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今月の表紙の筆蹟は、住野よるさん。イラストは、いつかさん。

波 2025年1月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2024/12/26

発売日 2024/12/26
JANコード 4910068230157
定価 100円(税込)
「波」はお近くの書店からもご注文できます。
筒井康隆/九十歳、何がめでたい シリーズ第18回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第88回
【新連載】
三宅香帆/推しとハレ
【住野よる『歪曲済アイラービュ』刊行記念】
[対談]住野よる×いつか/双方向ディアローグ

木内 昇『雪夢往来』
村田雅幸/作家の「まこと」、物語の「まこと」とは何か

小山田浩子『最近』
マライ・メントライン/最強「知覚小説」の効用とは

西條奈加『牧谿の猿 善人長屋』
末國善己/悪党にして善人が江戸の悪に挑む痛快作

江渕 崇『ボーイング 強欲の代償―連続墜落事故の闇を追う―』
恩田 陸/二機の飛行機はなぜ落ちたか

ポール・サン・ブリス、吉田洋之 訳『モナ・リザのニスを剥ぐ』(新潮クレスト・ブックス)
高橋明也/美術館に何を求めるのか? この命題の切実さ

津野海太郎『生きるための読書』
辻山良雄/現役編集者としての嗅覚

QuizKnock『QuizKnock 学びのルーツ』
ニシダ(ラランド)/QuizKnockの過去編

渡邊永人『崖っぷちの老舗バレエ団に密着取材したらヤバかった』
小野あつこ/歌のお姉さんが見た、綺麗事じゃない世界

橋本麻里、山本貴光『図書館を建てる、図書館で暮らす―本のための家づくり―』
鴻巣友季子/「良き隣人」たちと築く知の宇宙

河西秀哉『皇室とメディア―「権威」と「消費」をめぐる一五〇年史―』(新潮選書)
君塚直隆/皇室報道の変遷を教えてくれる名著

【特別企画】
バッキー井上/京都裏寺65歳 第七部完結篇

南陀楼綾繁/あなたはまだ「波」を知らない 文学フリマ参戦記

【掌篇小説】
阿刀田 高/最後の人

【私の好きな新潮文庫】
のん/永遠に叶わない目標
 柚木麻子『私にふさわしいホテル
 江國香織『つめたいよるに
 京極夏彦『今昔百鬼拾遺 天狗
【今月の新潮文庫】
沢村 凜『紫姫の国(上・下)』
吉田大助/愛にまつわるケーススタディ

永井荷風『つゆのあとさき・カッフェー一夕話』
鈴木涼美/私たちの娼婦
【新潮文庫一行大賞】
中高生のためのワタシの一行大賞受賞作品発表
【コラム】
香原斗志『お城の値打ち』(新潮新書)
香原斗志/城は奥行きが深い鏡

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより
【連載】
杏/杏のパリ細うで繁盛記 第12回
中村うさぎ/老後破産の女王 第10回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第9回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第28回
三谷幸喜×ペリー荻野/もうひとつ、いいですか? 第9回
坪木和久/天気のからくり 第17回
内田 樹/カミュ論 第28回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、住野よるさん。イラストは、いつかさん。

◎谷川俊太郎さんの追悼記事の一つ(朝日新聞田中瞳子記者による)から。「自身の詩を朗読する動画を撮りたいとお願いすると、詩の選定で一つだけNGが出た。「『なんでもおまんこ』はダメ」。いまの時代、このタイトルでは風あたりが強いだろう。そう思っていたら、続けてこう言った。「この年になると元気に読めないから」」。確かにあれは男の子のように元気に読んだ方が(読んでみました)断然いいです。
◎あの詩の初出は「小説新潮」(のち詩集『夜のミッキー・マウス』所収)。僕が編集部に入ってすぐの編集会議で「官能特集にぜひ谷川さんの詩も載せたい!」となって、新参者の僕が一瞬躊躇ううちに先輩が手を挙げて担当を取られました。半年後あの詩が届いた時の編集部の盛り上がりたるや! 三十七行ある詩の冒頭を引用すると、「なんでもおまんこなんだよ/あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそうだよ/やれたらやりてえんだよ/おれ空に背がとどくほどでっかくなれねえかな」。卑語を使って性を描きつつ、明るく速く軽く、宇宙や生全体へと繋がっていく谷川さんらしい傑作。
◎その後「小説新潮」の官能特集には筒井康隆さん「魚籃観音記」も登場、孫悟空と観音様の情交を描くこの短篇は男性器の呼称だけで二十八種も出てくる劣情と言語の蕩尽ぶり。その筒井さんが『’60年代日本SFベスト集成』の巻頭に選んだのが星新一さん「解放の時代」で、こちらは〈性の解放〉を謳う時代を徹底的に揶揄し超越した絶品(「ポルノを超えてしまった大傑作」筒井氏評)。
◎谷川さんは「なんでもおまんこ」には室生犀星の詩「みなあれから」のエコーがあることを明かしていますが(『ぼくはこうやって詩を書いてきた』)、言葉の澄明と世界観の徹底という点で「解放の時代」は「なんでもおまんこ」と好一対に思えます。谷川さんの詩と一緒に犀星や星さんもぜひ。
▽次号の刊行は一月二十八日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。