11月30日から「Amazonプライムビデオ」で配信が始まった以下のような番組企画が廻ってきて、それを見て腰を抜かした次第です。以下、AV Watchからの転載。
Amazonプライムビデオさんは今、30日間視聴無料のキャンペーンをしているとのことだったので、既に配信されている第一話をザックリと拝見しました。実は実際の配信の中では決定的な表現を巧みに避けているのですが、もし本当にこの企画が冒頭の記述どおり「参加費1人100万円。笑ってしまった者は退場し、残った1人が1000万円を総取りする」というルールで実行されているのならば、このゲームに参加している10名のお笑い芸人には賭博罪が適用される可能性が高いです。以下、当該番組のキャンペーンサイトへのリンク。
これは今年冒頭に読売巨人軍が野球賭博で大荒れになった時にも解説したことではありますが、ここで改めて刑法で原則的に禁じられている違法な賭博行為と、違法ではない「褒賞・罰金」の違いを解説しておきます。刑法185条で原則的に禁じられている賭博とは、「偶然の勝負に関し財物の得喪を争うこと」という定義が為されています。この中で特に判り難く一般的に誤解が多いのが「財物の得喪を争う」の「得喪」の部分。これは「獲得と喪失」の両方の要素がある行為を意味するもので、ゲームに参加する複数人の参加者の間に損と得の「双方向性」が存在することが要件であるとされています。
例えば今月4日に開催され銀シャリが優勝したばかりのM-1グランプリ。この大会の優勝者には1000万円の賞金が提供されますが、これはいわゆる「褒賞」もしくは「ご祝儀」にあたるものであり刑法で禁じられている賭博にはあたりません。ポイントとなるのは、賞金はすべてスポンサーから提供されるものであり、参加者自身の参加料が積み上げられるものではないこと。賞金を一方的に払う側にあるのはスポンサー企業であり、一方の芸人は例えゲームに負けても「損することがない」。即ち、そこで提供される財物の流れが常に一方向であるが故にこのゲームは「財物の得喪を争う」ものにはなりません。
一方、ダウンタウンが出演する長寿番組「ガキの使いやあらへんで」の恒例企画となっている「七変化」という企画があります。これは、一人のお笑い芸人が「あの手この手」と扮装を凝らしながら、同僚芸人や番組スタッフを笑わせ、笑ってしまった者が1000円を支払うというものです。この種のゲームはいわゆる「罰金」と呼ばれているモノであり、笑ってしまった者が一方的に支払う側にあり、笑わせる側にいる芸人は例えゲームに負けても損することがない。即ち常に財物の流れが一方向であり、そこで参加主体が「損/得」を争っているワケではないのでこれも適法行為です。
一方今回、Amazonプライムビデオで配信されている「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」で、もし本当に「参加費1人100万円。笑ってしまった者は退場し、残った1人が1000万円を総取り」という前提でこのゲームが行われているとすると、このゲームに参加している10人の芸人の間に「偶然の勝負に関し財物の得喪を争う」という賭博の要件が成立してしまい、違法なものとなってしまいます。ちなみに、我が国の法律上はそこで争われるゲームの種類がジャンケンだろうが、囲碁将棋だろうが、睨めっこだろうが、「互いに相手を笑わせる」だろうが、全て「偶然の勝負」と解されます。
繰り返しになりますが、実際の番組の中ではその辺りの参加者間のお金のやり取りがかなり曖昧に描かれていますし、各芸人が参加料を捻出する為に近親者から金を借りたり、消費者金融に行ったりしている場面そのものが番組上の演出で、実際は番組側が用意したお金である可能性もあります。よってこの場で、本当にそこに賭博罪が成立しているかどうかを断定的に語ることはできないのですが、もし法的に問題ない形でこの番組作成が行われているのならばコンプライアンスの立場からもその点は明示しておいた方が宜しいのかなと思いますし、冒頭で示した番組紹介文は修正を要請した方が宜しいかと思います。
笑ったら即退場!? 松本人志が手がける“密室芸”がAmazonプライムビデオ独占配信
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1032585.html
参加者10名。参加費1人100万円。笑ってしまった者は退場し、残った1人が1000万円を総取りする。松本人志による芸人たちの笑わせあいバトル『HITOSHI MATSUMOTO Presentsドキュメンタル』が、11月30日にAmazonプライムビデオで公開された。
松本人志からの招待を受け、100万円を払って参加したのは宮川大輔、FUJIWARA藤本、野性爆弾くっきー、東京ダイナマイト ハチミツ二郎、とろサーモン久保田、トレンディエンジェル斎藤、マテンロウ アントニー、天竺鼠 川原、ダイノジ大地、ジミー大西の10名。 参加費100万円は自腹のため、あまりの高額に招待を断る芸人もいるなか、ダイノジ大地は嫁に頼み込み、野性爆弾くっきーは吉本ファイナンスから全額を借金し、アントニーは先輩のバイク川崎バイクに50万円を借りた。最後の1人に残らないと、100万円は全てパーになる。
Amazonプライムビデオさんは今、30日間視聴無料のキャンペーンをしているとのことだったので、既に配信されている第一話をザックリと拝見しました。実は実際の配信の中では決定的な表現を巧みに避けているのですが、もし本当にこの企画が冒頭の記述どおり「参加費1人100万円。笑ってしまった者は退場し、残った1人が1000万円を総取りする」というルールで実行されているのならば、このゲームに参加している10名のお笑い芸人には賭博罪が適用される可能性が高いです。以下、当該番組のキャンペーンサイトへのリンク。
【Amazonプライムビデオ】HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル
芸人達の元に松本人志から“ドキュメンタル”の招待状が突然届く。招待状を手にした者は驚き、戸惑い、喜び、苦悩する。このバトルに参加するのかしないのか、参加費100万円をどう工面するのか。それぞれが葛藤する。そして勇敢な10人の参加者が一堂に会し、いよいよドキュメンタルの火蓋が切って落とされる。
出演者:ジミー大西、FUJIWARA 藤本敏史、宮川大輔、野性爆弾 くっきー、ダイノジ 大地洋輔、東京ダイナマイト ハチミツ二郎、とろサーモン 久保田和靖、天竺鼠 川原克己、トレンディエンジェル 斎藤司、マテンロウ アントニー
これは今年冒頭に読売巨人軍が野球賭博で大荒れになった時にも解説したことではありますが、ここで改めて刑法で原則的に禁じられている違法な賭博行為と、違法ではない「褒賞・罰金」の違いを解説しておきます。刑法185条で原則的に禁じられている賭博とは、「偶然の勝負に関し財物の得喪を争うこと」という定義が為されています。この中で特に判り難く一般的に誤解が多いのが「財物の得喪を争う」の「得喪」の部分。これは「獲得と喪失」の両方の要素がある行為を意味するもので、ゲームに参加する複数人の参加者の間に損と得の「双方向性」が存在することが要件であるとされています。
例えば今月4日に開催され銀シャリが優勝したばかりのM-1グランプリ。この大会の優勝者には1000万円の賞金が提供されますが、これはいわゆる「褒賞」もしくは「ご祝儀」にあたるものであり刑法で禁じられている賭博にはあたりません。ポイントとなるのは、賞金はすべてスポンサーから提供されるものであり、参加者自身の参加料が積み上げられるものではないこと。賞金を一方的に払う側にあるのはスポンサー企業であり、一方の芸人は例えゲームに負けても「損することがない」。即ち、そこで提供される財物の流れが常に一方向であるが故にこのゲームは「財物の得喪を争う」ものにはなりません。
一方、ダウンタウンが出演する長寿番組「ガキの使いやあらへんで」の恒例企画となっている「七変化」という企画があります。これは、一人のお笑い芸人が「あの手この手」と扮装を凝らしながら、同僚芸人や番組スタッフを笑わせ、笑ってしまった者が1000円を支払うというものです。この種のゲームはいわゆる「罰金」と呼ばれているモノであり、笑ってしまった者が一方的に支払う側にあり、笑わせる側にいる芸人は例えゲームに負けても損することがない。即ち常に財物の流れが一方向であり、そこで参加主体が「損/得」を争っているワケではないのでこれも適法行為です。
一方今回、Amazonプライムビデオで配信されている「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル」で、もし本当に「参加費1人100万円。笑ってしまった者は退場し、残った1人が1000万円を総取り」という前提でこのゲームが行われているとすると、このゲームに参加している10人の芸人の間に「偶然の勝負に関し財物の得喪を争う」という賭博の要件が成立してしまい、違法なものとなってしまいます。ちなみに、我が国の法律上はそこで争われるゲームの種類がジャンケンだろうが、囲碁将棋だろうが、睨めっこだろうが、「互いに相手を笑わせる」だろうが、全て「偶然の勝負」と解されます。
繰り返しになりますが、実際の番組の中ではその辺りの参加者間のお金のやり取りがかなり曖昧に描かれていますし、各芸人が参加料を捻出する為に近親者から金を借りたり、消費者金融に行ったりしている場面そのものが番組上の演出で、実際は番組側が用意したお金である可能性もあります。よってこの場で、本当にそこに賭博罪が成立しているかどうかを断定的に語ることはできないのですが、もし法的に問題ない形でこの番組作成が行われているのならばコンプライアンスの立場からもその点は明示しておいた方が宜しいのかなと思いますし、冒頭で示した番組紹介文は修正を要請した方が宜しいかと思います。