今注目のワード「ナトカリバランス」とは…

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健康な人生の第一歩

 健康な人生を送るうえで大切なことの1つが健康であること。

 そのためには、生活習慣病に気を付けることが重要。そして、その第一歩といえるのが「高血圧予防」だ。高血圧はさまざまな病気を引き起こす元凶となるからである。ここ数年、高血圧を予防する、ある有効な考え方に注目が集まっているという。それは……。


高血圧予防に有効な「ナトカリバランス」

 高血圧予防の新しい考え方として今、注目されていることがある。それが「ナトカリバランス」だ。

 ナトカリバランスとは、ナトリウムとカリウムの摂取バランスを指し、ナトカリバランスを反映した指標がナトカリ比となる。ナトカリ比が低いほど高血圧のリスクが低くなることが明らかにされており、ナトカリ比は尿検査によって分かる。

 東北大学医学系研究科教授で一般社団法人ナトカリ普及協会理事の寳澤篤氏は、「塩分に多く含まれるナトリウムには水をため込むという性質があります。そして、ナトリウムを摂りすぎると血液中の水分が増えて血管の圧力が高くなってしまうのです。一方、野菜や果物に多く含まれるカリウムには体内の塩分を排出しやすくしてくれる働きがあります。したがって、塩分を控えめにするとともに野菜や果物、イモ、豆などカリウムを多く含む食べ物を日頃から積極的に摂ることはとても大事なのです」と解説する。


野菜摂取の重要性を教えてくれる「ナトカリマップ® 」

 厚生労働省が推奨している1日の野菜摂取量は350g。ところが実際の平均摂取量は約270gで目標と乖離しているのが実情だ※1

 ナトカリ比の考え方を浸透・普及させるために開発したツール「ナトカリマップ®※2からも、野菜の重要性がみえてくる。 

「このマップは東北大学の小暮真奈先生らが考案された原型をもとに開発しました。その大きな特徴はナトカリ比が高い料理は赤からオレンジ色に、低い料理は緑にといったように料理ごとのナトカリ比の高低が色分けされているので一目で分かりやすいということです。毎日の暮らしにナトカリマップを上手に活用して食生活改善のきっかけにしていただきたいですね」(一般社団法人ナトカリ普及協会事務局の担当者)


ナトカリバランスで成果を実感

 「ナトカリバランス」に注目した取り組みにより、大きな成果を挙げているところがある。新鮮な地場産野菜で知られる宮城県登米市である。

 同市では2017年に東北大学東北メディカル・メガバンク機構とCOI東北※3からの協力を受け、特定健診時の尿検査でナトカリ比を測る取り組みを実施。合わせて会場などでナトリウムとカリウムのバランスを意識することを啓発している。

 同市市民生活課健康推進課担当者は、「マップをお見せしながら説明すると市民の皆さんはとてもよく理解してくださいます。減塩はうまくいかないという方も野菜を足せばいいのねと前向きにとらえてくださいます。ご自分の尿のナトカリ比の数値もしっかり覚えておられて去年よりも下げたいと意欲的に健診に望んでくださっている方が増えてくるなど普及しつつあることを実感しています」と成果のほどを語っている。

 また、同市では21年度から市内の小学校5・6年生の親子を対象とした「野菜たっぷり!適塩ナトカリレシピコンテスト」を実施、コンテストを通じて地元食材を知ることやどうやったら塩分を減らせるか、野菜を増やせるかが親子で考えるきっかけ作りになっているという。

 もともと登米市は脳血管疾患の死亡率が高く、高血圧対策が重要課題だった。ところが、こうした取組みの結果、登米市民の血圧値は東北大学東北メディカル・メガバンク機構とCOI東北の調べでは132.0mmHg(17年)→129.6 mmHg(19年) と改善されており、ナトカリバランスを意識した取り組みは血圧管理に役立つことが期待できる※4

 さらに同市では市内の道の駅の協力のもと、食生活改善推進員が考案した地場野菜を使ったナトカリレシピ集の提供やナトカリ総菜の販売なども行っており、こちらも大変好評だという。

 登米市のこうした取組みは県内でも大きな反響を呼び、大崎市や大河原町、七ヶ浜町などでも健診にナトカリ比測定を取り入れるなどといった動きが出てきており、宮城県内のみならず全国に広まっていくこと、そして、日本から高血圧の人が減っていくことを大いに期待したいものである。(2023年9月28日取材。所属・役職は当時のものです)

※1 令和4年国民健康栄養調査より
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_42694.html

※2 ナトカリマップ®
東北大学とカゴメの登録商標であり、両者が共同で特許を保有しています。

※3 センターオブイノベーション東北拠点
東北大学を中心に複数の民間企業が参画。センサー技術やIoT(モノのインターネット)、AIを活用した革新的なイノベーションによる健康社会を、産学連携で実現することを目標に掲げる。

※4 3年連続健診継続受診者11,268人 東北大学COI東北拠点の成果より。

・食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
・薬を服用中の方や通院中の方、あるいは栄養指導(食事指導)を受けていらっしゃる方は、医師とご相談ください。
・普段から食塩摂取量に気を付けた食生活を。

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