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職務給と職能資格制度〜仕事ありきか人ありきか
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日本と欧米の人事制度の中で、もっとも大きな違いは、従業員と賃金・職務の関係である。欧米では、同じ職務ならば同じ賃金を支払う原則が企業内外に関わらず適応される。企業内で同じ業務を担当する社員が2名いれば、両者の賃金は同一でなければならない。それは会社が異なっても適応される。賃金は職務の重要度や難易度に応じて支給される。
一方日本では、職務でなく、人に応じて賃金を支給する傾向が強い。欧米では「最初に仕事ありき」で、仕事をこなすために必要な能力を持った人を配置する。日本では「最初に人ありき」で、その人がこなせる仕事を割り当てる。今回は欧米と日本の人事制度の違いを比較しながら、今の日本企業に求められる人事政策を模索していく(図1)。
図1:日本と欧米の人材マネジメントの違い (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
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欧米の人事制度
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欧米は早い時期から金融市場が発達し、企業の資金調達手段は証券会社などの直接金融で行なわれる。会社は株主のものであり、経営者は株主の利益を最優先しなければならない。収益性をあげ、好業績を維持して、株主に高い株価と高配当を維持することが経営者の使命となる。
以上の視点から、明確な経営戦略を立て、それに必要な組織計画と職務体系を立案し、その職務をこなせる人材を企業内外から配置する人材配置計画を立てる。
株主の利益を優先するためには、投下資本収益率を中心とした収益目標を重視しなければならない。それは経営戦略を短期間で利益をあげることに重点を置き、従業員を育てるという考えでなく、即戦力になる「人材」を必要とする。
欧米では、企業が従業員を雇う時は職種別に採用する。そのため、欧米の学生は人事管理・マーケッティング・財務管理などの将来自分が就くべき職種を考えた専門科目を履修する。
また、大学のカリキュラムも職種別に専門性を持った即戦力の人材を育成すべく、M&Aのケーススタディや新商品のマーケッティング戦略の立案など、企業内の具体的な業務を授業の中で行なう。大学生の中には、より高度な専門知識を得るために、大学院に進学するケースもある。大学院のカリキュラムはより実践的で、MBAの取得者は大学の新卒に比べて2倍の初任給を得ることができる。
社員の募集の際には、人事部の採用担当者が採用しようと考えている職種に関連する各大学の部門に採用職種を明示し、希望する学生の第一次面接を行なう。この第一次選考を通った学生は、採用職種の部門長と面談する。採用の決定権限は部門長にあり、昇給・昇格の予算などの決定権限も部門長に与えられている。人事部門の役割は、部門長のサポートとなり補助的な役割である。
一旦採用された後、従業員は採用された職種の中でキャリアを積んでいく。例えば人事部として採用されれば、採用・教育・C&B(Compensation & Benefit)あるいは部門のHRジェネラリストに特化して、自分の専門性や経験を積み重ね、キャリアを形成していく。数年後の昇進の可能性や自分の専門性を社内で活かせないと考えた場合、従業員は社外に働く場を求めていく。欧米では外部労働市場が形成されているため、人材斡旋会社などが多く存在し、転職が容易な労働環境にある。
自分のキャリアは自分で形成していく考え方が基本である。そして、企業と従業員が対等な立場で雇用契約を結び、事由の有無に係らず、雇用契約を終了できる「任意の雇用(Employment at Will)」の考え方が根底にある。
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著者プロフィール
日本ピープルソフト株式会社 小河原 直樹
米国Baylor大学大学院国際ジャーナリズム学科卒業後、SAPジャパン(株)にHRコンサルタントとして入社。その後、外資系金融企業で日本及びアジア地域の人事責任者として勤務。現在日本ピープルソフト(株)でHCM Global Product Strategy. Senior Managerとして日本の製品戦略の責任者。
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