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安全保障NATO支援に動くロシアのしたたかさ
アフガニスタンでの協力に積極姿勢を見せるメドベージェフの皮算用
ソ連のアフガニスタン撤退から20年以上たった今、NATO(北大西洋条約機構)が再びロシアをこの国に呼び戻そうとしている。目的は、麻薬密輸組織との戦いや、治安部隊の再建で協力を得るためだ。
対ロ関係の「新たなスタート」としてNATOのラスムセン事務総長が推進した協定では、ロシアはアフガニスタン治安部隊に物資や訓練を提供し、麻薬対策プログラムと国境警備を支援することになるが、戦闘部隊の派遣は行わない。
11月中旬にリスボンで開かれるNATO首脳会議で、ロシアのメドベージェフ大統領が協定に署名する。これにより、NATO拡大とロシアの08年のグルジア侵攻で悪化した両者の関係修復が期待される。
しかし、ロシアは大きな見返りも要求。旧ソ連圏へのNATOの派兵規模を3000人規模までに限定すること、東欧諸国に25機以上の軍用機を配備する場合は42日未満とすること、ロシアの同意なしに中欧とバルカン半島、バルト3国に大規模な追加派兵をしないこと──といった条件を突き付けている。
メドベージェフの強気の理由は、NATOにとってロシアとの連携が不可欠であることを熟知しているからだ。ロシアがその気になれば、中央アジアでNATOの後方支援活動を妨害することもできるし、NATO内部の分裂を誘うこともできる。
とはいえ、メドベージェフも限度を心得ていると、専門家は言う。NATOが01年にアフガニスタンに展開して以来、彼らはロシアの国境の南側を「守ってくれる」存在だからだ。アフガニスタンにおけるNATOの失敗は、すなわち国境地帯の不安定化を招く。だから「建設的な」関係を結びたがっていると、カーネギー国際平和財団モスクワセンターのドミトリ・トレーニン所長は指摘する。
どうせ旧ソ連圏からNATOを追い出すことは不可能だ。それならば、アフガニスタンで彼らに恩を売っておいたほうが得策だ、ということだろう。
[2010年11月17日号掲載]