「和民」を元パートが提訴 弁護士が語る「内部告発に対する違法な報復解雇」
元アルバイトの提訴翌日に「日経レストラン」WEBページに掲載されたワタミ社長渡邉氏のインタビュー記事。迅速な対応だが、果たして現場担当者から正確な事実関係の報告を受けているのか。 |
- Digest
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- 裁判情報にアクセスできぬまま傍聴へ
- 労基署への相談から解雇までの経緯
- 真の解雇理由は内部告発への報復措置と主張
- 原告が名前を出せない事情とは
【Digest】
◇裁判情報にアクセスできぬまま傍聴へ
◇労基署への相談から解雇までの経緯
◇真の解雇理由は内部告発への報復措置と主張
◇原告が名前を出せない事情とは
6月初め、WEB上で以下の新聞記事が目についた。
内部告発で解雇 居酒屋「和民」元パート男性が提訴 6月2日21時46分配信 産経新聞
居酒屋「和民」などを展開するワタミフードサービス(東京)の賃金未払い問題で、労働基準監督署に内部告発したため解雇されたとして、20代の元パート店員の男性=大阪府在住=が2日、同社に約450万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
訴状によると、男性は平成15年4月から「和民香里園駅前店」(大阪府寝屋川市)で勤務。勤務時間から30分未満の端数を切り捨てる賃金未払いがあったため、18年7月に北大阪労働基準監督署に通報した。2カ月後、同社社員から「労基署に行くようなやつは企業にとって脅威」などといわれ、解雇されたという。
同社は18年10月の同労基署の是正勧告を受け、東京や大阪など47店舗の217人に未払い分計約1200万円を支払っている。
ワタミ広報担当は「訴状を見て対応を検討したい」としている。
裁判情報にアクセスできぬまま傍聴へ
これが事実なら非常に重大な事件だが、他のメディアによる関連記事はサイト上に見当たらず、「すき家」や「マクドナルド」などで労働者側の支援を行っている団体や弁護士に聞いても、裁判の日時も、原告や担当弁護士の名前もわからないという。そこで、大阪地裁に直接電話して聞いてみた。06-6316-2813(直通)
広報係の男性に「6月にワタミを元パート店員が損害賠償で訴えた記事を読んだんですが、裁判の期日はいつで、どこの法廷でしょうか?」と尋ねたところ、「原告代理人の名前はお伝えできないが、期日と場所は調べてみるので10分後にお電話ください」とのことで、おそらく以下の裁判だろうということがわかった。
・事件番号「平成20年(ワ)6784」
・7月18日(金)13:10より 611号法廷
・担当は第五民事部(06-6316-2836)
7月18日に第一回裁判が行われた大阪地方裁判所。被告側は欠席、傍聴者は筆者1名 だった。 |
7月18日の11時半に大阪地裁に着き、6階にある611号法廷の廊下に貼ってある「開廷表」を見ると、確かにこの裁判であることが確認できた。
--------------------------13時前から廊下で待っていると、13:02に扉が開いた。
裁判長 菊井一夫
13:10「平成20年(ワ)6784」第一回弁論
賃金等
原告/●●●●(編集部により非公開)
被告/ワタミフードサービス株式会社
--------------------------
傍聴席は24席あったが、座っているのは筆者一人。しばらくすると原告側と思われる弁護士が1名入ってきたが、被告側の席は空いたままだ。
そしてまだ定刻前の13:06、裁判長1名が入廷し、「それでは始めます」と宣言した。どうやら、今回は原告本人も被告側も欠席らしい。
原告側弁護士が、追加の証拠としてカセットテープを提出することを要求し、裁判長はその文字起こしとテープ本体を被告側にも提出するよう要請した上で、次回期日を9月1日11時から、電話会議(非公開)とすることを告げて、13:10に閉廷した。
廊下に出て、原告の担当弁護士に取材を求めたところ、翌日の取材を了解してもらった。
その後、今回の裁判資料を見るために8階にある第五民事部に行き、閲覧申請(150円の収入印紙と保険証などの身分証明書と認印が必要)をした上で、民事部室内の4人掛けの机を一人で使い、約2時間にわたり全ての資料を閲覧した。
その際、持参したノートPCを開いてメモを始めたが、職員からは特に注意もされず、「全部写されると困ります。あくまで閲覧なので」とだけ言われたので、「要点をメモしているだけですから」と答えて入力を続けた。
原告の訴状は6月2日に出され、代理人は大阪にある法円坂法律事務所の西念京祐弁護士他、被告側であるワタミフードサービス株式会社の答弁書は7月11日に提出され、被告代理人は東京の三好総合法律事務所、担当は鶴崎有一弁護士とのことだった。
原告の訴状では請求の原因が10ページにわたり説明されているのに対し、被告側の答弁書は、原告の主張を認めないことと訴訟費用は原告の負担とすることしか記載されておらず、その主張の理由は示されていなかった。
翌日、法円坂法律事務所を訪れて西念京祐弁護士に詳しい話を聞いた。
労基署への相談から解雇までの経緯
「大阪弁護士会館で行われた無料法律相談に彼がきて、たまたま僕が担当したのがきっかけでしたこの先は会員限定です。
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原告が6月2日に大阪地裁に提出した訴状。賃金請求として145万円、精神的苦痛に対する慰謝料として300万円を請求している。
上から会社側が原告に送った解雇予告通知書。「パートタイマー就業規則第41条7項に基づき解雇する旨を通告した」とあるが、原告が録音したテープを聴く限り、そのような理由は告げられていない。懲戒解雇の理由が具体的に書かれた退職証明書。会社側は当初「原告が店長を殴った」としていたが、原告から事実無根との抗議を受けて、「胸ぐらをつかみ壁におしつけた」に変わったという。会社側が各店舗に適法な勤怠打刻ルールを徹底するよう通達した「連絡」文書。原告は、懲戒解雇された真の理由は、30分単位だった勤怠打刻を労基法通りの1分単位にするよう平成18年7月末に労基署に相談したためだと主張しているが、この「連絡」文書は、それから半年経っても改善されていない店舗があることを示している。
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頑張れ。
id:I11さんのおっしゃるとおり!ところで、「なにかを信じておきながらそれに生きない。それは不誠実というものだ」ですか・・・http://d.hatena.ne.jp/throwS/20080721#1216642158 「西田敏行」は訂正されたようなんですが・・・
給料を支払わずそれを訴えたら「労基署に行くようなやつは企業にとって脅威」と言って解雇とは滅茶苦茶だ。こんな会社の経営者が人間性向上とか教育改革をしているのだから笑ってしまう。
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読者コメント
おおよそ18カ月で100万のサービス残業がありました。
酷いです。10円でも切り詰めた生活費なのに 親にも仕送りしなければいけなかったのに 他の人も同じだろうな。外人のみんな。もし賃金カットの横行だとしったら悲しむだろうな。なにやってるんだろ。渡邉美樹。澄まして笑ってるけど僕は許せない。組織的犯罪では。渡邉美樹いいの。返しなさいよ!はやく!返して私の大切なお金。
内部告発の理由が細かすぎるとの意見がありますが、問題は、当該告発へのこの会社側の対応だと思います。
なんであれ、“告発するような人間はこの会社にはいられない”と言うのは、日本人の感覚が未だに村社会的であることを示します。
近年これだけ、日本組織の不祥事・犯罪が明らかになってるにもかかわらず、この村社会的価値観。残念ですね。
細かすぎる人間がいると窮屈になるので、私はただこれだけの理由で労基署に届け出たのであればあまり賛同できません。むしろ、昔フルキャストで日雇いのバイトをしていたときに、給料が出る時間の1時間前集合だったことのほうがよっぽど納得いかなかったです。
ほんとに会社が悪くてこの方が正しいのか疑問です。バイトの中にはトイレに行くとか帰る準備とか、さらには友人を待つとかして、一番最後の最後にタイムカードを押している人もいるように思います。私自身、今までバイトしたところはすべて30分未満の時給はもらえませんでしたが、意図的にギリギリまで働かされるとかいうわけでもないし、そのくらいは気になりませんでした。
ここの会社はグッドウィル同様、介護事業にも参入していますが、TVで報道を見た時、個人的には少し不信感は感じました。
貪欲な儲け主義者は、野暮でメリットのないことはしません。また心からの笑顔ではなく目は笑っていないものです。こればかりは演技が難しく意外と判るものです。
表の顔と裏の顔を使い分ける二重人格者ですね。
経営者にはよくいるタイプですよ。
詐欺師でもそうですが、本物(偽者)はニコヤカな笑顔をしていて、誰もその人が詐欺師だとは気付かないそうです。余程、社会経験があって見る目のある人でないと見破れません。
何処も彼処も同じですね、私も先月内部告発で会社を退職(解雇同然=出入り禁止)しました。理由は内部告発をするような人物は出入りしてはこまるとのことでした。窃盗の疑いがあるから調査するよう告発したのですが、窃盗をしたか、しないの問題ではなく告発したのが問題。訳の判らない大手家電量販店Bのハイソーセンタでした、自分にとっては辞めようと考えていたので痛くもかゆくも無く。
>>被告側の答弁書は、原告の主張を認めないことと訴訟費用は原告の負担とすることしか記載されておらず、
原告と被告の立場の違いがあるので、訴訟では一般的なことです。
原告は請求の正当性を訴え、被告は訴えの主旨と証拠を見極めて反論を展開するからです。
原告の詳細さと比較すると、まるで被告が不誠実な対応をしているような誤った印象を与えます。
裁判の現実を理解して適切な表現をすべきでしょう。
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