21年前、心理学者のNeil Fiore氏が『The Now Habit』という本を出版しました。ずるずるとタスクを先延ばしにせず、フリーの時間を、罪悪感を持たずに楽しもう、という主旨の本です。
ライフハッカーでは、これまで生産性や、to-doリストの処理について、様々なアイディアを提供してきました。なかなか自分に合った方法が見つけられない、または、別の方法も試してみたい、という方は、Fiore氏の方法を一つの選択肢として、試してみてはいかがでしょうか?
■なぜ私たちは先延ばししてしまうのか?
先延ばししないためにはどうしたらいいか? と尋ねたら、おそらく多くの人が「もっと働けばいい」と答えるでしょう。先延ばしせざるをえないのは、その人が十分に働いていないからだとか、要領が悪いからだ、と考えているからですよね。
「The Now Habit」は、先延ばしをしないための方法が書かれた自己啓発本としては、当時革命的なものでした。心理学者が著者であるため、やる気が出なくて先延ばししてしまうのには、心理的な理由があるというアプローチで書かれています。
Fiore氏は、先延ばしを、鍛え直したら治るような「なまけ病」とは捉えていません。違った視点から先延ばしを定義し、それを段階的に治していく方法をとっています。「先延ばしとは、タスクや決断に関する不安に対処するためのメカニズム」であるとのこと。
本の前半部分では、先延ばしの定義、要因、私たちの何が先延ばしをさせるのか、ということについて書かれています。ここでの要旨を3つにまとめると、先延ばしとは、
- 上司など権力のある人からの圧力に、間接的に抵抗するための方法。
- 期待された結果を出せなかったときの言い訳にして、失敗への恐れを緩和する方法。
- わざと本気を出さないで、うまくいき過ぎないようにするための防御策。
先延ばしの癖を直すためには、まず自分に正直になり、なぜその行動を起こしてしまうのか? をよく考えてみてください。これは変化するためのプロセスの一つです。それから、実際に新しい習慣を身につけるためには、しっかりとした足場と、確かなツールが必要になってきます。Fiore氏は、そこからの手順をいくつかに分けて説明しています。
- 観察:自分がどのような時間の使い方をしているかを知る
予算を組んだり、ダイエットしたりするのと一緒で、自分がどんな風に時間を使っているかは、まず自分の一日を観察してみることです。ある一日をスケジュールに残しましょう。紙でもデジタルでもかまいません。大切なことは、記録することです。- 話し方を変える:「先延ばし屋」から「プロデューサー」トークへ
言葉の力は偉大です。Fiore氏は、「先延ばし屋」はマイナス思考である傾向にあるとしています。知らず知らずのうちに、ネガティブトークをしていませんか? 仕事があり、家庭があり、「リラックスする時間なんてない!」と言ったりしていませんか? こういう先延ばしトークは、あなたを「だからもっと働かなければ!」という方向にひっぱっていってしまいます。一方「リラックスする時間を持たねば!」とプロデューサートークをすれば、おのずと時間を作るという行動が導かれますよね。やらなければいけない仕事はなくなりませんが、話し方を変え、どこにフォーカスするかを変えれば、自分の時間が仕事に蝕まれてしまうのを防げます。
先延ばし屋でない人は、先延ばしなんて怠け者で、おおざっぱな人がする態度だと思っていますが、実際はそうでもありません。
先延ばししてしまう人は、いろいろなことを気にしすぎる傾向があります。自分は満足な仕事ができていないと思ったり(だから先延ばしして、時間がないからうまくできなかったという言い訳にする)、これがうまくいか
なかったら万事休すと思ったり(クビになるかもしれない、みんなが自分のことをダメな人間だと思うかもしれない)してしまうわけです。
Fiore氏はここで問いかけます。「考えうる最悪の事態は何?」、「そうなったらあなたはどうする?」、「どうやってその難局を乗り切る?」あれこれ心配するから、その心配事に圧倒されてしまって先延ばししてしまうのです。
たくさんの心配事はあってもいいので、友人の相談に乗っているような要領で、それらを分割して一つ一つ吟味してみましょう。友人にだったら、そんなの取り越し苦労だ、心配はいらないよ、きっと大丈夫さ、と言いますよね。それを自分に対してするのです。ただし、上に挙げた質問に対しては、現実的に答えてください。
■スケジュールを見直す表面的に見ると、先延ばしは、ちょっとしたお楽しみの時間を生むように感じられます。目の前のタスクを片付けないでしていることといえば、ゲームやネットサーフィンなどですからね...。でも、あとから感じるのは罪悪感ではないでしょうか?仕事を後回しにして遊んでしまった、と。もしかしたら、ゲームをしている時間も頭の片隅には仕事のことがあって、思いっきり楽しめなかったかもしれません。いろんな意味で、自分に嘘をついていることになるのです。
Fiore氏が提案しているのは、予定を入れるのではなく、予定を外すことです。そんな恐ろしいことを...と思いますよね。しかし、これでタスクの見直しができるのです。
やりたいと思っている仕事でスケジュールを埋めていくのではなく、既に決まっているものと遊びから書き込んでいくのです。一日のうちで、少なくとも一時間のリラックス&遊びタイムと、一週間のうちで少なくとも一日の休みは必要ですよね。前から決まっているタスクや、睡眠、通勤、食事、エクササイズにかける時間などを、先に設定してください。これで、ずいぶん空きができることと思います。
なぜこのようなことをするのでしょうか? Fiore氏は、先延ばし屋さんたちは、時間の測り方が上手ではないことを指摘しています。
一日は24時間ですが、24時間働けるわけではないのです。一日の中には、家族と過ごしたり、犬の散歩をしたりと、「生きる」時間が必要なのです。あなたのスケジュールの中には、そんな「生きている」時間が入っているべきなのです。これを認識することによって、より現実的な仕事のゴールが見えて、それに向かって進んでいけます。
では、実際のタスクはどのようにスケジュールするのでしょうか? 答えは、そのタスクに関して、30分間しっかり取り組んでから書き込む、です。つまり、月曜日の9時から11時までをタスクA、と書き込んでおくわけではありません。月曜日オフィスに来て、しばらくタスクAに取り組んでから、書き込みます。業者さんが請求書を出すような要領というば、わかりやすいのではないでしょうか。実際にちゃんと働いた分しか請求できないですよね?そうすれば、あなたのスケジュール帳は、先が見えないタスクで埋まっている場所ではなく、あなたの輝かしい達成の記録になります。これを一週間ほど続ければ、あなたが達成できる現実的な仕事量が見えてくることでしょう。
Fiore氏はまた、タスクを分割して、集中してとりかかる時間は短く設定することを、お勧めしています。「今日帰るまでにこれを終わらせる」ではなく「休憩時間まであと30分ある。この30分間で自分は何ができるのだろうか?」と考えるわけです。
「生きる」ことを最優先し、残りの時間でよく学び(働き)、よく遊べ、ということのようですね。
Jason Fitzpatrick(原文/訳:山内純子)