リアリズムと防衛を学ぶ

本の感想などを書いています。

官邸ドローン事件で出頭した人は、もっと拗らせる前に捕まって本当に良かった

首相官邸屋上でドローンが発見された件で、福井県の男性が出頭しました。この男性のものと思われるブログ「ゲリラブログ参」が話題になっています。そこには犯行に至るまでの思考の変遷、準備などが書かれています。

出頭した男性が本当に犯人かどうか、話題のブログもその人のものであるかはまだ分かりませんが、もしそうだとすると、この方はこの程度の事件しか起こさないうちに捕まえてもらえて本当に良かったと思います。

警察へ出頭した人の動機

警察に出頭し、逮捕された容疑者は、犯行についてこう語っているそうです。

警視庁によりますと、24日夜8時すぎ、福井県小浜市にある小浜警察署に...容疑者が出頭し、「反原発を訴えるために官邸にドローンを飛ばした」などと話したということです。
また、「福島の砂を容器に入れた」と話し...官邸に対する威力業務妨害の疑いで逮捕しました。(NHK 15/4/15)

逮捕直後に容疑者の発言だとして警察が発表する内容には虚構が多く、まるであてにならないのですが、話題のブログの内容はこれに一致しています。

3.11後は盛り上がってた・・・それでも大飯は再稼動した

デモは各地で続いてる・・・らしい・・・マスコミも取り上げなくなった

デモで再稼動は止まらない・・・暴動にもならない

再稼動まで時間ないからデモは一旦パス・・・

再稼動に反対する活動ではなく再稼動を止める活動をしなくては・・・

(2014/7/19 ゲリラ戦)

いろいろ検討した末、 福島の土をドローンで首相官邸に運ぶことにしたようです。

昨年12月に実行しようとして失敗、改めて統一地方選の直前を狙った、と書いています。 

計画

4/8 官邸にドローン墜落・・・マスコミ報道

4/9 ブログ公開、警察に出頭・・・ここが選挙3日前

4/12 混乱の中で選挙を迎える

(15/4/10)

妄想のターゲット

最初期の記事(2014年7月)の段階では、まだ具体的プランは決まっていません。実行された計画より、手段や目標について幅広く妄想が行われています。

とりあえず1人で活動・・・ローンウルフだ


「革命的で高度な破壊活動と無差別なテロリズムの間には
明確な区別がなされねばならない」(チェ・ゲバラ)


破壊活動とテロの区別・・・難しいな・・・

今は何でもかんでもテロ扱いだから・・・

殺傷せずに何かを破壊・・・デモ以上テロ未満・・・

いや・・・再稼動を止めるためにはテロをも辞さない

再稼動すれば加害者・・・なら再稼動を止めて加害者のほうがいい

具体的に何をするか・・・何ができるか・・・

サリン風の液体や炭疽菌風の粉末をを郵送・・・

爆弾風の圧力鍋を郵送・・・

生卵に穴を開けて中身を抜いて中に臭豆腐とか入れてテープで蓋して・・・投げる

ダメだ・・・発想がショボイ・・・知能が足りない

大事なのは時間と場所・・・

脳内シュミレーション・・・

原発施設、電力会社、社宅・・・・

 

荒ぶる中年が1人で想像し実行できる事なんてたかが知れてるか・・・

サリンや炭疽菌『風』のものを送りつけるということで、本当に誰かを傷つけるテロをやるつもりはなかったようです。「爆弾風の圧力鍋」というのは、アメリカのテロ事件で使用された圧力鍋爆弾を意味します。

 ターゲットとしては官邸は考えておらず、原発自体や電力会社の社宅があげられています。

発炎筒プラン

実際には福島からとってきた土をドローンに搭載したわけですが、発炎筒をのせるプランもあったようです。

汚染土配達仕様から一旦発炎筒4本仕様に・・・

発火はヒューズからニクロム線に・・・

リレーを使った時限仕様からサーボを使った遠隔仕様に変更

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.....FPVによる射撃、爆破、放火、投下、散布・・・イロイロ可能・・・

散弾(方向性を持たせた爆弾)にすれば命中率はかなり高い・・・と思う


ロケット(弾頭汚染土ミサイル)を搭載をしたくて・・・

発炎筒焚くのとミサイル撃ちこむのでは与える印象が全く違うから・・・

自作ロケット用の火薬エンジンを購入・・・重量的にも4本は積める・・・

でも敷地外までフッ飛んでくリスクがあるのでやめる

 

最悪の組み合わせ

いずれも、色々と思いつめてしまった人の妄想の域を出ていません。

しかし、危険な兆候は見て取れます。さらに思いつめて妄想を拗らせれば、「...風の」が取れて、本当に危険なものを郵送やドローンで送りつけていたかもしれません。

また、予備案の発炎筒を使った場合、本人は少々びっくりさせる効果だけを狙ったものでしょうが、火災を起こした可能性もあります(事例:姫路消防署pdf1資料)。

実際、ドローンで土を下ろすというのも、計画通りにいけば危険性は乏しいけれど、ドローンが墜落して誰かを殺傷する恐れがあります。

そういった模擬(のつもり)攻撃のターゲットが電力会社の人の社宅にも及んでいたら、どうだったでしょう。学生運動が盛んな時には、テロリストが爆弾を警察の幹部の自宅に郵便で送り、警察官の奥さんが死亡した例があります。この方にはそこまでするつもりはなかったでしょうが、福島の土100gでなく、発炎筒の方を選択していたら、意図せずにちょっとした火事の原因くらいにはなっていたかもしれません。それでも十分、人は死にます。

いま捕まってよかった

誰かを傷つける前に捕まって、本人のために幸いであったろうと思います。この程度であればただの困った人ですが、もっと拗らせて手段と目標がエスカレートすれば、本人にそのつもりがなくても、誰かを殺傷してしまっていたかもしれません。

この人は、一応、誰かを怪我させたりしないように気を使っています。善意の人です。しかし目的のために手段を選ばない姿勢は、その人が良かれを思っていればいるほど、やっかいです。バートランド・ラッセルは「高潔な人たちが、自分は正当にも『道徳的な悪』を懲らしめているのだと思いこんで行ってきた戦争、拷問や虐待のことを考えると、私は身震いする」と言っています。

実際に人を殺したテロリストだって、もとをたどれば普通の人であり、ただ少し不幸だっただけなのでしょう。今回の方も、他に人生の楽しみをみつけて、誰にとっても穏やかな生活を手に入れてほしいものです。