「日本人の知らない日本語」
2009年4月16日(木) 9:22:20
「日本人の知らない日本語」(蛇蔵&海野凪子著/メディアファクトリー)を読んだ。
日本語学校の教師(日本人)が外国人に日本語を教えていくコミックエッセイである。日本語初心者たちの奇問・珍問の数々が面白い。へーこんなこと疑問に思うんだー、という発見がいろいろある。まぁ「ここがヘンだよ日本人」に近いアプローチな部分もあるのだが、我々が気づきにくい日本語の一側面をシンプルに教えてくれる。
でも、ボクが一番面白かったのは実はそこではない。随所に出てくる日本語トリビアというか、外国人の質問で明らかになった日本語の歴史みたいなものである。もちろん、たぶんどっかで既知のものであると思う。どっかで聞いたことがある、という感じはあるのだけど、漫画でわかりやすく教えてくれるとまた違う知的興奮があった。
たとえば変体仮名の話。昔は「かな」がたくさんあった。たくさんありすぎてややこしいくらいたくさんあったという。理由は、いろんな漢字を元にみんなが勝手にひらがなを作りまくったからなんだって。例えば「か」と読む「かな」なんて7つくらいあったらしい。さらに「合略仮名」という一文字一音ではない「かな」もあり、一文字で「まいらせそうろう」と読ませる「かな」もあったとか。
この混沌に終止符を打ったのは明治政府で、明治33年に「ひらがなは一音につき一字だけを標準とする」という政令を出した、と。で、標準からはずれた「かな」を変体仮名と名付けた、らしい。あぁ、たまに古い店とかの店名に変体仮名が使われているが、それはその頃の名残なのねー…。
たとえば「猫」という漢字は中国語の「苗(ミョウ)」から来ていて、それに獣偏を付けたということらしい。要するに「ミョウと鳴く獣」という意味なんだって。「鳩」は「九(クー)」と鳴く鳥だから「鳩」、「蚊」は「文(ブン)ブン」いうから「蚊」、「鴉」は「牙(ガー)」と鳴くから「鴉」。ふーん。音を表した漢字だったわけね…。
たとえば、「しゃもじ」とかいうけど、この語尾の「もじ」は室町時代のギャル語だったらしい。宮中の女房が「ねー、なんか『もじ』って言葉、かわいくね?」と言いだして、何にでも「もじ」をつけたのが現代まで残ったらしい。「かもじ」「ゆもじ」「ひもじい」とか。ちなみに丁寧語の「お」もギャル語。彼女たちが何にでも「お」をつけたことの名残だとか。「田楽」も「それじゃあ名前がかわいくない」ってことで、「お」をつけて「おでん」となったとか(へーへーへー)。
「お」と言えば、「を」と発音が同じである。一時期WOと発音した時期があったらしいが、いまでは両方Oである。で、昭和の初めに「両方同じ音なのはややこしい。よし『を』をなくそう」って決めたんだって。でも反対も多く、「じゃぁ助詞の『を』だけ残して、あとは全部「お」に統合。でもこれは暫定ルール。将来は『を』を全廃します」と決めたらしい。そのままなし崩しに「を」が生き残っているのが現在だとか。そうかー「を」はもしかしたらなかった言葉なのかー。「私おスキーに連れてって」みたいな使い方になっていた可能性が高かったのかー(←例が古い)。
とか。とかとか。
いやぁ、なんだか面白かったな。言葉は時代とともに変わる。いまのギャル語とかもかなりの創意工夫があり、とても面白い。いちいち目くじら立てないで、言葉の変遷として楽しめばいいのかも。