今となっては日常的にも耳にするようになったウェルビーイングという言葉。その定義は幅広く、人によって異なります。

先日、私のウィンドウズは起動画面で「今度の休みの時期はMicrosoft Searchでウェルビーイングを優先させましょう」とメッセージをポップアップしてきました。ここで使われる「ウェルビーイング」とは「幸せ」という意味を持っています。

「健康」に近いニュアンスでウェルビーイングを使うこともあります。WHOによれば健康とは肉体的、精神的、そして社会的にも「よい状態=ウェルビーイング」であること、と定義しています。

「福祉」に近い意味合いで使うこともあります。特に、政府関係者が用いる場合、政策のねらいをウェルビーイングに置くことが増えています。「箱(建物)」をつくることが国の目的ではなく、国民の「幸せ向上」を図ることに本来の目的がある、と。

禅(ZEN)や瞑想、マインドフルネスによる精神の安定をウェルビーイングと表現することもあります。

私はファイナンシャル・プランナーですから、「お金と幸せ」の関係を考えています。「幸せ」と聞くと、なんとなく宗教チックなイメージを持たれることもありますが、もっと合理的に「お金と幸せ」を考えてみたいのです

幸せや安心のためのファイナンシャル・ウェルビーイング

Image: Getty Images
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ウェルビーイングをいくつかのカテゴリーに分けたとき「ファイナンシャル・ウェルビーイング」という分野があります。「お金の健康」あるいは「お金の幸せ」と解釈します。

例えば、国の金融経済教育に取り組む国の機関であるJ-FLEC(金融経済教育推進機構)は、そのミッションとして「一人ひとりが描くファイナンシャル・ウェルビーイングを実現し、自立的で持続可能な生活を送ることのできる社会づくりに貢献」することを掲げています。そこで、ファイナンシャル・ウェルビーイングについてこのように定義しています。

自らの経済状況を管理し、必要な選択をすることによって、現在及び将来にわたって、経済的な観点から一人ひとりが多様な幸せを実現し、安心感を得られている状態

投資をすることがウェルビーイングではなく「幸せを実現し、安心感を得られる」ことがお金のウェルビーイングの本質なのです。

しばしば、国が投資教育の音頭を取ったり、学校教育で投資についても触れる理由について、我々に投資をさせて株を買わせたいからとの言説が見受けられます。しかし、それは間違い。

お金の教育、その本質は「幸せや安心のために、どうお金とつきあっていくかを知る」ことにあるのです。

お金のリテラシーがある人は、幸せらしい

お金の知識があると、誤ったお金の選択を避け、より賢いお金の使い方をできるようになります。それは日々の買い物から、投資を通じた資産形成にまで通用します。

お金に関する知識や判断力を、金融リテラシーといいますが、金融リテラシーが高い人のほうが幸福度つまりウェルビーイングが高いという調査結果もあります

Image:ミライ研
Image:ミライ研

三井住友信託銀行資産のミライ研究所のレポートによれば、金融経済教育の受講経験がある人のほうがファイナンシャル・ウェルビーイングが高いことが分かっています。家計の収支をしっかり把握しているか、老後資金に関する公的年金の水準について把握しているかどうかなどもウェルビーイングと関係しているとの結果も。

そのほか、ライフプランをしっかり立てていたり、資産形成を前向きに進めている人ほどファイナンシャル・ウェルビーイング度が高い傾向にあります。

あなたが「毎月のやりくりがどうもうまくいかない」とか「将来のお金の不安がくすぶっていてモヤモヤする」などの不安を感じているなら、2025年はお金についてちょっと勉強してみるのはどうでしょうか。

人間関係は良好だし、仕事もそれなりに楽しくやっている…でもどこかに不安を感じているとしたら、もしかしたら、「お金の知識」があなたを幸せにしてくれる最後のピースかもしれません。

お金の知識をウェルビーイング実現のために身につけよう

といっても「どの会社の株を買うか」とか「いつ買うか、いつ売るか」を学ぶことがイコール、金融リテラシーではありません。それはあくまで一部にすぎないからです。

もっとベーシックなところから、お金の基本を学んでみましょう。先述したJ-FLECには一般の人が学ぶための金融リテラシーに関するコンテンツがあります。また、日本FP協会でも同様にお金について学ぶコンテンツが用意されています。

セミナーを聞いてみるのもいいでしょう。リアルでのセミナー、オンラインセミナーなど探せばたくさんみつかります。

ただし、金融機関が主催しているセミナーに参加する場合は、講師が「セールストーク」と「金融経済教育」のどちらで話をしているかを聞き分けるよう心がけましょう。セミナーの内容が「今注目される新興国経済の成長」であり、配られたパンフレットに「新興国株ファンド」と記載されている場合、これはセールストークが混在しています。

それでも無料セミナーを多く実施しているのが金融機関主催セミナーの特徴です。NISAやiDeCoの基本について教えてくれるセミナーであれば、役立つはずです。

「お金の幸せ」、ファイナンシャル・ウェルビーイングについて2025年は考えてみませんか。

山崎俊輔

フィナンシャルウィズダム代表。ファイナンシャルプランナー。夫婦で共働き、共家事、共育児しながら子どもふたりを育てている。

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Source: ミライ研究所(1, 2), J-FLEC, 日本FP協会