を形成して行きます。今でもスイスでは徴兵制が取られています。かつては、有事の際に、すぐ戦えるよう一家に一丁軍事用ライフルを配備されていたとか。スイスの自治独立の精神は、この頃から育まれていたんでしょうね。

乙女戦争

1420年、ボヘミア王国。戦争により家族を虐殺された12歳の少女シャールカは、フス派義勇軍の英雄ヤン・ジシュカに導かれ、仲間たちと共に反カトリックの戦いに身を投じていく。
15世紀、中央ヨーロッパで起こり「宗教改革」の端緒となった「フス戦争」をモチーフに、少女の視点で、史実に基づいた凄惨な戦争を描く歴史巨編!!

すごく、レジに持って行きにくいタイトルと表紙ですが、中身はかなり血なまぐさい作品です。

私達が、『宗教改革』と聞くと、いわゆるルターの免罪符の話などを思い浮かべますが、さらにその前に、宗教改革に繋がる活動をした聖職者がいました。それが、フスです。フスは、民衆を区別なく扱い、チェコ語での典礼を行うなど、教会の改革に動いた宗教者です。その動きが危険視され、最終的には火刑に処され、非業の死を遂げます。

彼の死に抗議する信者と、それをうまく利用し神聖ローマ帝国・ローマ教皇からの独立を狙う勢力とによって起こされた独立戦争がフス戦争です。

元は一介の傭兵隊長にすぎないヤン・ジシュカが、ピストルや戦車といった当時の最新兵器を元に、農民軍たちを巧みに組織し、重騎兵を中心とした正規軍を倒していきます。そういった、『今となっては当たり前』の何かが生まれた瞬間と、単純な農民を言葉巧みに誘導し、戦士たちへと変えていくシーンが見どころです。

イノサン

 18世紀、「自由と平等」を望み、現代社会の出発点となったフランス革命。 その闇に生きたもう一人の主人公シャルル-アンリ・サンソン。彼は、パリで死刑執行人を務めるサンソン家四代目の当主。 その過酷な運命に気高く立ち向かった“純真”を描く、歴史大河の開幕──!!

若干残酷なものシリーズが続きましたので、最後はフランスの処刑人の物語を。

フランス革命を象徴するものと言えば、やはり『ギロチン』ですね。いつの時代も、死刑が残酷なものには違いありませんが、ギロチンが発明されるまでは、それはそれはむごたらしいものでした。

剣や斧を使って行われる『斬首』は、下手な人がやると何度も切りつけ、息絶えるまで相当な苦痛を味わうことになります。そこで、死刑を生業とする人に任せられることになり、いつしか世襲のものとなっていきます。

本作の主人公シャルル・アンリ・サンソンは、サンソン家の四代目当主として、様々な視線と戦いながら、国家とはどうあるべきか?という大きな時代の流れの中に飲み込まれていきます。色々とクセの強い作品ではありますが、フランス革命の時代に、何が起こっていたのか?について触れるには良い作品だと思います。

ホークウッド

14世紀、イングランドとフランスの百年にわたる戦争が始まろうとしていた頃。金で雇われ、戦いを生業とする者達--傭兵が各地の戦場で活躍していた。“白鴉隊”という小さな傭兵隊を率いる若き傭兵隊長ジョン・ホークウッドは、一人の王子との出会いを機に、百年戦争という大きな戦いに巻き込まれてゆく……。

百年戦争といえば、フランスのジャンヌ・ダルクが有名ですが、これはイギリス(イングランド)側から見たお話。

 今でも仲が悪いイギリスとフランス。今となっては、『ようやるわ』と思いますが、当時のイギリスは、ドーバー海峡を越えて、フランスの一部を占領していました。ポエニ戦争時のハンニバルも同じですが、侵攻軍は常に兵員の確保の問題にぶち当たります。

ただ、この当時のヨーロッパ世界では、お金さえ払えば誰とでも戦う傭兵団がいました。このお話では、主君の忠義でもなく、名声でもなく、ただお金のためだけに戦う人たちを、如何に束ねていくのか?について取り上げた作品です。

契約主(プライム)との交渉や、その主君(発注元)との関係や、競合他社との引き抜きにどう対応すべきか?など、ある意味、IT屋のPM業に近いところがあるかもしれません。

 傭兵ピエール

15世紀、百年戦争下のフランス。王家の威信は失墜、世は混沌と暴力に満ちていた。そんな戦乱の時代の申し子、無頼の傭兵隊長ピエールは略奪の途上で不思議な少女に出会い、心奪われる。その少女の名は――ジャンヌ・ダルク。この聖女に導かれピエールはイギリス軍との天下分け目の戦場へと赴く。

お次はフランス側からみた百年戦争。

佐藤賢一原作の同名小説の漫画化です。小説のほうは、かなり有名な作品なので読まれたことがかなり古い作品なので、ご存知の方も多いかも。

ジャンヌ・ダルクと共に戦った『傭兵ピエール』の物語。謎に包まれた部分の多いジャンヌ・ダルク本人ではなく、その一番の理解者、という位置づけの男の目線からみた百年戦争という物語です。

フランスを救え、そんな神の啓示を得た少女というのも、実はただのか弱い乙女だったのではないのだろうか?そんな視点から『人間ジャンヌ』の像を解き明かしていこうとする作品です。

この時代の戦争の在り方について、『ホークウッド』と合わせて読みたい作品です。

テルマエ・ロマエ

マンガ大賞2010 大賞受賞! 手塚治虫文化賞短編賞受賞! 古代ローマの男が、現代日本の風呂へタイムスリップ!! 現代日本と古代ローマを往来できる体質になってしまった風呂設計技師の好漢ルシウスの、時空を越えた大冒険(ただし風呂限定)の行方は!? 驚愕の発想から生み出される爆笑エピソードの連続で、受賞続々、大ヒット! 「王様のブランチ」でも紹介された、今年最高の話題作!!

 また方向性を変えて、まったりしたお話を。

色々と変わった話も紹介してきましたが、本作のテーマは、表紙を見ても分かる通り『お風呂』です。これだけでも十分に珍しいのですが、『ローマ時代のお風呂』です。

古代ローマといえば、コロッセオや水道橋を代表とされる、高度な土木建築を用いて広大な帝国を建設した国家として有名です。そしてそれと同時に、『お風呂文化』についても並々ならぬ情熱を注いできました。

そんな古代ローマのルシウスが、何故か現代日本とタイムスリップを繰り返し、未知のお風呂文化を吸収しつつ、ありとあらゆる物事をお風呂で解決していく、とんでもねえお話です(笑)。

しかし、こうやって古代の人の目線を入れることによって、日本の文化がどんなものなのかが見え、いろんな事に気が付かされる良作です。

ふしぎの国のバード

ディスカバー・ジャパンーーこれは、古き良き日本文化を取り戻すための物語。
時は明治初頭。東京から蝦夷まで、地図なき道を旅したイギリス人がいた。その名はイザベラ・バード、冒険家。彼女の目的はただひとつ、滅びゆく日本古来の生活を記録に残すこと。通訳の伊藤鶴吉をひとり連れ、日本人すらも踏み入ったことのない奥地への旅が、今はじまる!漫画誌ハルタの実力派新人・佐々大河。初のコミックスは、日本の魅力を熱筆した旅物語!!

もう一冊、『外国人からみた日本』の話を。ただ今回は、現代日本ではなく明治初期の日本を旅した実在の女性をテーマにした作品です。まだまだ、日本政府自体もその全容をよく理解していなかった蝦夷地、いまでいう北海道を目指し、横浜からの長い旅を行います。

もともと『原作』となるのは『日本旅行記』という旅行記を題材としているそうです。実際に原作を読んだことは有りませんが、その中で描かれている、もう失われてしまった日本の風景を、かなり忠実に再現していると評価されている作品です。

個人的には、ただ原作を忠実に再現しただけでなく、それぞれの登場人物の心情を、しっかり描き切っているところが、面白いなあと思う作品です。

 

色々と沢山書いてみました。こんなのもあるよ!とか、おすすめがあれば教えてくれれば嬉しいです。

 ではでは、今日はこの辺で。

2016/06/11 追記
2016/08/21 追記