英語の翻訳はたくさんあるのに、ネットで見られる古典の現代語訳って、教科書や参考書の訳文がほとんどだったりするわけで。そんななか、たいへん読みやすくわかりやすい徒然草の現代語訳を公開してくれているのが、こちらの「徒然草(吉田兼好著・吾妻利秋訳)」。
読みやすさのほどを確かめるため、誰しも教科書で読んだことがある「第五十二段」、仁和寺の法師のセリフをちょっと引用しますね。
原文:「年比思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」
訳:「前から思っていた事を、ついにやり遂げました。これまた、噂以上にハラショーなものでした。しかし、お参りしている方々が、みんな登山をなさっていたから、山の上でイベントでもあったのでしょうか? 行ってみたかったのですが、今回は参拝が目的だったので、余計な事はやめておこうと、山頂は見てこなかったのです」
仁和寺の法師に「ハラショー」と言わせてしまう見事なセンスに脱帽です。ほんやくコンニャクに近づきつつあるGoogle様の手の届かない領域であることは間違いないようです。
しかも、このサイトの魅力はこれだけではないのです。
携帯でも閲覧できるはてなダイアリーや、各段の目次、テキスト検索、そしておもしろいのが「おりにかなう助け」のタブ。こちらのリンクからは、「平安を必要とするとき」「心配事で不安にさいなまれるとき」など、そのときの心情に合わせた内容の段を直接読むこともできます。
また、徒然草の一節を定期につぶやいてくれる「つれづれぼっと」もありますので、ふと古き日本の言の葉に触れたいと思ったことのある人には、ぜひお勧めです。
さらに現在は『源氏物語』の現代語訳もスタートしているそうです。長編中の長編ですが、こちらも成就されることを願っております。
(常山剛)