お待たせしました、こちら(石膏の)フライドチキンです。
ホビーだけでなく再生医療の分野でも注目が集まる3Dプリンタ。ひょんなことから、この素晴らしき次世代のサービスをこれでもかと使い放題できる機会を得たので、僕はケンタッキーフライドチキンの「オリジナルチキン」を3Dプリントしてみることにしました。たぶん日本初。もしかしたら世界初。「好きなものを出力していいよ」と言われて、とっさに思いついたのが好物のケンタッキーだったのです。
「本物は真似できない。」らしいから、真似してやろう
1939年にカーネル・サンダースが完成させた「オリジナルチキン」は世代を超えて愛される逸品。「本物は真似できない。」というキャッチコピーは、「フライドチキンといえばケンタッキー」という自負があるからこその言葉に感じます。その言葉に斜め上から挑むような気持ちで、最新テクノロジーで本物を真似してやろうというわけです。
それでは、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社を巻き込んだ、僕の趣味全開な実験の様子を紹介します。「オリジナルチキン」をきれいに食べるプロのコツなども教わりましたので、併せてどうぞ。
日本のカーネル・サンダースに「オリジナルチキン」について教わった
今回は現実にあるものを3Dデータ化することもあり、まずは元となる対象物をよく知らなくてはなりません。そこで、ケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)に伺い、「オリジナルチキン」について教わることにしました。
出迎えてくれたのは、カーネル・サンダースと揃いの白いスーツに黒いリボンタイが凛々しい、"ORマイスター"の笠原さんと羽鳥さん。"OR"とはカーネルがつくりあげた「オリジナル・レサピー・チキン」のこと。
手づくりだからこそ、知識と探究心が必要
ORマイスターは社員の中から選ばれ、カーネル・サンダースのこだわりやおもてなしを伝える伝道師的な役割を担って活動しています。KFCを創業した後、カーネル・サンダースが各店を回って指導したように、お二人も日々店舗へ向かい、生まれた歴史や正しい調理法を含めた「ケンタッキーの『オリジナルチキン』とは何たるか」をスタッフに伝授しています。お店で1つずつ手づくりするからこそ、知識を高めた上で向き合うと、「つくり手の探究心」が仕上がりにも表れてくるのだといいます。
部位別に「オリジナルチキン」を上手く食べるコツ
「オリジナルチキン」は手羽(ウイング=wing)、あばら(リブ=rib)、腰(サイ=thigh)、脚(ドラム=drum)、胸(キール=keel)の5種類のパーツに分かれます。
「小骨くらいなら私は食べちゃうんですけど」と笑いながら、お二人が腰(サイ)と手羽(ウイング)をうまく食べるコツを紹介してくれました。上記の動画の通り、ポイントは「先に骨を外すこと」。お店でウェットティッシュを必ずつけてくれるのは、両手を使って食べるのが本式だからなのですね。
これは「現実世界のコピー&ペースト」だ!
今回「フライドチキンを3Dプリンタで出力したいんですが」という奇特なお願いに応えてくださったのは、株式会社アイジェットさん。数多くの事例を持つアイジェットさんも「フライドチキンは初めて」とのことですが、「まぁ、大丈夫でしょう」と余裕の表情。職人魂を感じます。
KFCの社員さん立ち会いのもと、スキャンすべき「オリジナルチキン」を吟味。皮がやぶれないように慎重に机へ移したら、両手で持つタイプの3Dスキャナを使い、チキンの輪郭をなぞるようにスキャン。
データはリアルタイムにPCへ送られ、3Dモデルが画面上にもりもりと浮かび上がっていきます。その様子はまるで「現実世界のコピー&ペースト」を目の当たりにしているようで、KFC社員さんも僕も「おおお...」と、どよめきました。3Dプリンタに注目が集まりがちですが、3Dスキャナも高精度で低価格な家庭機用が出てくると、ものづくりの現場がまたガラリと変わりそうな予感がします。
その後、修正や補正を経て3Dデータが完成。今回はカラー石膏での出力なので、色味の再現性も楽しみです。アイジェットさんは「3Dプリンタの特性上、色味は白っぽく仕上がるのですが、そこをいかに本物に近づけるかが腕の見せどころ。最後は手作業で丁寧に仕上げますよ」とのこと。3Dプリンタも「誰が作るか」で仕上がりが変わるあたり、料理と同じですね。
届いた小包を開けて、僕はまず紙ナプキンを探した
アイジェットさんから3Dプリントされた「オリジナルチキン」が届いた時、僕は一瞬、手に取るのをためらいました。油がついてしまうのではと感じたからです。色やツヤなどかなりの再現度。ケンタッキーの箱を開けた瞬間の、あの「気分が上がる」香りや雰囲気が、鼻の奥にふわっと蘇ってきます。
手にしてみると、素材が石膏なので、見た目以上に重さを感じます。目を近づけると3Dプリンタで出力した証ともいえる積層は見えますが、遠目からではわかりません。「石膏だと折れやすくなる」といった特性で仕方のないことですが、「オリジナルチキン」の衣の感じは、3Dプリンタには向いていなかったようです。
とはいえ、手作業で仕上げたとおぼしき脂のテカり具合といい、周りの人や友達に見せてみると、みんな揃って「本物かと思った!」と、そのクオリティに驚きの声がゾクゾクと。
そして後日、アイジェットさんが「同じデータで作ってみたんですよ」と手渡してくれたのが、チキンのピアス! 3Dプリンタは元になるデータさえあれば、縮尺を変えたり、素材を変えたりして出力できるのも大きなメリット。大量に必要であれば金型を作って生産した方がコストもかからないそうですが、今回のようにニッチすぎる立体物を作るのに3Dプリンタは最適なのです。
ピアスはKFCさんにプレゼントしようと思います。こんな風に販促物や会員限定のグッズなど、小規模/小ロットで必要な立体物が作れるという点で、今後は3Dプリンタが一般企業でも活用されていくのだろうと感じます。
それにしても、見れば見るほど食べたくなってきた
このところ、僕は冬太りを解消するために、流行りの糖質オフダイエットに取り組み、ヘルシーな食事を心がけていました。でも、机の上に置いた「オリジナルチキン」をじっと見ていると、どうにも食べたくなってきて...そこで真面目に栄養成分表とにらめっこしてみると、意外にカロリーや糖質が少なかったのです。2つも食べればかなりの満足感がありますし、これならよかろうと早速お店へ。
ORマイスター直伝のうまく食べるコツを使いながら、「オリジナルチキン」を頬張る。秘伝の11ハーブ&スパイスにしか出せない味に、口からはつい「あぁ、これこれ」なんて言葉が。見た目をコピーした3Dプリントもすごかったけど、うん、実物を食べるのがいちばん。やっぱり「本物は真似できない」味なのでした。
ちなみに、「オリジナルチキン」に納豆(!)やスイートチリソースをちょっと足すと、また面白い味わいになるのだとか。個人的には、ビスケットについてくるハニーメープルシロップをかけるのもオススメです。いまなら、下記リンクよりクイズに挑戦すると、全問正解者から抽選で10名に「オリジナルチキン」1カ月分が当たるとのこと。1カ月分あれば、気楽にいろんな食べ方で楽しめそうですね。僕も机の上にある3Dプリントの「オリジナルチキン」に向かって、当たるようにと祈っているところです。
【「オリジナルチキン」 1ヶ月分プレゼント】KFCマイスタークイズ|365sogood
(長谷川賢人)