「紳士」と聞くと真っ先に、帽子をかぶって、オックスフォード調のネクタイとスーツ、それと杖...なんとなく「イギリス」「外国」というイメージが先行する方も多いかもしれません。しかし、いつもナイフとフォークで丁寧に食事をとっていなくとも、あらゆる場面であなたの「紳士力」は試されています。
日本人も「紳士道」から学べることはたくさんある
親しい相手でも、仕事関係の人でも、見知らぬ他人でも、さらっと紳士的振る舞いをする人と出会うと、そのさりげなさの中で女性を大切にする姿勢に感動します。重い荷物を代わって持ってくれる、女性が先に入れるように扉を持つなどという身振りは、素直に嬉しく、見ていても気持ちのいいものです。
紳士なんてカッコつけている感じがしてどうも照れくさい、外国じゃあるまいし、と思うこともあるかもしれませんが、ビジネスでもプライベートでも、日本人男性が「紳士道」から学べることはあります。人の印象は、細かい仕草や行動の瞬間で決まっていきます。紳士的な振る舞いは、男性としての品格も上げてくれる大切なものなのです。
そもそも紳士とは?
本当の「紳士」とは何かを考え始め、先日イギリス人の俳優兼脚本家の方とお会いした際に聞いてみました。彼は英国生まれで50代半ば。ずっと紳士の『本場』で育ってきました。奥様にコートを着せてあげるのも当たり前です。ところが、「イギリスでは最近、女性が紳士的振る舞いをされることを差別的だと考え、扉を開けてもらうことを拒否し、自分で開ける人がいる」ようで、彼は最近戸惑いを覚えることもあるのだとか。
つまり、「男性が扉を開ける=女性が一人では扉を開けられない」ことを、女性は男性より下であると考え、怒る女性もいるのです。なるほど、必ずしも「紳士であること=女性を特別扱いする」ではないのかもしれません。例えば、会議で「女性の意見を取り入れた方がいい」などの発言は、女性を褒めているようで、そうではありません。男性が基準にある発言は、女性を性別のくくりとして見ているだけで、結局は女性一人ひとりの個性を見ていないということになります。
では、紳士ってなんでしょうか? シンプルに考えれば、ビジネスでもデートでも、年配と接する時でも、男性しかできないこと、そして男性がするからかっこいいことが、紳士らしさといえそうです。さらに、女性では大変だと思うことを男性ができるのならする、そして人を不快にさせる失礼な態度を避ける、というものだと思います。
紳士力を発揮するための手っ取り早い方法は、まず振る舞いから。そこで、海外メディアの記事などから、ビジネスと日常の中で真の紳士たちがしていることをまとめてみました。
「ビジネスシーン」での真の紳士とは
- 人からの批判はオープンマインドで受け入れます。上司が言うことに耳を傾けて行動を変えることで、自分自身が向上できます。
- 打ち合わせや会議には必ず時間通りに着きます。可能なら少し早めに到着します。
- 敬意と信頼の証として、人の名前は覚えます。お会いしたばかりの方のお名前は、会話の中で呼ぶことで、「相手のお名前を覚えた」というポジティブな印象を与えられます。
- 名刺を渡すときはフルネームで自己紹介をし、差し出された名刺の下から、お渡しします。
- 「名刺を切らしておりまして」ということがないように、常に名刺は常備。渡す名刺が十分あればチャンスが増え、渡す名刺がないとチャンスは寄り付きません。手作り名刺なら、安っぽい印象にならないようにしっかりした紙質・切り取り線のないものの方が、印象はアップします。
- 相手が誰でも、常に礼儀正しく。レベルの低い人と会話をしても、自分を相手のレベルに下げる必要はありません。
- 書いたメールを丁寧に校閲し、打ち間違いがないようにします。また、文体の相手への伝わり方を考慮し、言葉のトーンに細心の注意を払います。
- 話している相手の言葉を遮りません。意見を言うなら、相手が話し終わってからにします。
- 今の仕事のための服を着るのではなく、将来欲しい仕事のための服を着ます。
- 丁寧な言葉遣いを。下品な言葉は使いません。
- 過剰な「~させていただきます」に気を付けます。代わりに「~致します」を使います。
- 自分の仕事を楽にしてくれる人を探します。一人で全部やるのは無理なので、助けを求めることで成功に一歩つながります。そして、力を貸してくれた時は必ず感謝の気持ちを示します。
- お礼が上手です。上司にご馳走になる時は、支払いの際に「ご馳走になります」、お店を出たら「ご馳走さまでした」とお礼を言います。翌日も「昨日は(先日は)ご馳走様でした」とお礼を。
「日常的なシーン」での真の紳士とは
- 背筋を伸ばしていて、立ち姿がキリッとしています。ジェームス・ボンドを想像してみましょう。
- 女性が後ろにいる時は、先にドアを自然に開け、まず女性を通します。シンプルかつ力強い、敬意の現れです(とはいえ、相手によってこのポイントは使い分けを)。
- 良い投資が何かを知っています。良いスーツと良い靴を1年に1回だけ買えば、すぐに優れたコレクションができます。
- 女性と一緒にいる時、ばったり知人に遭遇したら、相手に紹介をします。名前を伝え、彼女の存在を無視しないよう、会話にきちんと含むように体の向きを変えます。
- デート中は携帯電話を切り、かかってきた電話には後で対応します。デートをしている時間中は、その女性が世界一大事な人であると感じさせます。電話に出ると、女性はその間、不快な気持ちで待たされます。
- 黒のレースアップ靴を一足は持っています。
- 白い靴下と黒い靴を絶対一緒に履きません。
- 携帯メールを打ちながら下を向いて歩きません。歩くときは前をしゃんと向いて歩きます。
- 女性と一緒に食事する際は、女性が先に一口食べるまで、待ちます。
- 女性と歩くときは、道路に近い側を歩きます。
- 電車の中では疲れていても寝たふりをせず、お年寄りや女性に席を自然に譲ります。女性といるときなら、先に座らせます。
- 会釈のジェスチャーだけに頼らず、「ありがとうございます」「すみません」を声に出して言います。
- 上記のことを照れずにさりげなくできます。
電車やエスカレーターで、降りる時に立っている人を無言で押していく人がいますが、一言「すみません」「失礼」「ちょっと通ります」とつけるだけで、その場の気持ちよさが変わります。ぶつかったら謝る、何かしてもらったらお礼を言う。礼儀正しいことで有名な日本人なのに、公共の場での品格が失われつつあるようにも思えます。
まずはあなたがひとつずつ、紳士の振る舞いを身につけてみては。かっこつけずにかっこよく、粋に、実践してみましょう!
Gentleman School 2 | Virtual Lifestyle
Houston Chronicle\ 21 Ways to be Gentleman | Houston Chronicle
Top 10: Gentlemanly Gestures | AskMen
(山縣美礼)
Photo by Thinkstock/Getty Images.