秋篠宮皇嗣殿下のおことば
「全国学校・園庭ビオトープコンクール2021」発表大会
令和4年1月23日(日)(国立オリンピック記念青少年総合センター)
本日,「全国学校・園庭ビオトープコンクール2021」の発表大会に,皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。そして,このたび各賞を受賞される皆様に心よりお祝いを申し上げます。
さて,昨年10月に,「国際連合生物多様性条約第15回締約国会議」の第1部が開催されました。その時の声明の中に,遅くとも2030年までに,生物多様性の損失を止め,回復軌道に乗せることを確実にすることが掲げられております。今日,地球全体で,約100万種の動植物が絶滅の危機にあると言われております。そして,日本においても,生き物の多様性は,長期的に悪化傾向にあるとされています。持続可能な開発目標,いわゆるSDGsには,目指すべき世界像として,「人類が自然と調和し,野生動植物その他の種が保護される世界」が記されております。そのことを達成するためには,私たち一人ひとりが自然からの恩恵を理解するとともに,自分たちの身近にある自然に対して関心と愛着を持つことが必要になってまいりましょう。
その意味において,学校や園庭に作るビオトープは,そこに通う人たちにとって,自然の生態系や生き物の多様性を考える大切な機会を提供してくれることと思います。このたびのコンクールにおける受賞事例では,教材として活用し,あるいは地域の様々な人々と連携するなど,興味深い取り組みが行われていると伺っております。このような意義深い取り組みが広く紹介されることは,持続可能な社会の実現に向けた人づくり・地域づくりに大きく貢献するものと考えます。
終わりに,本コンクールも今回で12回目を迎え,学校や園にビオトープがあることの大切さが広く認識されるようになってきたことと思います。このことは,本活動に携わってこられた多くの方々のご尽力によるものであり,ここに深く敬意を表します。そして,学校・園庭ビオトープの取り組みが,今後も日本各地で普及し,自然を慈しむ心の輪が広がっていくことを祈念し,私の挨拶といたします。
第24回オリンピック冬季競技大会(2022/北京)TEAM JAPAN結団式
令和4年1月29日(土)(グランドプリンスホテル新高輪)
本日,2月4日から中華人民共和国の北京市を中心に開催される第24回オリンピック冬季競技大会に参加されるTEAM JAPANの皆さまにご挨拶できますことを誠に嬉しく思います。
このたびのオリンピック競技大会においては,スキー・フリースタイルのビッグエア男女,ボブスレーの女子一人乗りの他,スキー・ジャンプ,フリースタイルのエアリアル,スノーボードクロス,スケート・ショートトラックのリレーにおいて4つの混合種目も新たに加わり,前回の平昌大会を上回る7競技109種目が実施されると伺っております。
この大会に向けては,COVID-19の影響により,練習環境も含めて大変困難を伴うことが多かったことと思います。そのような中,出場される方々には,厳しい選考を経て日本代表になられたことをお慶び申しあげます。
今回は,通常の冬季オリンピックとは大きく異なる環境で開催される大会となります。参加される皆さまには,感染症への対応に十分心を配られつつ,競技の場に臨んでは,日頃の成果を存分に発揮されることを期待しております。そして,スポーツを通じての国際親善に努めていただくことを願っております。
皆さまのご活躍をお祈りし,結団式に寄せる言葉といたします。
第18回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞
令和4年2月3日(木)
【表彰式典は中止となりましたが,主催者からの依頼により受賞者へのお祝いのメッセージをお寄せになりました。】
受賞者の皆様
第18回日本学術振興会賞を受賞された皆様,ならびにその中から日本学士院学術奨励賞を受賞された皆様に心からお祝いを申し上げます。
年明けから,一時収まっていたCOVID-19の感染者数が再び増加したことにより,本年も昨年に引き続き授賞式が開催されないことになりました。今年は受賞された方々とお目にかかり,それぞれの研究についてお話を伺うことができるのではないかと期待しておりましたので,皆様にお目にかかれないことを誠に残念に思います。
さて,昨年は,日本出身で,米国プリンストン大学で研究をされている眞鍋淑郎博士が,気候の物理的モデリング,気候変動の定量化,地球温暖化の確実な予測により,ノーベル物理学賞を共同受賞されるという,大変喜ばしいことがありました。
その眞鍋博士は,受賞者発表直後のインタビューで,今回の受賞につながった研究が,もとは好奇心からスタートしたこと,そして本当に面白い研究は好奇心から出た研究だという主旨のことを語っておられました。この言葉のとおり,学術研究は研究者の知的好奇心と自由な発想が出発点となり,地道に研究を継続することによって新たな知見が獲得され,さらにその先の多様な展開へとつながるものであると考えます。さらに,人類社会は,地球温暖化や様々な疾病を始めとする多くの困難な問題に直面しており,こうした問題の解決に,多様な学術領域の知見が必要不可欠なものであることは言を俟ちません。
その意味で,これまで我が国の学術研究を支えてこられた日本学術振興会と日本学士院が協力して,人文学,社会科学から自然科学にわたる幅広い分野で若手研究者を顕彰し,その研究意欲をより高め,研究の発展を支援しようとすることには大きな意義を感じます。
現下のCOVID-19のパンデミックは,あらゆる国や地域において,社会の状況を大きく変えてしまいました。しかし,そのような中におきましても,これまでに蓄積されてきた様々な学術分野の知見をもとに多くの対策が講じられてきました。また,世界中の研究者の努力により,この感染症と原因となっているSARS-CoV-2に関する研究が日々進展してきております。それらの成果により,この困難な状況を乗り越える日が訪れることを期待しております。
この度,受賞の栄に浴された皆様は,これまでに大変優れた業績をあげておられますが,この受賞を一つの契機として,今後さらに充実した研究を進められ,世界的に活躍されることを祈念し,お祝いの言葉といたします。
時節柄,くれぐれもご自愛ください。
2022年2月
秋篠宮 文仁
北京2022パラリンピック冬季競技大会日本代表選手団結団式
令和4年2月24日(木)
【本年2月24日に開催された結団式は,COVID-19の感染拡大防止のため,会場での参加者を限定した上でWebを主体とした形で開催されました。このようなことにより,主催者からビデオメッセージによるお言葉の提供依頼があり,メッセージをお寄せになりました。】
本日,「北京 2022 パラリンピック冬季競技大会」日本代表選手団の結団式が開催され,大会に参加される選手ならびに役員の皆さまに,WEB 上ではありますが,ご挨拶できますことを誠に嬉しく思います。
このたびのパラリンピック冬季競技大会においては,中華人民共和国の北京市を中心に,アルペンスキーやクロスカントリースキーをはじめとする6 競技78種目が実施されると伺っております。
この大会に向けては,COVID-19 の影響により,練習環境も含めて多くの困難を伴ったのではないかと思います。そのような中,出場される方々には,厳しい選考を経て日本代表になられたことをお慶び申しあげます。
今回は,通常の冬季パラリンピックとは大きく異なる環境で開催される大会となります。参加される皆さまには,感染症への対応に十分心を配られつつ,競技の場に臨んでは,日頃の練習の成果を存分に発揮されることを期待しております。そして,スポーツを通じての国際親善に努めていただくことを願っております。
皆さまのご活躍をお祈りし,結団式に寄せる言葉といたします。
第32回全国「みどりの愛護」のつどい
令和4年2月25日(金)
【昨年9月に開催予定であった式典は中止となりましたが,記念植樹式は関係者に限定するなどして開催されました。
記録誌を発行するにあたり,主催者からの依頼によりお言葉をお寄せになりました。】
第32回全国「みどりの愛護」のつどいにあたり,花と緑の愛護に顕著な功績のあった団体として,「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞された110団体ならびに神奈川県都市緑化功労者知事表彰を受賞された31団体の皆様に心からお祝いを申し上げます。
本年は,神奈川県の横須賀市において,全国からみどりの愛護団体がつどう式典が行われる予定でしたが,COVID-19の感染状況に鑑み中止になりました。そのようなことから,皆様にお目にかかり,お話をする機会を得ることができず,誠に残念です。この困難な状況が一日も早く収束し,皆様とお目にかかれる日が訪れることを切に願っております。
さて,緑は,地球温暖化や災害の防止,生物多様性の保全の場など,現在直面している地球規模の環境諸問題へ対処する上で,大切な役割を担っております。また,美しい景観の形成や日々の暮らしにゆとりと潤いをもたらしてくれる存在でもあります。そして,我が国は緑豊かな環境の中で,四季折々に姿を変える美しい自然の恵みを受け,それらを背景として数多くの文化を生み,育んでまいりました。
ここ神奈川県は,「三浦半島の丘陵の緑」や「丹沢・大山などの山地」,「相模湾から東京湾に至る変化に富む海岸線」など多様な自然景観や,「日本の開国から近代化を彩った歴史的な遺産」など地域資源に恵まれています。
また,そのような豊かな自然環境や地域資源とともに,「鎌倉彫」や「箱根寄木細工」など,人々の暮らしに根付いた伝統工芸が継承されてきました。
貴重な緑と,その緑を源とする清らかな水を守るとともに,新たな緑を創り出し,育てていくためには,多くの人々がその大切さを理解し,幅広く運動に参加していくことが重要でありましょう。その意味で,受賞された方々のみどりの愛護活動への取組は,大変意義深いものであり,皆様の努力に対し深く敬意を表します。
終わりに,多くの人々が緑を守り育てる心を持つとともに,緑豊かな環境づくりが一層発展していくことを祈念し,第32回全国「みどりの愛護」のつどいに寄せる言葉といたします。
社会福祉法人恩賜財団(※正しくは「恩賜」「財団」を二段組みとして,一文字分の大きさで示したもの。)済生会創立110周年記念式典
令和4年2月27日(日)(明治記念館)
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大日本山林会「第60回農林水産祭参加全国林業経営推奨行事賞状伝達贈呈式」
令和4年3月8日(火)(三会堂ビル)
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大日本農会「令和3年度農事功績者表彰事業」
令和4年3月16日(水)
【表彰式典は中止となりましたが,受章者へは総裁からメッセージをお送りになられました。】
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大日本水産会「令和2年度及び3年度水産功績者表彰式」
令和4年3月22日(火)(赤坂インターシティAIR)
3月16日夜,福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生いたしました。それにより,本日の表彰式への出席が叶わなくなった方がおられると伺っております。この地震で影響を受けられた方々にお見舞いを申し上げます。
本日,大日本水産会「令和2年度及び3年度水産功績者表彰式」が,2年ぶりに開催されますことを誠に喜ばしく思います。昨年度に受章をされた皆様,そして本日受章をされる皆様に,心からお祝いを申し上げます。
また,かねてより魚をはじめとする水族に親しんできた私にとり,全国各地で水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。
大日本水産会は,水産業の振興を図り,その経済的・文化的発展を推進することを目的として,1882年に創立されました。爾来,今年で140年という長い歴史を有し,水産業振興のために様々な事業を展開してこられました。中でも1890年に始まった「水産功績者表彰」は,貴会において,大変重要な事業として位置付けられ,本年で105回目,総受章者数は3,266名を数えます。そして,これまでの受章者を見ますと,歴史の一幕にその名を刻んだ人々の名前もあり,改めて貴会の歴史の重みを感じます。
四方を海に囲まれ,湖沼や湧水,清流に恵まれている我が国では,かねてより漁業や養殖業が盛んで,それに伴って,関連する加工業や流通業が発展してまいりました。水産業は,特に鮮度と安定的な供給が求められる産業であり,長年にわたり,これら各分野の振興に力を尽くしてこられた皆様には,さまざまなご苦労があったことと推察し,深く敬意を表します。
我が国では,古来より魚介類が身近で貴重なタンパク源として親しまれてまいりました。さらに昨今の健康志向もあり,魚介類に対する人びとの関心が高まるとともに,海外においても,食文化としての和食が普及し,その中心的な存在である魚介類が注目されております。
このように,水産業はこれからも様々な可能性が期待される重要な産業であります。いっぽう,近年の日本の水産業を取り巻く状況に目を向けますと,水産資源の減少や漁業の後継者不足,海洋環境の変化,赤潮や福徳岡ノ場で生じた軽石の被害,さらにはCOVID-19による水産物の需要停滞と価格低下など,様々な課題が山積しており,それらの解決のため,政府や水産業界,そしてそれぞれの現場における取り組みが,日々行われております。
このような状況のもと,受章者の皆様には,これを一つの契機とし,健康に留意されつつ,今後とも日本の水産業の維持と発展のために活躍されますことを期待いたしております。
終わりに,大日本水産会が今後ますます発展し,我が国の水産業の振興に一層貢献されることを祈念し,本式典に寄せる言葉といたします。
「第30回地球環境大賞」授賞式
令和4年4月28日(木)(明治記念館)
本日,第30回「地球環境大賞」の授賞式が3年ぶりに開催されるにあたり,皆様とともに出席できましたことを,大変うれしく思います。そして,このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。
皆様が行ってこられた取り組みは,植樹による都市部の生物多様性の保全,脱炭素に寄与する先進技術開発,持続可能な農林業,まちづくりのための新たな施策など,地球環境の保全や自然環境との共存に大きく寄与するものであります。ここに皆様の今までのご努力に対し,深く敬意を表します。
近年,地球温暖化の防止や生物多様性の保全,廃棄プラスチックによる海洋汚染など,様々な環境問題に対する人々の関心と意識は非常に高いものを感じるとともに,これらがグローバルな展開を見せております。そのいっぽうで,気候変動が大きな要因とみられる自然災害が世界各地で数多く発生しています。我が国でも,毎年のように豪雨による大きな被害が全国各地で生じております。地球環境に関わるこれらの問題を考えるとき,自然環境の保全とともに,防災や減災についての意識を高め,諸課題解決に向けた方途を探求していく必要性を強く感じます。
本年で30回目を迎えた地球環境大賞は,環境を守りながら発展する産業や,持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品や技術の開発など,環境保全の取り組みを顕彰し,社会に貢献することを目的として創設されました。爾来,産業界に始まり,自治体,学校,市民グループへと表彰の対象を広げ,環境保全と災害への対応に熱心に取り組む人々を広く顕彰することによって,地球環境の保全と人々の環境意識を高めることに貢献してきました。
国連の持続可能な開発目標,いわゆるSDGsが注目を集め,昨年の「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」においては,我が国をはじめ多くの国々が地球温暖化防止に向けたカーボンニュートラルに触れ,目標を宣言いたしました。COVID-19のパンデミックによるものをはじめ,現在,世界の社会経済情勢には厳しいものがあります。しかし,そのような中にあっても環境に関する諸問題の重要性は不変です。今後とも,日本の優れた環境関連技術や知識をもって世界に貢献していくことが求められましょう。その意味でも,国際社会のモデルとなるような優れた実績を積み重ねていくことは,誠に意義深く大切なことと考えます。
終わりに,受賞者をはじめとする皆様が,これまでにも増して温暖化の防止など,地球の環境保全や自然との共存に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに,その活動がより一層広がりを見せることを祈念し,本式典に寄せる言葉といたします。
第10回「日本医師会 赤ひげ大賞」表彰式
令和4年5月12日(木)(帝国ホテル東京)
第10回「日本医師会 赤ひげ大賞」の表彰式が開催され,皆様と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。そして,本日表彰を受けられる方々に,心からお祝いを申し上げます。
この赤ひげ大賞は,地域の人々に寄り添いながら,病気の治療を行うのみならず,健康の保持や増進など,日々の暮らしを守る活動を行う「かかりつけ医」に光を当て,地域医療の発展を願って設立されたと伺っております。
近年,高齢化が急速に進む中,各地の医療現場では,離島などの地理的条件が厳しい土地に医師の存在がなかったり,都市部ではあるものの病院が撤退したり,また,診療科が偏っていたりするケースが見られます。さらに,COVID-19の影響により,持病をもちながらも通院や検診を躊躇する人々も出てきております。
日本では,2020年初頭から始まったCOVID-19の感染拡大により,対面での人と人との交流に大きな制約を受けるなど,日々の生活に様々な制限を余儀なくされるようになりました。このような中にあって,全国各地の医療現場での感染症対策をはじめ,それぞれの地域において人々の健康を守るために力を尽くされている方々に,深く敬意を表します。
このたびの受賞者は,様々な課題に使命感を持って応え,各々の地域にとって無くてはならない存在として活躍されている方々と承知しております。皆様が,今回の受賞を一つの里程標として,今後も健康に留意されつつ,医療活動に尽力されることを願っております。
終わりに,「日本医師会 赤ひげ大賞」が,地域住民の診療や健康管理に日々携わっている医師の大きな励みとなり,地域医療の更なる発展につながることを祈念し,私の挨拶といたします。
日本植物園協会第57回大会
令和4年5月17日(火)(内藤記念くすり博物館)
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第33回全国「みどりの愛護」のつどい
令和4年5月21日(土)
【本年5月21日に開催された式典は、COVID-19の感染拡大防止のため、会場での参加者を限定した形で開催されました。このようなことから、主催者からの依頼により赤坂東邸からライブでおことばをお寄せになりました。】
本日、第33回全国「みどりの愛護」のつどいが、奈良県において、オンラインによる参加を含めて開催されますことを、大変喜ばしく思います。
花と緑の愛護に顕著な功績のあった団体として、「みどりの愛護」功労者国土交通大臣表彰を受賞された81団体ならびに奈良県都市緑化功労者知事表彰を受賞された31団体の皆様に心からお祝いを申し上げます。今回は、COVID-19の感染拡大予防のため、出席者を県内に限定していることから、皆様に直接お会いできないことを残念に思いますが、後ほど、代表者の方々とウェブ上で交流することを楽しみにしております。
さて、緑は、地球温暖化や災害の防止、生物多様性の保全の場になるなど、現在直面している地球規模の環境諸問題へ対処する上で、大切な役割を担っております。また、美しい景観の形成や日々の暮らしにゆとりと潤いをもたらしてくれる存在でもあります。それとともに、我が国は緑豊かな環境の中で、四季折々に姿を変える美しい自然の恵みを受け、それらを背景として数多くの文化を生み、育んでまいりました。
開催地の奈良県は、「倭は 国のまほろば たたなづく青垣 山籠れる 倭し麗し」と古事記に謳われた「大和青垣」の山々や緑豊かな丘陵に囲まれた「奈良盆地」、「吉野山」や「大台ヶ原・大峰山系」などからなる山岳地域など、豊かで変化に富んだ自然景観に恵まれています。
そのような豊かな自然環境の中で、飛鳥京、藤原京、平城京の都が置かれ、古からの人の営みが連綿と続いてきました。現在、世界遺産にも登録されている平城宮跡では、奈良時代を今に感じる公園整備が進められ、本年3月には大極門の復元が完成するなど、往時の歴史や文化に思いを馳せることができる場所になっております。
貴重な緑と、その緑を源とする清らかな水を守るとともに、新たな緑を創り出し、育んでいくためには、多くの人々がその大切さを理解し、幅広く運動に参加していくことが重要でありましょう。その意味で、受賞された方々のみどりの愛護活動への取り組みは、大変意義深いものであり、皆様のご努力に対し深く敬意を表します。
終わりに、多くの人々が緑を守り育てる心を持つとともに、緑豊かな環境づくりが一層発展していくことを祈念し、本日の式典に寄せる言葉といたします。
「2022年度日本動物園水族館協会通常総会」
令和4年5月26日(木)(ホテルエピナール那須)
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「第70回全国ろうあ者大会inひろしま」
令和4年6月12日(日)(広島県立総合体育館)
本日、「第70回全国ろうあ者大会inひろしま」が、全国各地からの参加者を迎えて開催され、皆様にお会いできましたことを大変嬉しく思います。そして本日、厚生文化賞ならびに主管団体表彰を受けられる方々に、心からお祝いを申し上げますとともに、これまでのご尽力に対し深く敬意を表します。
広島県における大会は実に62年ぶりと聞き及んでおりますが、一昨年と昨年の全国ろうあ者大会は、COVID-19の影響により開催することができませんでした。そのため、関係する多くの方々が一堂に会し、手話を用いてコミュニケーションをとり、交流ができる機会を待ち望んでおられたことと思います。
今回の大会は、「手から手へ 70年の過去、現在、未来」がメインテーマであると伺っております。そのことを反映し、研究分科会において話し合われる「手話言語」、「国際」、「災害」そして「情報アクセス」は、過去と今大会を未来へとつなげる、時宜を得たテーマであると申せましょう。
とくに、「災害」と「情報アクセス」については、喫緊の課題だと思います。これまで、全国の各地では、台風や豪雨、地震など、自然災害にたびたび見舞われてきました。そのような状況下においては、きこえない人もしくはきこえにくい人たちは情報を入手することに困難が生じ、大変不安な時を過ごすことが多かったことと推察いたします。災害時に誰もが等しく情報を入手し、コミュニケーションをとることができるような環境の整備は、誰一人取り残されることのない社会を築いていくために不可欠なことであると考えます。
そのいっぽうで、2018年の西日本を中心とした豪雨の際には、きこえない乃至はきこえにくい人たちが、それまでの「支援される」立場から「支援する」立場へと発想を転換させ、「ろう者ボランティアセンター」を立ち上げ被災者を支援されたと聞き、大変心強い思いをいたしました。
「全日本ろうあ連盟」は、長年にわたって、きこえない人ときこえにくい人の福祉向上や、手話通訳制度の充実、そして手話言語の意義と重要性の理解の促進に向け、様々な関係者と連携しながら取り組んでこられました。そのような中で、手話が一つの言語であることの重要性についての理解が広まり、現在では多くの自治体で手話言語条例が制定されるなど、行政と市民が一体となって、その普及に取り組まれていると伺っております。
この大会をひとつの契機として、手話言語の意義が一層理解され、自由に手話言語でコミュニケーションがとれるような環境が広がっていくことを期待いたします。
「全国ろうあ者大会inひろしま」が皆様にとって実り多いものになるとともに、さまざまな障害に対する理解が更に深まり、皆が安心して暮らせる社会が築かれることを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。
「第24回日本水大賞・2022日本ストックホルム青少年水大賞」表彰式
令和4年6月14日(火)(日本科学未来館)
行政相談委員制度60周年記念式典
令和4年6月30日(木)(京王プラザホテル)
「行政相談委員制度」が1961年に設立されてから60年を数え、本日そのことを記念する式典に、ここに集われている皆様、そしてWEBにて参加されている皆様と共に出席できましたことを誠に嬉しく思います。
行政相談委員制度は、国民に最も身近な窓口として、国の行政を巡る様々な相談を受け、行政機関とともにその解決に当たることを目的として、行政苦情相談協力委員の名称で発足いたしました。
爾来、行政相談委員を委嘱された方々は、市町村役場や公民館で定期的に相談所を開設したり、人々が集まる地域のイベント会場に出向いて相談を受けたりするほか、小中学校において行政相談に関しての「出前教室」を行うなど、様々な活動に取り組んでおられます。また、大きな災害が発生した際には、自らも被災している中で、困っている人々の相談に応える取り組みをされたことも伺っております。
地域における信望の厚い方々が、無報酬のボランティアとして、このような役割を果たす行政相談委員制度は、国際的にも高い評価を受けております。
本日功労者顕彰を受けられる皆様を始め、全国約5千人の行政相談委員、そして発足以来60年にわたり、この制度を支え、発展させてこられた関係者のご尽力に、深く敬意を表します。
今日、COVID-19の影響が続き、また、自然災害などに対する心配も絶えない中、困っている人々に寄り添い、相談者と共に解決に向けて歩んでいく行政相談委員の活動は、益々重要なものとなっていくと確信しております。
おわりに、これからも全国の行政相談委員の皆様のたゆまぬご努力により、国民が安心して暮らせる安全な社会が保たれていくことを切に願い、本日の式典に寄せる言葉といたします。
第56回全日本高等学校馬術競技大会開会式
令和4年7月20日(水)(御殿場市馬術・スポーツセンター)
本日、第56回全日本高等学校馬術競技大会が、ここ御殿場市馬術・スポーツセンターにおいて開催され、全国各地区の予選を勝ち抜かれた36校の選手ならびに大会に携わる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。
2020年初頭からのCOVID-19の感染拡大により、同年の第54回大会は中止となり、昨年の第55回大会は実施されましたが、観戦者なしの大会となりました。今回、人数の制限はあるものの、3年ぶりに観戦者の見守る中で大会が実施されることは、参加者を始め多くの関係者にとって、誠に喜ばしいことです。
さて、ご存知のように、馬術競技は全ての種目で性別に関係なく同じ条件で実施されます。また、数多あるスポーツの中でも、人と動物とが一体になって行う稀な競技でもあります。そのことからも、騎乗者には、それぞれに個性が異なる馬の性格を慮って誘導することが求められます。皆様には、馬の気持ちをよく理解し、その能力を最大限に発揮させるため、これからも一層技術を高めていっていただくことを願っております。
それとともに、馬術競技をされている皆様には、競技をする上でのパートナーである馬についての知見も深めていただければと思います。
現在、世界を見渡すと、少なくとも150品種以上の馬がいるとされています。それら多様な品種が成立した背景や、どのような種類がどのような競技に適しているのかなど、興味深いことが多々あります。そのようなことを知ることは、おそらく馬術競技を行う上でも活きてくるのではないかと考えます。
おわりに、この大会が、皆様にとって思い出に残る一時になることを願っております。そして、未ださまざまな制約のある中で開催に向けて尽力をされた皆様に深く敬意を表し、開会式に寄せる言葉といたします。
令和4年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
令和4年7月28日(木)(アスティとくしま)
60回目を迎える全国高等学校総合体育大会が、全国各地から多くの参加者を迎え、四国山脈に代表される豊かな自然と景観、そしてお遍路さんを支えてきた「お接待」の文化が根付く、ここ徳島県をはじめ、香川県、愛媛県、高知県の四国4県と和歌山県で開催されることを大変喜ばしく思います。
現在、ウィズ・コロナの下で部活動にも一定の制限があるなど、困難な状況が続いておりますが、そのような中で出来る限りの努力をされ、出場を果たされた皆様にお喜びを申し上げます。
それとともに、多くの人々が日本のスポーツの将来に希望を見いだせる「高校生最大のスポーツの祭典」を引き継いでいくため、COVID-19の感染拡大防止に対する様々な工夫を重ね、観戦者を入れての開催に至ったと伺っております。開催に向けて取り組まれた全国の関係者のご尽力に深く敬意を表します。
そして私も、3年ぶりに開会式に出席し、皆様にお目にかかることができ、大変嬉しく思います。
さて、全国高等学校総合体育大会は、高校生のスポーツ技能の向上やスポーツ精神の高揚を図るとともに、生徒相互の親睦を深め、心身ともに健全な青少年を育成することを目的とし、1963年から開催されております。また、歴史を振り返りますと、各競技の世界大会やオリンピックなど、国際的な大会に出場した選手の中には、かつてこの大会で活躍した方たちも多くおられます。
これから競技に出場される方々には、「燃え上がれ我らの闘志 四国の大地へ」のスローガンの下、感染予防に心を配りつつ、日頃の練習の成果を存分に発揮されることを期待しております。
また、この大会には、各開催県の多くの高校生が運営に協力をされています。未ださまざまな制約があることと推察いたしますが、皆様には、各県で尽力をされている方々とも可能な場において交流を深めていただきたく思います。そして、高校生活の良き思い出を作られることを願っております。
終わりに、「躍動の青い力 四国総体 2022」が、選手の活躍と地元高校生そして関係者の協力により、実り多いものとなることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。
第46回全国高等学校総合文化祭「とうきょう総文2022」総合開会式
令和4年7月31日(日)(東京国際フォーラム)
「第46回全国高等学校総合文化祭」が、江戸期から受け継がれてきた伝統文化と最先端の技術が共存する東京都で開催され、全国各地、そして海外から参加された多くの方々と共に出席できましたことを大変嬉しく思います。
2020年初頭からのCOVID-19、特にここ最近の感染拡大により、皆様の日々の活動はもとより、大会運営の準備に当たっても多くの困難を伴ったのではないかと推察いたします。そして、そのような中にあっても、実行委員の方々を始め、この催しに関わる多くの関係者が様々な工夫で感染防止を図り、活動を継続し、今日の日を迎えることができましたことをお喜び申し上げます。
さて、全国高等学校総合文化祭は、文化・芸術活動に取り組む高校生の祭典として、開催地の生徒が実行委員会を組織し、地域の特性と高校生ならではの感性を活かした、生徒主体の大会づくりがなされてきました。このような祭典が、次世代を担う高校生によって毎年開催されていることは、国民の文化・芸術に対する関心や意欲をいっそう高めるとともに、多様な才能を開花させ、未来に向けた豊かな文化創造の土壌を培う上で、誠に意義深いものと考えます。
今年の大会テーマは、「江戸の街 光織りなす文化の花」であります。参加される皆様が、日頃の活動の中で培われた創造性を発揮し、それを全国へと発信されることを期待しております。そして、感染症への対応に十分心を配られつつ、可能な場において、参加者相互の交流を深めていただき、国の内外に友好の輪を広げていかれることを願っております。
終わりに、本大会の開催へ力を尽くされた多くの関係者の熱意と努力に深く敬意を表しますとともに、「とうきょう総文2022」が、皆様の心にいつまでも残る素晴らしい夏の一時になることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。
第18回日本スカウトジャンボリー
令和4年8月7日(日)(大田区総合体育館)
はじめに、今月はじめ、大雨特別警報が発令された山形県や新潟県を中心に、多くの被害が生じました。このことにより、身近に被災した方のいる参加者もおられることと思います。ここに、心からお見舞いを申し上げます。
ボーイスカウト日本連盟が1922年に創立されてから100年を迎える本年、その記念大会となる「第18回日本スカウトジャンボリー」が「~自分のfを探せ~」の大会テーマの下に開催され、本日ここに集われている皆様と大集会に出席できましたことを大変嬉しく思います。
以前は日本ジャンボリーと称されていた日本スカウトジャンボリーは、おおむね4年に1度開催される国内のボーイスカウト最大の祭典です。そして、皆様にとっては1度、多くても2度しか参加ができない大会であり、その意味でも大切な機会と申せましょう。
私自身は、折々に日本連盟が主催した会合に出席をしたことがありますが、ジャンボリーも1978年に静岡県御殿場市で開催された第7回大会に出席いたしました。おそらく、スカウト活動がどのようなものなのかを間近で見る機会を得たのは、その時が最初ではなかったかと思います。
このたびは、COVID-19の影響により、各地に分散している会場をオンラインで結んだり、期間を分散したりするなど、今まで行われた大会とは異なった形で開催し、そこに1万人以上のスカウトが参加していると伺っております。新たな様式の大会で、全国の参加者が一体感を持って行う活動には、いろいろな点で対面とは違う難しさがあると思いますが、このような経験は、必ずや皆様の将来に役立つことと考えます。
また、先ほどは、都道府県連盟の代表スカウトの方々とお話をし、ジャンボリーでの活動や日頃の活動の様子などを伺いました。スカウト活動への参加を通じて自らの成長を促し、将来、良き社会人となるために研鑽され、大会のさまざまな活動に積極的に、また、真剣に取り組んでいる姿を頼もしく感じました。
今回は、さまざまな制限があることと思いますが、皆様には、ぜひ多くの活動に参加し、スカウト同士の交流を深めるとともに、お互いに協力をしながら、貴重な思い出を作っていただきたく思います。そして、全国のスカウト活動がさらに活性化するよう、尽力をされることを期待しております。
おわりに、スカウト運動の一層の発展と、我が国、そして世界の青少年の健全な育成が図られることを祈念し、大集会に寄せる言葉といたします。
全国国立大学附属学校PTA連合会創立70周年記念式典
令和4年9月30日(金)(ハイアットリージェンシー東京)
本日、一般社団法人全国国立大学附属学校PTA連合会の創立70周年記念式典が開催され、全国から参加された皆様と共にお祝いできますことを、誠に喜ばしく思います。
現在、全国に253設置されている国立大学附属学校は、日本の公教育の根幹を支え、教育水準の向上を目指す役割を担っております。国の拠点校として、また各地域のモデル校として、実験的そして先導的な学校教育への取り組みや教育実習の実施、国立大学や学部における教育に関する研究への協力などをはじめ、これまで公教育を牽引し、我が国の教育の発展に大きく貢献をしてきました。
全国国立大学附属学校PTA連合会は、1952年に国立大学附属学校ならびに附属学校単位に構成された単位PTAの支援を目的として創立されました。爾来、70年の長きにわたって、公教育、社会教育、家庭教育の充実とともに国立大学附属学校相互の交流を図り、教育全般の発展に尽力をしてこられました。
また、「絵画コンクール」や「作文・絵作文コンクール」、コロナ禍における「みんながつながるオンライン文化祭」の開催、財政教育など社会課題と教育現場をつなぐ活動、いじめの防止や障害についての「理解」と「共生」を育む活動をされるなど、児童・生徒を取り巻く多くの課題に積極的に取り組んでおられると伺っております。
近年、時代が移ろうなかで、現代的教育課題への取り組みや令和の日本型学校教育構築へ向けての役割、そして地域のモデル校としての役割など、国立大学附属学校が果たす役割には大変大きなものがあることと推察いたします。全国国立大学附属学校PTA連合会ならびに会員の皆様には、これからも大学、附属学校、保護者が手をたずさえながら日本の公教育を支え、未来を担う児童・生徒たちの健全な育成のために、より一層力を尽くしていかれることを祈念しております。
終わりに、長きにわたりPTAの活動に尽力をされ、本日、表彰を受けられる方々をはじめ、これまで弛みなくPTA活動を支えてこられた多くの関係者のご努力に対して深く敬意を表し、本式典に寄せる言葉といたします。
2022年(第31回)ブループラネット賞表彰式典
令和4年10月5日(水)(東京會舘)
本日、3年ぶりにブループラネット賞の表彰式が開催されますことを誠に喜ばしく思います。このたび、第31回ブループラネット賞を受賞されたブータン王国のジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王陛下、ならびに米国のスティーブン・カーペンター教授に心からお祝いを申し上げます。
このたびご受賞になるジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王陛下におかれては、GNHとして知られる国民総幸福量という考え方をご提唱になり、物質的な豊かさのみを目指すのではなく、文化や環境にも配慮し、国民の幸福感を高める国づくりをなさってこられました。これらのことは、陛下がご即位になった半世紀前から一貫して進めてこられたことと伺っております。そして現在、人間の幸福度を社会指標のひとつとする考え方は、現代社会に新たな視点をもたらし、国連や経済協力開発機構の報告などにも用いられております。
またスティーブン・カーペンター教授は、40年以上にわたって、湖の生態系の研究を行われ、湖のレジリエンスについて、これを数理モデルを使って解明し、社会-生態系に対する新しい考え方を提示されました。また、土地利用に起因するリンや窒素の環境問題にも取り組まれ、リンや窒素を含む雨由来の排水が湖の環境と生態系に影響を与えること、それとともに、リン資源の枯渇による肥料不足が食料供給を脅かすことについて警告されました。
ここに、お二方の業績に深く敬意を表します。
受賞されたお二方が、並外れた先見性と卓越した行動力により、長年にわたり人々のとるべき道筋を示してこられたことは、たいへん意義深いことであります。そして、お二方をはじめ環境問題を深く考察している方々が主導的な役割を担い、持続可能な地球環境と人々のよりよい生活が実現されることを願っております。
さて、2020年と2021年は、COVID-19のパンデミックにより、表彰式典および関連行事が開催されませんでした。そのようなことから、このたびの式典においては、2020年の受賞者である米国のデイビッド・ティルマン教授ならびに英国のサイモン・スチュアート博士、2021年の受賞者である米国のヴィーラバドラン・ラマナサン教授ならびにスリランカのモハン・ムナシンゲ教授にもお声掛けをし、ご出席いただいております。本日は、その4名の受賞者の方々とも直接お目にかかることができ、たいへん嬉しく思っております。
最後になりますが、このブループラネット賞が世界の人々の環境に対する意識を高め、それに伴う行動をうながす契機のひとつになりますことを祈念し、第31回ブループラネット賞表彰式に寄せる言葉といたします。
第29回国際高血圧学会
令和4年10月12日(水)(国立京都国際会館)
<英文>へ
It is a great pleasure for me to attend this opening ceremony of the 29th Scientific Meeting of the International Society of Hypertension being held here in Kyoto, the ancient capital of Japan, under the theme of “the wisdom for conquering hypertension” with so many people from Japan and overseas, including those participating online.
The International Society of Hypertension has made a series of recommendations for the provision of safe and high-quality medical care for hypertension and related cardiovascular diseases. I have learned that your members are dedicated to providing medical care in their respective countries and regions, and committed to research activities to create next-generation medical care. I would like to extend my sincere respect and gratitude to you all for your tireless efforts.
This meeting is being held for the first time in 16 years in Japan, where the Spontaneously Hypertensive Rat, which has played such a significant role in hypertension research, was developed at Kyoto University here in Kyoto. Japan is also the place where human angiotensin II, which is involved in the regulation of blood pressure, was discovered and applied to the development of new drugs. Accurate blood pressure monitors for home use are also among the numerous research results produced in this country. It is gratifying that researchers worldwide have cooperated in laying the foundations of the study of hypertension by promoting public awareness of research results.
Speaking about the history of the evolution of living organisms, fishes are known to be low blood pressure organisms. When organisms emerged from the sea onto land during the evolutionary process, they are understood to have developed a mechanism for maintaining blood pressure by retaining salt in the body. This is crucial when we consider the evolutionary process. On the other hand, I have learned that the development of this mechanism can lead to excessive retention of salt in the body because modern-day humans can take as much salt as we wish. This is one of the causes of high blood pressure, and may also further induce various diseases. I think this is an interesting issue in studying the properties obtained through adaptation and their relationships to lifestyle.
According to the WHO, at present more than one billion people worldwide have high blood pressure. Moreover, I have learned that many people with hypertension are not aware that they have high blood pressure, or are not being treated adequately, even if they have been diagnosed with hypertension. Hypertension is one of the leading noncommunicable diseases that is largely affected by lifestyle. Therefore, the WHO has set a global target of reducing its prevalence by 33% between 2010 and 2030. It is extremely meaningful that discussions towards this target will also take place at this meeting since it is essential to change behavior by improving the health awareness of individuals.
In closing my address, I wish you all every success in building on discussions at this meeting focused on the 3 pillars Food, Move, and AI, as you contribute to the further development of the study of hypertension, and to the well-being of humanity.
国際交流基金設立50周年記念「2022年度国際交流基金賞」授賞式
令和4年10月19日(水)(グランドプリンスホテル高輪)
国際交流基金が設立から50年を迎えた記念すべき年にあたり、2022年度の国際交流基金賞授賞式に皆様とともに出席できましたことを誠にうれしく思います。そして、本日賞を受けられる、ロベール・ルパージュ氏、社団法人韓日協会、そしてグナワン・モハマド氏に心からお祝いを申し上げます。
国際交流基金は、諸外国に日本への理解を深めてもらい、国際的な相互理解を増進するため、文化・芸術交流の促進や日本語教育と日本語学習の推進、さらには日本研究や国際対話の推進や支援を、広く世界の国と地域において進めてこられたと承知しております。
私自身、これまで訪れた国々において、幾度となく、国際交流基金が関わってきた日本語教育や日本学研究を行っている機関を訪ねたり、同基金による展示を見学したりいたしました。また、国際交流基金賞や国際交流奨励賞を受賞した団体を訪れたこともありますが、そのどれもが印象深いものでした。中でも、日本語や日本学を専攻している学生のレベルが非常に高いことに、驚くとともに感銘を覚えました。また、日本研究に携わっている研究者が有する多様な視点に改めて気づく機会にもなりました。そして、そのような人たちが、それぞれの国と日本との距離をさらに縮める役割を果たしていることにも思いを致しました。
1973年に始まった国際交流基金賞は、これまでの間、日本も含めて様々な国の個人や団体に贈呈されてきました。そして、そのことを契機として、受賞者の業績に光が当たり、それぞれの国への理解が深まったことと思います。これまで、国際交流基金の活動を支えてこられた皆様の熱意とご努力に深く敬意を表します。
設立から50年を迎えた今日、国際社会における相互理解、文化交流の必要性はますます高まってきております。そのような状況において、国際交流基金が果たしていく役割は、今まで以上に重要なものとなってまいりましょう。今後も、関係者のご尽力により、多様な分野における文化交流がさらに発展することを願っております。
おわりに、国際交流という幅広い分野において、専門性を活かして活動されている受賞者ならびに受賞団体の皆様の一層のご活躍を祈念し、私の挨拶といたします。
第62回海外日系人大会開会式
令和4年10月22日(土)
【本年10月22日・23日に開催された本大会は、海外在住の日系人が一堂に会することができないので、Web上の大会となりました。そのようなことから、主催者からビデオメッセージによるお言葉の提供依頼があり、メッセージをお寄せになりました。】
第62回海外日系人大会が昨年に続きオンラインで開催され、本日の開会式において、世界の各地で参加されている皆様にご挨拶できますことを誠に嬉しく思います。
2022年現在、世界は、未だCOVID-19の収束を見ておりません。しかしながら、多くの国では、ワクチン接種が進んだり、さまざまな規制が緩和されたりしてきております。日本においても外国人の入国制限が緩和され、長く入国を待ち望んでいた日系の留学生や研修員の人々が、既に日本で充実した留学・研修生活を送っていることを知り嬉しく思っています。
COVID-19のパンデミックが始まって既に2年半以上が経ちます。この間、海外の日系社会では、人々が集って従来のような活動を行うことが難しくなりました。しかし、そのような中、若い世代の人々を中心として、オンライン技術を駆使したイベントやセミナーなどが開催され、地域や国境を越えた連携がこれまで以上に促進されたと聞いております。また、今年に入ってからは、世界各地の日系社会において重要な役割を果たしてきた「祭り」や「運動会」なども対面方式やハイブリッド方式で実施されてきていると伺い、大変喜ばしく思っております。
本年の大会では、「日系社会の持続可能な発展と日本」をテーマとして、各地の日系社会や日系団体の活性化と持続的な発展を求めて、さまざまな視点から討議されると伺っております。世界の各地から参加される皆様が、地域や世代を越えて日系社会の将来について議論することは誠に意義深いものと考えます。
おわりに、このたびの大会を通じて、世界各地の日系社会間、ならびに日系社会と日本を結ぶ絆がさらに深まるとともに、皆様が各方面において一層の活躍をされることを心より祈念いたしております。そして一日も早く、再び皆様と直接お目にかかる日が来ることを心待ちにし、開会式に寄せる言葉といたします。
第22回全国障害者スポーツ大会開会式
令和4年10月29日(土)(カンセキスタジアムとちぎ)
本日、第22回全国障害者スポーツ大会「いちご一会とちぎ大会」の開会式が、ここ栃木県で開催され、全国各地から参加された多くの選手、役員、そして開催地の皆様とともに出席できましたことを大変うれしく思います。
昨年までの3回の大会を振り返りますと、2019年は台風で中止に、そして2020年と2021年はCOVID-19の感染拡大により延期もしくは中止となりました。そのことから、今回は4年ぶりの大会となります。感染症の影響で、多くの制約がある中、開催に向けて力を尽くしてこられた方々に深く敬意を表します。
さて、全国障害者スポーツ大会は、障害者がスポーツを通してその楽しさを体験するとともに、国民の障害に対する理解を深め、障害者の社会参加の推進に寄与することを目的として、「全国身体障害者スポーツ大会」と「全国知的障害者スポーツ大会」を統合し、2001年に第1回大会が開催されました。爾来、本大会は、我が国の障害者スポーツの普及と振興に大きく寄与してきたと伺っております。
「いちご一会とちぎ大会」に参加される選手の皆様には、日頃の練習の成果を存分に発揮して競技に臨んでいただきたいと思います。それとともに、今回はまだ、種々の制限があることとは思いますが、全国各地から集われた選手同士、そして多くのボランティアや地元の方々との交流を深められ、この大会の思い出を作っていただきたいと思います。
おわりに、「夢を感動へ。感動を未来へ。」のスローガンの下、参加者全員が活躍され、また、多くの人々が夢と感動を抱く大会になることを願っております。
そして、本年の大会を一つの契機として、障害のある人々に対する理解がさらに広がり、障害者の社会参加が一層促進されますことを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。
日本青年館財団設立100周年・日本青年団協議会結成70周年記念式典
令和4年11月2日(水)(日本青年館)
本日、「日本青年館財団設立100周年」ならびに「日本青年団協議会結成70周年」の記念式典が開催され、皆様とともにお祝いできますことを、大変喜ばしく思います。
日本青年館の財団設立と建設は、大正時代に行われた明治神宮の造営に、全国から延べ約11万人の青年団が勤労奉仕に携わったことが契機になったと伺っております。そして、造営奉仕に携わった青年たちを讃え、皇太子時代の昭和天皇より、令旨が下賜されています。そのことを記念し、1921年に青年団を支援する財団法人日本青年館が設立され、1925年には全国の青年団員の募金によって、その活動拠点としての日本青年館が建設されました。
爾来、日本青年館は、未来を担う青年たちに寄り添う存在として、今日に至るまで、青少年活動をはじめ多岐にわたって大きな役割を果たしてこられました。いっぽう、その長い歴史のなかでは、戦争という大変困難な時代を経験しています。その戦争への反省と平和への思いとともに、戦後の荒廃した地域の復興、青年の生活の向上、そして、平和と民主主義の確立を目指し、各地で青年団の活動が再開されました。それとともに、日本青年館の支援のもと、これら青年団の全国組織として、1951年に日本青年団協議会が発足したと伺っております。
青年団の皆様には、全国の各地域で、青年の生活や地域を豊かにするためのボランティア活動、文化およびスポーツ活動、平和で民主的な社会を目指す学習や社会活動、そして国際交流などを進めておられると聞き及んでおります。若い時期に社会に目を向ける活動に参加することは、大変有意義であると思います。皆様が行っておられるこのような青年団の活動に呼応する形で、日本青年館は、一貫して青少年活動や社会教育を支援してこられました。また、運営する宿泊施設やホールの利活用を通じ、民俗芸能の保存振興や高校生のオーケストラ活動の支援をされるなど、これらの施設が文化とスポーツ振興の拠点にもなっていることは、誠に意義深いものと申せましょう。
いま世界は、感染症や紛争、気候変動など多くの課題を抱えております。我が国においても、多発する自然災害をはじめとする様々な問題に直面し、人々のつながりや共に生きるという理念がより一層大切になっていると思われます。このような時代にあって、長い活動の歴史を持つ日本青年館と日本青年団協議会が、今まで以上に地域や若者の励みとなり、拠り所となって、青年団活動や公益活動に取り組まれ、地域や社会の担い手を輩出していくことを期待しております。
終わりに、日本青年館と日本青年団協議会のますますの発展と、日本、そして世界の平和な未来を、若者が担っていくことを心から祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。
大日本山林会「第61回農林水産祭参加全国林業経営推奨行事賞状伝達贈呈式」
令和4年11月10日(木)(三会堂ビル石垣記念ホール)
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第45回全国育樹祭式典行事
令和4年11月13日(日)(昭和電工武道スポーツセンター)
第45回全国育樹祭が、全国各地から多くの参加者を迎え、ここ大分県で開催され、皆様とともに出席できましたことを大変喜ばしく思います。そして、本日表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げます。
全国育樹祭は、継続して森を守り育てることの大切さを普及啓発するため、1977年に第1回大会が大分県で開催されました。以来、全国植樹祭を開催したことのある都道府県において開催され、第1回大会から45年の時を経て、再び大分県で開催されますことに深い感慨を覚えます。
昨日、私は、2000年の第51回全国植樹祭が行われた大分県県民の森平成森林公園において、当時の天皇皇后両陛下が植樹をされたアカガシとカツラの手入れを行いました。22年の歳月を経て、その2本の樹が健やかに成長している姿を目にすることができたことを大変嬉しく思いました。
大分県では、第51回全国植樹祭の開催テーマに掲げられた「豊かな国の森づくり」の理念が植樹行事として引き継がれ、林業従事者を始め多くの県民が、県内各地で森づくりに参加してこられたと聞き及んでおります。そして美しい森林を守り、日々の暮らしを支えるため、様々な形で森林を活用してこられたとも伺いました。このような皆様の森林に対するご尽力に深く敬意を表します。
森林は、国土の保全や水源の涵養、木材や特用林産物の供給などを通じ、私たちの暮らしに必要なものや豊かさをもたらしています。それとともに、二酸化炭素の吸収源として、また生物多様性を維持していく場としてなど、地球環境を守る上でも重要な役割を担っております。このように、かけがえのない豊かな森林を維持することは、人類はもとより、地球上に暮らす数多の生き物たちにとって大変重要なことと考えます。
また現在、我が国の森林の約4割に相当する人工林の半数が、本格的な利活用の時期を迎えています。この豊富な資源を有効に活用するとともに、循環利用に向けて計画的に森林を再造成し、健全な姿で次の世代へと引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な務めであると申せましょう。
その意味から、本日表彰を受けられる方々をはじめ、日頃からそれぞれの地域において、国土緑化に力を尽くされている全国の皆様に敬意を表しますとともに、このような活動が今後一層発展していくことを期待いたしております。
おわりに、「豊かなおおいた 森林を育み 木と暮らし」をテーマとする本大会を一つの契機として、豊かな森林を育む心がさらに広がり、森林からの恩恵である木材を暮らしの中に活かす木の文化が、ここ大分の地から全国へと展開していくことを祈念し、私の挨拶といたします。
大日本農会「令和4年度農事功績者表彰式」
令和4年11月17日(木)(赤坂インターシティAIR)
以下のURLをご参照ください
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大日本水産会「令和4年度水産功績者表彰式」
令和4年11月22日(火)(三会堂ビル石垣記念ホール)
はじめに、今年、大日本水産会が設立から140年という節目の年を迎えられました。今日、ここに集われている皆様とともにお祝いの意を表したく思います。
本日、大日本水産会「令和4年度水産功績者表彰式」が開催され、長年にわたる水産業への功績に対して表彰を受けられる皆様に、心からお喜び申しあげます。
また、幼少の頃より魚をはじめとする水族に親しんできた私にとり、全国各地で水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。
四方を海に囲まれ、湖沼や湧水、清流に恵まれている我が国では、かねてより漁業や養殖業が盛んで、それに伴って、関連する加工業や流通業が発展してまいりました。水産業は、ことのほか鮮度と安定的な供給が求められる産業です。長年にわたり、これら各分野の振興に力を尽くしてこられた皆様には、さまざまなご苦労があったことと推察し、ここに深く敬意を表します。
我が国では、古来より魚介類が身近で貴重なタンパク源として親しまれてきました。さらに昨今の健康志向もあり、魚介類に対する人びとの関心が高まるとともに、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこととも相俟って、海外においても、その和食の中心的な存在ともいえる魚介類には注目が集まっております。
このように、水産業はこれからも様々な可能性が期待される重要な産業であります。いっぽう、最近の日本の水産業を取り巻く状況に目を向けますと、海洋環境の変化による水産資源の減少や漁業の後継者不足、燃料・資機材の高騰や赤潮の被害、またCOVID-19による水産物の需要の減退、さらには漁船の脱炭素化への対応など、さまざまな課題が山積しています。それらの解決のため、政府や水産業界、そしてそれぞれの現場における取り組みが、日々行われていると伺っております。
このような状況のもと、今回で106回目をむかえ、総受章者数3,302名を数える大日本水産会の重要な事業である本表彰事業が、日本の水産業の維持と発展のために大きく寄与する一つの契機となることを期待いたします。
そして、本日表彰を受けられる方々がその一翼を担われつつ、これからもお元気で活躍されますことを願っております。
おわりに、140年の歴史を有する大日本水産会が、今後ますます発展し、我が国の水産業の振興に一層の貢献をされることを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。
税関発足150周年記念式典
令和4年11月28日(月)(パレスホテル東京)
本日、「税関発足150周年記念式典」が開催され、この場にお集まりの皆様、また、画面を通して、全国9つの税関で職務に精励されている皆様とともにお祝いできますことを誠に嬉しく思います。
日本の税関の歴史を振り返りますと、1858年に欧米5ヶ国との修好通商条約が締結され、その翌年に箱館と横浜、そして長崎の港に運上所が置かれたことに始まります。そして150年前の本日、全国に設けられていた運上所が、現在の税関へとその名称が統一されるに至りました。
この時以来、我が国は、諸外国との貿易を通じて産業を盛んにし、国民生活を豊かにするなど、目覚ましい発展を遂げてきました。この間、税関は、関税等の適正な徴収や密輸の厳格な取締り、貿易の円滑化を推進し、人々が安全で安心して暮らせる社会の実現と、貿易を通じた経済発展に大きく貢献してきました。
私は過日、そのような税関の現場を見学する機会を得ました。その際、日々世界中から届く膨大な数の郵便物や船舶によってコンテナで運ばれてくる貨物、そして外国から入国する旅客の手荷物に不正な薬物や知的財産を侵害するようなものが隠されていないかを検査していることなどについて説明を受けました。そして、職員一人一人が真剣に検査をする様子を間近に見、高度な専門知識と経験を活かし、懸命に仕事に励んでおられる姿が強く印象に残りました。皆様が日々士気高く職務を遂行されることによって、人々の安寧な暮らしが築かれていることを再認識した1日であり、そのたゆみない努力に深く敬意を表します。
島国である日本において、水際を守る税関の役割は重要であり続けます。その役割を果たすため、税関は、150年の長きにわたって、社会や経済の変化に的確に対応してきました。これからも、その歴史の上に立ち、新たな取り組みも進めながら、社会的使命を果たしていかれることを期待しております。
おわりに、税関が発足してから150年を迎える年にあたり、職員の皆様が、今後とも職務に精励され、国民からの信頼や国内外の期待に引き続き応えていかれることを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。
中央区立久松小学校開校150周年・久松幼稚園開園80周年記念式典
令和4年12月3日(土)(中央区立久松小学校)
中央区立久松小学校が開校から150年、そして久松幼稚園が開園から80年を迎え、本日、その記念式典が行われますことを心からお喜び申し上げます。
久松小学校は明治6年、1873年の開校以来、今日まで16,000名を超える卒業生を、また久松幼稚園は昭和16年、1941年に開園して以来、今日までに5,000名を超える修了児を社会に送り出してこられたと伺っております。
久松小学校ならびに久松幼稚園は、その長い歴史と伝統の中で、児童や園児の健やかな成長と明るい未来を願いつつ、主体性や礼儀を重んじ、今日の都心部では薄くなりがちな地域とのつながりを大切にするなど、特色のある教育を進めてこられました。また、小学校と幼稚園が同じ敷地にあることを生かし、年齢の異なる児童・園児が交流する取り組みも進められております。このような歩みをたゆみなく支えてこられた教職員をはじめ、保護者、卒業生・修了児、そして地域の方々など、今までに関係してこられた多くの方々の熱心なご尽力に心から敬意を表します。
さて、久松小学校、久松幼稚園の児童・園児の皆さん。今日は、皆さんと直接もしくは画面を通してお目にかかれましたことを、大変嬉しく思います。
私は、小学校の120周年と幼稚園の50周年の機会に、この場所に来たことがあります。今回、30年ぶりに来てみて、児童と園児が格段に増え、また新たな校舎・園舎が増設されるなど、以前にも増してこの小学校と幼稚園が充実した印象を受けました。それとともに、「久松しぐさ」に見られる礼儀を大切にする校風などが変わらずに残っていることも喜ばしく思っております。
皆さんには、今年節目の年を迎えた小学校と幼稚園において、日々楽しく学んだり、遊んだりしていると伺っております。皆さんが、豊かな心と健やかな身体を育み、新しい時代の担い手として大きく羽ばたいていかれることを願っております。
終わりに、今後ますます変化し、多様化する社会にあって、中央区立久松小学校・久松幼稚園が、その歴史と伝統を大切にしながら、未来に向かってさらに発展していかれることを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。
統計150年記念式典
令和4年12月7日(水)(国立オリンピック記念青少年総合センターカルチャー棟)
本日、統計150年記念式典が開催され、ここに集われている皆様、また、画面を通して参加されている皆様とともにお祝いできますことを大変うれしく思います。そして、本日表彰を受けられる方々に心からお喜びを申し上げます。
日本における近代統計の歴史を振り返りますと、1871年に太政官正院に政表課が設置され、大主記に任ぜられた杉亨二が、初の総合統計書である「日本政表」の編成に着手した時がその端緒とされています。
爾来、我が国の統計は、人口や社会、経済などの現状を体系的に把握し、合理的な意思決定を行うための基盤として、広く生活の向上や社会経済の発展に寄与してきました。それとともに、過去から現在に至るまでの統計の数値は、誰もが利活用できる国民共有の財産になっております。
また、近年では、生活様式の変化や個人情報保護意識の高まり、さらには、COVID-19の影響など統計調査を取り巻く環境が大きく変化する中で、ビッグデータの活用やオンラインによる調査の導入など、ICTを活用した新たな取り組みもなされていると伺っております。
関係者のご努力により、このようにして統計調査が着実に実施され、正確な統計が効率的に提供されていることは、多くの人々にとって大変心強いことだと思います。
このような統計調査は、統計調査員をはじめとする多くの関係者によって支えられております。本日表彰を受けられる方々を始め、長年にわたり、献身的に統計の作成に携わっておられる方々に深く敬意を表します。
おわりに、この150周年の機会に、先人の業績と関係者のたゆみない努力に思いを致すとともに、これからも、社会の重要な情報基盤である統計が一層充実し、さらに発展していくことを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。
第37回、第38回国際生物学賞授賞式
令和4年12月14日(水)(日本学士院会館)
「国際生物学賞」は、昭和天皇の長年にわたる生物学へのご貢献を顕彰するため、ご在位60年を機会に1985年に創設され、併せて上皇陛下の魚類分類学のご研究を記念する賞であります。本日、その第37回と第38回合同の授賞式の日を迎えました。第37回の受賞者であるカリフォルニア大学バークレー校のティモシー・ダグラス・ホワイト教授、ならびに第38回の本賞を受賞された東京大学の塚本勝巳名誉教授に心からお喜びを申し上げます。
第37回は、「ヒト進化の生物学」が贈賞の対象分野であります。受賞されたホワイト教授は、エチオピアやタンザニアにおいて、極めて多彩な化石の発見を推進されるとともに、アウストラロピテクス・アファレンシスをはじめ、その精緻な記載と解釈に基づき、人類の進化過程の様々な段階についての理解を飛躍的に進めてこられました。中でも特に顕著なものとして、440万年前のアルディピテクス・ラミダス化石の発見をあげることができます。これらの人類化石やその周辺の動物相および古環境資料の発見と分析を通じて、それまでは不明であったアウストラロピテクス段階以前の人類進化の様相が解明されました。
ホワイト教授のこれまでの数々のご業績は、「ヒト進化の生物学」における重要な発展を支えるものであり、ここに深く敬意を表します。
また、第38回は、「魚の生物学」が贈賞対象分野であります。受賞された塚本名誉教授は、海と川を行き来する「通し回遊魚」に関する研究を通じ、長年にわたり、回遊魚の生態学や進化学、発生学の研究の進展に寄与してこられました。特に大きな功績として、ニホンウナギ、アングイラ・ジャポニカのプレレプトセファルスの発見と卵の採集をあげることができます。このことにより、産卵場所の特定とニホンウナギの産卵回遊生態の全貌が解明されました。また、塚本名誉教授は全国の小学校などで、自然との共存を考える授業を実施してこられました。この「うなぎキャラバン」と銘打たれた活動は、全国で300回近くに及んだと伺っております。
塚本名誉教授のこれまでの数々のご業績は、「魚の生物学」における重要な発展を支えるものであり、一般市民や次世代の子どもたちの関心を高める活動と併せて、ここに深く敬意を表します。
最後になりますが、ホワイト教授ならびに塚本名誉教授、そして、お二方とともに、お仕事を進めてこられた方々のご研究が今後さらに進展していくことを願うとともに、生物学分野が一層深まっていくことを祈念し、お祝いの言葉といたします。
2022年(第32回)福岡アジア文化賞授賞式
令和4年12月22日(木)(福岡国際会議場)
本日、第32回福岡アジア文化賞授賞式が開催されるにあたり、大賞を受賞される林英哲氏、学術研究賞を受賞されるタイモン・スクリーチ氏、そして芸術・文化賞を受賞されるシャジア・シカンダー氏に心からお祝いを申し上げます。
一昨年は、COVID-19の感染拡大によって授賞式が延期になり、昨年はオンラインを併用した開催となりました。したがいまして、全ての受賞者をお迎えして開催される授賞式は3年ぶりのこととなります。今日、皆様と共に出席し、この場において受賞者それぞれの活動や研究について直接お話を伺うことができますことを誠に嬉しく思います。
それとともに、感染症の収束が見られない中、授賞式の開催に向けて尽力をされた皆様に、深く敬意を表します。
「福岡アジア文化賞」は、古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものです。
私自身、アジアの国々をたびたび訪れ、多様な風土や自然環境によって創り出され、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗、芸術など、文化の豊かさと深さに関心を持ちました。そして、それらを記録・保存・継承するとともに、さらに発展させていくことの大切さと、アジアを深く理解するための学術の重要性を強く感じてまいりました。そのいっぽうで、私たちはCOVID-19の感染拡大により、人と人との交流が制限され、各地の文化に直接触れることが難しい状況になり得ることを経験いたしました。これらのことから、本賞がアジアの文化の価値とそれらについての学術的な側面を伝えていくことは、大変意義の深いことと考えます。
また、本賞のこれまでの輝かしい受賞者の中には、アジア地域に限らず世界各地で活躍されている方が多くおられますが、このことは、本賞がアジアの文化とその価値を世界に示していく上で、顕著な役割を果たしてきたものと申せましょう。
本日受賞される3名の方々の優れた業績は、アジアのみならず広く世界に向けてその意義を示し、また社会全体でこれらを共有することによって、次の世代へと引き継ぐ人類の貴重な財産になるものと思います。
おわりに、受賞される皆様に改めてお祝いの意を表しますとともに、この「福岡アジア文化賞」を通じて、アジアの各地に対する理解、そして国際社会の平和と友好がいっそう促進されていくことを祈念し、授賞式に寄せる言葉といたします。