Inc.:誰でも失敗はします。しかし、誰もが失敗から学ぶわけではありません。同じ失敗を何度も繰り返し、まったく何も進歩をせず、その理由さえわかっていない人がいます。
許されない失敗はない。本人が失敗を認める勇気があれば。
ーブルース・リー
失敗をしたときに、それを認めるのは難しいものです。失敗を認めてしまうと、自尊心が傷つけられるような気がするからです。しかし、同じ失敗を繰り返さないためには、失敗を十分に認めて受け入れるしかないという、長い間信じられてきた常識のようなものが、最近の研究で証明されました。
それでもまだ、失敗をなかなか認められない人は多いでしょう。
ミシガン州立大学の臨床精神生理学研究所の研究者は、失敗に関して人間は2つのタイプに分かれると発見しました。ひとつは考え方を変えるタイプ(「このことはもう忘れよう。きっとうまくいかないんだ」)、もうひとつは考え方を成長させるタイプ(「なんで目覚ましで起きられないんだ! 何が悪いのか見極めよう。そうすれば同じ失敗はしないはず」)です。
この研究を執筆したJason Moserはこう述べています。
失敗をしっかりと見つめ、失敗しないために時間や労力をもっとかけた方がいいです。そうすれば、失敗を活かすことができます。
考えを成長させるタイプは、失敗を認めて利用しているので、うまく乗り越えることができます。考えを変えるタイプは、失敗を全力で忘れようとしているので、失敗を繰り返すことになります。
賢い、成功する人たちは、決して失敗することに対する免疫があるわけではありません。失敗から学ぶのに適した道具を持っているというだけです。つまり、自分の思い込みが何かすぐに把握できるので、同じ失敗を二度としないのです。
失敗を繰り返しているなら、それはもはや失敗ではない。決断が間違っている。
ーパウロ・コエーリョ
今回は普通の人は何度もやるけれど、賢い人なら一度しかやらない10の失敗をお教えしましょう。
1. 人が良すぎて騙される
発言を思わず信じてしまうような、とてもカリスマ性や自信のある人がいます。自分のビジネスがいかに成功したか、いかに人から好かれているか、どんな人と知り合いか、どれくらいチャンスを与えられるか、などをとめどなく語ります。
本当に成功している人も、心からあなたを助けたいと思っている人もいますが、賢い人は一度騙されたら、そのような耳障りのいいことを言われても、よく考えるようになります。ばか正直だったり、適切な考慮ができなかったりすると、悲惨なことになります。賢い人は、自分も含めてどんな人も見た目ではわからないと知っているので、深く関わる前に真剣に自問自答します。
2. 同じことをやって、違う結果を期待する
アインシュタインは、同じことをやって違う結果を期待するのは異常だ、と言っています。しかし、2+2はいつか5になると思っているのと同じようなことをする人は多いです。賢い人は、このようなストレスを経験するのは一度で十分です。事実はシンプルです。同じやり方を続けていたら、どんなに違う結果を望んでいても、同じ結果が得られるだけです。賢い人は、違う結果を求めているなら、やり方を変えなければならないとわかっています。たとえ、やり方を変えるのが苦痛だとしても。
3. すぐに成功や満足を得ようとする
本はスマホやデジタルガジェットで簡単に読め、ニュースは瞬く間に世界中を駆け回り、どんなものでも1日もあれば家に届く、そんな便利な世の中に私たちは生きています。賢い人は、本当の満足はそんなにすぐに得られないこと、本当の恩恵はコツコツとした積み重ねの上にあることを知っています。
また、賢い人は、失敗をすると自分の未熟さを痛感して、落ち込んだりつらくなったりすると知っているので、本当の成功につながる、長く苦しい道のりを着実に歩み続けるためのモチベーションとして、失敗を利用します。
4. 予算を考えずに進める
予算の制約の元で活動するまでは、経済的な自由は経験することができません。プライベートでも仕事でも、予算に縛られると、自分のやりたいことや必要なものについて、深く考えて選択をしなければならなくなります。賢い人は、払いきれないほどの請求書の山に一度でも直面したら、自分のお金がどこに消えていくのかということを考えられるようになります。
一度、自分が何にどれくらいお金を使っているのかということを理解したら、正しい選択はおのずと明らかになります。毎朝飲んでいるカフェラテに年間で10万円も使っていると気付いたら、そこまで飲みたいと思わなくなります。予算を決めるのは、経費を確実に払うためだけではありません。賢い人は、予算を決めてそれを守っていても、チャンスを逃すというわけではないとわかっています。貴重な予算(お金)を自分がきちんと判断したものに使っているからです。予算が自制心を育て、自制心は質の高い仕事の基礎になります。
5. 大局的に見ない
大局的な視点を持たず、目の前にあることをやみくもにこなして忙しくするのは簡単です。しかし、賢い人は、慎重に計算した目標に向かって日々の優先順位を決めることで、そのような無為な行動を食い止められるとわかっています。小さな仕事をおろそかにするということではなく、必要に応じて調整するための視点や自制心を持っているということです。人生は大局的なものです。その視点がなければ、すべてが無駄になります。
6. やるべきことをやらない
友だちの生物学の宿題を写したり、大事な会議に準備もせずにさり気なく参加したり、誰もがある程度は手を抜いた経験があるでしょう。賢い人は、そのようなやり方で、時々は幸運を手にすることができるかもしれないけれど、自分の可能性を最大限発揮することができなくなるわかっています。一か八かではダメで、地道な努力や適切な判断に代わるものはないと理解しているのです。やるべきことをやらなければ、何も学ぶことはできません。それでは自分のキャリアも人生も間違いなく行き詰まります。
7. 本当の自分ではないものになろうとする
他人が期待するような自分になろうとする気持ちはわかりますが、偽りが好きな人はいません。本当の自分とは違う自分になろうとしても、何も良いことはありません。賢い人は、まやかしだと言われたり、自分ではない言葉を話したり、自分の個性を見失ったりしたら、気がつきます。そうでない人は、そんなことは誰にも見抜けないと思っています。自分以外のものになろうとしたせいで、人間関係が壊れたり、仕事やチャンスを失ったりすることに気付かないのです。賢い人は、信頼がなければ幸せも成功もないとわかっています。
8. すべての人を喜ばせようとする
生きていれば、誰もがどこかでこの失敗をしたことがあるでしょう。しかし賢い人は、すべての人を喜ばせることは不可能で、すべての人を喜ばせようとする人は、誰のことも喜ばせられないということに気付きます。賢い人は、きちんと誰かのことを喜ばせるには、自分が正しいと思う選択をし、思い通りにする勇気を持たなければならないと知っています。(すべての人が喜ぶようなことでなくても)
9. 被害者面をする
ニュースやSNSのフィードには、被害者面をしてうまくやっているような人の話であふれています。賢い人も一度はそんなことをしそうになったかもしれませんが、すぐにそれは心情操作のようなものだと気付きます。誰かに被害者のフリをしているのだと気付かれたら、すぐに何の恩恵も得られなくなります。しかし、悲惨なのはそれだけではありません。本当に賢い人は、被害者のフリをすることは、自分の力を放棄することにほかならず、そのデメリットは計りしれないとわかっています。
10. 他人を変えようとする
自分を変えたいと心から思い、やる気を出したときしか人間は変わることができません。それでも、純粋な意思と情熱があれば、相手を改善できると考え、変わりたくないという人を変えようとする人がいます。一部の人は特に積極的です。賢い人も一度は失敗するかもしれませんが、すぐに他人は変えられないことに気付きます。賢い人は、足を引っ張りそうな、問題の多い人を避けるために、誠実で前向きな人や仕事に囲まれて生活するようにしています。
精神的に成熟している知的な人は、学習することをやめないので成功します。そのような賢い人は、自らの失敗から学び、成功からも学び、常にもっと良い人間になろうと変化しています。
10 Mistakes Smart People Never Make Twice|Inc.
Travis Bradberry (訳:的野裕子)