アドビはHTML5を「Flashと連係できるテクノロジー」と位置づける

2010年4月19日

アドビシステムはこれまで、HTML5について同社がどう考えているのか、明確に語ることをしてきませんでした。

昨年の6月、同社エバンジェリストのSerge Jespers氏はHTML5に対して次のようにブログに書いていました。「HTML 5がもたらすものは何だろうか、と見てみると、私にはそれがFlash Player 7の小さなサブセットのように見えるんだ」。

また、CTOのケビン・リンチ氏も今年の2月、「もしHTMLがFlashのすべての機能を同等の信頼性でできるのなら、われわれも助かる。しかし、そういうことにはなりそうもない」と、HTML5は進化するにしてもFlashには追いつかないだろう、ということをブログで表明しています

しかしアドビがHTML5を無視し続けられるとは思えません。一体アドビはHTML5についてどう考えているのか? オフィシャルな答えをインタビューで聞く機会が先日ありました。

HTML5かFlashか、どちらかではない

インタビューの相手は、同社Adobe Flex デベロッパーマネージャのマイク・ポッター氏。インタビュー自体は@ITの連載記事のために行ったもので、インタビューの全文は記事「Adobe AIR/FlashはHTML5と連携し モバイルにも進出」として公開されています。

記事から、HTML5に関するポイントを拾ってみましょう。

最初に聞いたのが「アドビはHTML5についてどのように見ているのでしょうか?」というストレートな質問です。以下のような回答でした。

アドビはHTML5を、Flashとうまく連係できるテクノロジーと見ています。HTML5かFlashか、どちらかではなく、両方が連係・連動するものだと考えています。 HTML5が進化するとしても、Flashの良い点は存在し続けます。FlashはHTML5より速く進化しているのです。

(略)

FlashなのかHTML5なのか、ではなく、この2つはどちらもWebを前進させていくテクノロジーなのだと思います。これがアドビという会社としての HTML5の見解です。

アドビがオフィシャルな立場でHTML5と対立するような発言をするとは思えなかったとはいえ、多少は批判的な言葉がでてくるかと予想していました。しかし、これだけ率直にHTML5を受け入れる発言が冒頭からでてきたことに、多少の驚きを感じたのも正直なところ。

製品での対応については、AIR 2.0でHTML5を一部サポートを表明しました。

Adobe AIR 2.0はHTML5の一部をサポートしています。それは、Adobe AIRが採用しているWebKitによって実現されています。具体的にいくつか紹介すると、Canvasタグはサポートします。Videoタグはビデオコーデックが固まっていないので、サポートしていません。

また、Dreamweaver CS5でFlashのグラフィックとアニメーションを変換する機能についても触れています。この機能についてはPublickeyの記事「アドビ、FlashをHTML5のCanvasへ変換するプロトタイプ機能を明らかに。アニメーションも変換」で紹介したものです。

Dreamweaverの次なる実験的な機能では、HTML5のCanvasタグを使って、IllustratorのグラフィックをWebサイトに張り付けるなどがあります

アドビの軸足はFlashにある

AIRのHTML5対応はWebKitが対応した結果ですし、Canvasへの変換機能は実験的なものといえます。HTML5を通じてすべてのWebアプリ化しようとしているグーグル、HTML5へのコミットメントを強めているマイクロソフト、そしてジョブズ氏が「未来はHTML5にある」と言ったと伝えられるアップルらと比べて、アドビはHTML5に前のめりではなく、軸足がFlashにあることは明白でしょう。

記事「アドビ「iPadでFlashアプリを動かす」デモを公開。マルチプラットフォーム対応をアピール」で紹介したように、アドビはFlashを含む自社のソフトウェアを、PCからモバイルに渡るあらゆるデバイスの共通のアプリケーションプラットフォームにしようとしています。これがいまのアドビ/Flashにとって大きな目標の1つです。

しかしそこに表現力を高めたHTML5がグーグルの強い後押しによってライバルとして登場し、アップルがiPhone/iPadからFlashを排除することで立ちはだかり、またマイクロソフトもSilverlightで追い上げを狙っています。こうした状況で、アドビはFlashから下りることが難しいことも事実。アドビは当面、戦略としはこれらのライバルにFlashを武器に強気で進むことを選んだのでしょう。

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Junichi Niino(jniino)
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