ノート取りやメモ取りは学校でするものと思われがちですが、実はほとんどの人がその後の人生でも続けています。やり方が少しごちゃごちゃしてきたと感じているなら、今こそ基本に戻ってメモ取りとは何か「再確認」してみましょう。
メモ取りの目的はシンプル。情報を覚えやすくすることです。ちまたにはさまざまなメモ取りの手法があふれていますから、各々のプロジェクトに適した手法を見つけると良いでしょう。どこから始めたらいいのか迷っている人や、単純にメモ取りのテクニックを見直したい人は、基本に立ち返って自分に合ったシステムを探してみると良いかもしれません。
シンプルに徹して内容の濃いメモを取る
メモ取りのキーポイントは整理です。きちんとすればするほど、その情報を覚えられる可能性が高くなります。メモは短くしましょう。ただし、見直したときに記憶をよみがえらせるきっかけとなるように、充分なキーワードを含める必要があります。
- キーワードを含めたきわめて短い文章に徹する
- 教師や同僚の言葉をそのまま書くのではなく、自分の言葉でメモを取る。ただし、記憶に役立つ良いフレーズを耳にしたときや、直接引用文を書きとめるときは例外
- 自分のニーズや話している人に合うようにメモ取りの方法を調整する
つまり、重要なことだけを書きとめるようにしなければいけません。できるだけシンプルに徹しながら、思い出すのに必要な量の情報だけを書きとめるのはなかなか難しいことです。
また、情報をすばやく整理するための「記号システム」をつくるのも良いでしょう。例えば、重要な業務にアスタリスクをつけたり、あとで調べたい項目にクエスチョンマークをつけたりします。メモをざっと見返したときに、注意を払う必要のある部分を見つけやすくすることが狙いです。
実際にメモを取ったあとは、探している情報を見つけるためのシステムが必要です。ライターのTim Ferriss氏は、目的のものを簡単に見つけられるように、「インデックスシステム」をつくることを勧めています。例えば、ページに番号をふったり、メモ帳の1ページ目にインデックスを書いたりすれば、目的のメモが見つけやすくなります。
Ferriss氏は紙のメモを念頭に置いていますが、「Evernote」などでも、タグを使ってこの方法を活用することができます。シンプルさを求めるなら、テキスト形式の「Simplenote」も良いでしょう。このサービスもタグをサポートしています。メモを取るときに、クラス、ミーティング、プロジェクトなどの関連情報で必ずタグをつけるようにすれば、情報の検索が簡単になります。
自分に合ったメモ取りスタイルを見つける
メモ取りの手法にはたくさんの選択肢がありますが、あらゆる人に適した万能の方法はありません。状況や人の性格によって、うまくいく手法は違ってきます。いくつかの方法を試してみると良いでしょう。
学術誌『WAC Journal』に掲載されたある研究概要では、階層構造のメモ、つまりアウトラインのようなものが学生にとってもっとも効果があると指摘されています。
階層構造のメモは基本的には単なるアウトラインなので、市販されているほとんどのライティングソフトウェアを使ってメモを整理することができます。このスタイルならメモを読みやすい状態に保つことができますが、話があちこちに飛びまわる現実の世界では必ずしも役に立つわけではありません。
そこで役に立つのが、「マインドマッピング」や「コーネル方式」、「SmartWisdom」などの、直線的ではないメモ手法です。人によっては、このタイプのメモのほうが効果的です。
コーネル方式はグリッドを使う手法で講義などのメモに適していています。マインドマッピングは、ブレインストーミングで用いられることが多い手法ですが、ミーティングの際のメモ取りにも最適です。時間はかかりますが、複数の手法を試してみて自分に一番合ったものを探してみると良いでしょう。
直線的ではないメモ手法の多くは、紙でもデジタルでも効果があります。コーネル方式などの手法については、コンピュータ上で使えるテンプレートを手に入れると良いでしょうマインドマッピングについては、ソフトウェアの選択肢が山ほどあります。
時代遅れのテクニックで時間を無駄にしない
メモを繰り返し読んだり、蛍光ペンをつけたり、下線をつけたり、内容をまとめたりする手法は、情報を思い出すのに役立つとして以前から推奨されてきました。ですが、科学的心理学会の報告書で示されているように、そうした手法のほとんどは時間を費やす価値のあるものではありません。それどころか、「Time」の記事にもあるように、たいていは非効率的な手法です。
報告書の著者が非効率的な学習方法として真っ先に挙げているのが、蛍光と下線です。これらは単純に文章を読む以上の効果はないことが、研究により明らかになっています。
蛍光ペンによるマークが学習の妨げになると指摘している研究さえあります。というのも、個々の事実だけに注意を引かれてしまい、内容を結び付けたり推論を導き出したりするプロセスが妨げられる可能性があるためです。
同じくらい良くないのが、メモの読み返しです。これも一般的な手法ですが、ほかにもっと効率的なテクニックがあります。また、内容をまとめたり、文章に含まれる重要なポイントを書きとめたりする方法は、そのスキルがある人にとっては効果的ですが、こちらについても、もっと効果的な学習方法があります。報告書では、蛍光、下線、読み返し、内容のまとめは、いずれも「有用性が低い」と評価されています。
もっと効果的な方法の例として挙げられるのが、休憩を挟んで学習時間を長くする分散学習や、テストの実施です。若いころに覚えた音読やハイライトといった技は省略してもいいかもしれません。メモを整理しておきさえすれば、必要なときに必要な情報をすばやく見つけられるはずです。
Thorin Klosowski(原文/訳:梅田智世/ガリレオ)