"起業"というと、どうしても大がかりで自分事でないように感じられます。しかし、"副業"であれば、比較的イメージしやすいのでは。本稿に書かれているのは、ある起業家が語る「副業しながら起業する」メリット。米メディア「GeekWire」の記事を翻訳して紹介します。

空いた時間に起業する人の呼び名が、すでにあるのかどうか分かりませんが、これからフルタイムの仕事を持ちつつ、副業を始める人のことを「副業起業家」と呼びたいと思います。そういう人がいるということを、そろそろ認識していい頃だと思います。(Photo by andyp uk via flickr.)

"複数副業起業家"という生き方

私は自分のことを「複数副業起業家」だと思っています。私は、「UP Global」の地域マネジャーとしてフルタイムの仕事をするかたわら、「Red Ride」という会社を共同創立者として起業し、同じく「Started.in」という会社の共同創立者でもあります。週に平均70〜80%は仕事をしており、さらに最近結婚もしました。

すべてのバランスを取るのは恐ろしく大変で、不可能な時もありますが、副業をするというのは、自分がこれまでしてきた中でもかなり賢い決断だと思っています。また、副業をすることで、今働いている会社の価値もさらに上がっています。

なぜこのような経験が実りあるものになったのか、私の考える4つの大きな理由を上げてみたいと思います。

副業をする4つのメリット

1.実践の中からひらめきが生まれる

「Startup Weekend」のような起業イベントに行ったとして、そこで学ぶべき大事なことは、目的はコネクション作りでも、週末に何百万もの価値を生み出す会社を作ることでもありません。一番大事なのは、経験から学ぶことや、実践することから得たアイデアです。

デザイナーも開発者もいなかったら、一体何ができるでしょうか? 「イラストレーター」の無料のお試し版をダウンロードして夜通し使い方を勉強すれば、朝には何かしらできるようになっているでしょう。

日中の仕事の間は、このような畑の違うことに首を突っ込むことはできないでしょうし、何か新しいことにチャレンジする機会も少ないでしょう。ですから、仕事をしていない時間は、そのような勉強や練習をするだけです。

2.自分の限界を知ることができる

前述の通り、私はUP Globalで地域マネージャーとしてフルタイムで働いています。また、Red RideとStarted.inの共同創立者でもあります。それに加えて、私は結婚したばかりで、数週間と空けずに顔を合わせたり話をした方がいい、新しい家族や友だちのコミュニティもあります。つまり、"二兎"以上のものを追っているような状態かもしれません。

しかし、今私は自分の限界を身をもって学んでいて、そのことは私にとってかけがえのないものです。どのくらい遠くまでなら喜んで行くことができるのか? 真に理想的な起業家になるための資質が自分にはあるのか? 自分の限界は、共同創立者や投資家にだけでなく、自分自身に対しても証明することができなければ、本当には分かりません。自分の限界を知りたければ、多少キツい時もあるかもしれませんが、一度は自分を追い込んでみましょう。そうすればすぐに限界が分かります。

3.自主性が確立できる

UP Globalでの環境は、国際組織の一員たるべく、各人の自主性が重んじられている幸せな状況です。私たちは、高い成長を遂げている段階で、階層のない組織を維持しようとし、素晴らしい仕事をしています。しかし、指令系統があるのは避けられないことですし、大きな決断がされるまでには多くのプロセスが必要なこともあります。

個人的に、私はこれがあるべき姿だと思っています。いつの日か自分の会社をこのように運営できればと思っていますが、世界を変えたいと思っている起業家であれば、大きな決断の機会を逃すかもしれません。

今自分の会社がするべき最も大事なことは何か? 自分たちの会社のミッションステートメントは何か? 会社としての方向性を変える必要があるか? このような問いに答えるのが、大きな決断であり、大変な決断でもあります。何かを作ろうとする時というのは、すべての決断があなたに委ねられます。決断をする時は、それがいかに気分がよく、かつやりがいのあることか分かり、驚くことでしょう。

4.クリエイティブになれる

本業のかたわら副業もしようという人は、仕事が好きなはずです。できるだけ自分のやりたい役割の中で、自由と自主性を持ちたいと思っているでしょう。しかし、来る日も来る日も、仕事が同じ事の繰り返しであれば、クリエイティブな感覚が鈍くなってしまいます。これは会社にとっても、会社の社風としても大打撃です。何か起業的な要素のある、変わった刺激があるだけでいいのです。副業というのは、このような状況を救う完ぺきな手段にもなります。

夜は1〜2時間、日中の仕事から離れて、まったく関係のないことや新しい可能性について考えてみましょう。これは、あなた個人にとっても有益なことですし、会社にとっても非常に大事なことです。毎日机に向かっていても、新鮮な視点で考えられるようになり、クリエイティブな思考や能力を伸ばすことができます。そのようなことができない会社であれば、離れることも考えた方がいいかもしれません。

なにも大きなプロジェクトでなくともいい

私の経験からの教訓としては、会社以外に自分で何かを始めよう!ということです。目標は、何百万ものビジネスを企てることでなくても、何百万も売り上げを稼ぐことでなくても、フルタイムで働くことでもないはずです。

もちろん、そのような目標が悪い訳ではありませんが、日中の仕事も幸せにやりたくて、起業家的な世界にも足を突っ込んでみたいと思っている場合は、副業起業家という人生もあるということです。後悔はしないと思いますよ。

The side-project entrepreneur: 4 reasons to try a startup without quitting your day job|GeekWire

Chet Kittleson(訳:的野裕子)

Photo by Thinkstock/Getty Images.