スマートフォンとは
スマートフォン (Smartphone) の定義は厳密ではない。世界的にはスマートフォンとは、無線電話機としての携帯電話と超小型パソコンとしてのPDAを統合したものだといえる。スマートフォンは1990年代後半に始まり、2000年代前半に発展していた。
ところが、日本では携帯電話(ヒューチャーフォンともいう)が多機能携帯情報機器として独自の発展をしており、既にPDAの機能を多く取り込むようになっていた。それで表面的な見方では、海外でのスマートフォンは、日本の多機能携帯電話と似たようなものだともいえる。
しかし、日本の携帯電話がNTTドコモやau、ソフトバンクなどのキャリアが独自の仕様やサービスで発展をしてきたのに対して、スマートフォンは、特に2000年代後半には、共通のオープン環境で利用できるようになった。メーカーに限定されない発展、パソコンなど他情報機器との連携などが容易であり、その観点では、多機能携帯電話のオープン化だともいえる。2000年代末には日本でも、携帯電話の多機能化よりもスマートフォン化のほうが将来の発展が期待できることが認識され、携帯電話からスマートフォンへの移行が進んだ。
多機能携帯電話とスマートフォンの違いを列挙する。ここでは、両者の違いを強調するため、あえてスマートフォン普及当初の状況を示す。
大まかにいえば、携帯電話がキャリアやメーカーに限定されたクローズした機能であるのに対して、スマートフォンはパソコンと同様にメーカーやキャリアに限定されない機能をもっているのが特徴である。
しかし、携帯電話もスマートフォンも多くのメーカーが多様な機種を発表しており、それぞれ特徴がある。また、携帯電話やスマートフォンの短所を補うための工夫をしている。そのため、これらの違いは絶対的なものではない。
- OSの違い
携帯電話のOSは、携帯電話に特化したOSが多いのに対して、スマートフォンのOSではブラウザやメールなどの機能は通常のインターネットのプロトコルを採用するなど、他の情報機器にも適用しやすいOSにしていることが多い。また、携帯電話ではキャリアやメーカー固有のOSがほとんどであるが、スマートフォンでは、Windows MobileやAndroidのように、共通のOS、オープンソースのOSがある。
- カスタマイズ可能
携帯電話では、事前に豊富なアプリケーションが搭載されているが、それを追加するのは困難である。それに対してスマートフォンでは、事前にはOSや基本的なアプリケーションが搭載されているだけで、ユーザーが自由にアプリケーションをインストールすることを前提としている。
- サービスの違い
携帯電話では、個々のキャリアが独自のサービスをしているのに対して、スマートフォンでは原則としてキャリアとサービスが独立している。そのため、公式サイトが存在せず、デコメや着うたなどをダウンロードする場所がないし、「おサイフケータイ」のような特殊な機能がない。
- ブラウザ
携帯電話では、画面解像度の都合で、通常のWebページを表示できず、携帯電話向けに簡易化されたHTMLで記述されたページが公式サイトに登録され、専用のモバイルブラウザで閲覧するのが通常である(最近はフルブラウザもあるが)。それに対してスマートフォンでは、機能制約はあるが、パソコンと同じ環境である。そのため、任意のWebページを閲覧できる反面、公式サイトが存在しない。
- 電子メール
携帯電話では主にプッシュメール方式で、携帯電話に直接着信する。これに対して、スマートフォンでは、通常のインターネットのように、受信者は着信サーバにアクセスして受信する。また、携帯電話での絵文字やらデコメールはサポートしていない。
個々の用途では多機能携帯電話のほうが機能や操作性が優れていることもある。しかし、それらはキャリアが限られたクローズな範囲での優秀性であった。その間に、世界の標準は、これとは異なるスマートフォンが主流になってきた。世界を市場とするときには、世界標準に合わせる必要があり、日本企業もスマートフォンに積極的になってきたのである。
2000年代前半:スマートフォンの出現
1990年代末から2000年代前半にかけて、携帯電話やPDAなどの高度化が進み、初期のスマートフォンが誕生した。この頃に主導権をもったのが、SymbianとBlackBerryである。しかし、日本では多機能携帯電話が独自の発展をしており、スマートフォンへの関心は低かった。
当然、日本企業もSymbianとBlackBerryのOSを搭載したスマートフォンの生産をしていたが、その世界的シェアは低い状態だった。
ノキアとSymbian OS
- 1996年 ノキア、Nokia 9000 Communicator
QWERTYキーボードと大型ディスプレイの携帯電話に、PIN機能をもたせたもので、最初のスマートフォンだといわれる。ノキアは世界最大の携帯電話メーカーであり、当時は独占的なシェアをもっていた。
- 2000年 Symbian OS
Symbian OSが、英Symbian社が英PSION社のPDA用のOS「EPOC32」を、スマートフォン向けに開発したOS。オープンソースとして提供され、多くのメーカーが採用している。なお、2009年、Symbian社はノキア社に買収された。
- 2000年 Ericsson社(スウェーデン)、R380
Symbian OSで稼働する最初のスマートフォン
- 2001年 Nokia 9210 Communicator
ノキアがSymbian OSを搭載した最初の機種。Java対応、MMS(Multimedia Messaging Service)対応、MicrosoftのOfficeと互換性のあるワープロや表計算など、多くの業界標準を搭載し、海外では最初のカラー画面を採用、ベストセラーになった。
BlackBerry
- 1996年 RIM inter@ctive
- 1998年 RIM 950 Wireless Handheld
- 1999年 BlackBerry OS
RIM(Research In Motion)はカナダのモバイル通信技術のベンチャー企業で、ポケベルで双方向に文字を送れるプッシュ型のメール機能を備えた「Inter@ctive」を発表し、1998年には液晶画面とキーボードを備えた「950 Wireless Handheld」を発表した。このソフトウェアは、1999年に「BlackBerry Wireless Solution/Enterprise Server software for Microsoft Exchange」として、BlackBerry OSの原型になった。
- 2002年 BlackBerry 5810、音声通話に対応
- 2004年 BlackBerry 7750 3G対応
BlackBerryは、企業向けの市場でトップシェアを得たが、この頃から個人向けでもヒット製品を提供するようになった。
- 2006年 NTTドコモ、BlackBerryサービスを開始
- 2007年 BlackBerry日本語対応版
- 2009年 NTTドコモ BlackBerry Bold 9000発売、国産初のBlackBerry機
BlackBerryは、2000年代後半から日本に参入したが、企業向けにはWindows Mobile系、個人向けにはiPhoneに勝てなかった。
Microsoft Windows Mobile
- 2000年 Pocket PC 2000
- 2003年 Windows Mobile 2003
- 2005年 Windows Mobile 5.0
- 2009年 Windows Mobile 6.5
マイクロソフトは、Symbian OSやBlackBerryに遅れてスマートフォン市場に参入した。パソコンと同様に、ハードウェアを販売するのではなく、WindowsやOfficeなどのソフトウェアを(主にメーカーにプレインストールのライセンスとして)販売する方式をとっている。
なお、マイクロソフトは、マイクロソフトOS搭載のスマートフォンのことをWindows phoneといっている。
- 2005年 HP「iPAQ 6500」
iPAQは、HPおよび同社と合併前のコンパックが開発、販売しているWindows Mobileを搭載PDAである。これにセルラー方式のハードウェアを追加して携帯電話機能を追加してスマートフォンにした。
- 2005年 「W-ZERO3」
ウィルコムとシャープ、マイクロソフトの3社の共同開発によるスマートフォン。ウィルコムのPHS端末機。OSはWindows Mobile 5.0 日本語版。完成レベルのPDAであるとともに、日本でのスマートフォンのさきがけといえる。
2000年代後半 スマートフォン国内市場の始動
2000年代中頃までに、西欧ではノキアのSymbian OS、米国ではRIMのBlackBerryが高いシェアをもっていた。ところが、日本では多機能携帯電話が普及していたため、スマートフォン自体への関心が低く、シェアを問題にするほどではなかった。
それが、2008年にiPhone 3GSの発表とソフトバンクの積極的なキャンペーンにより関心が高まり、2009年には爆発的な普及が始まった。さらに2010年にはAndroid搭載機が多く発表され、スマートフォンの国内市場が確立した。なお、企業向けでは、Windowsのシステムとの親和性の観点からWindows Mobileへの関心が高い。
このような動きのなかで、Symbian OSやBlackBerryは振るわず、2008年にはノキアは日本市場から撤退した。
iOS(iPhone OS):Apple
- 2007年 iPhone
- 2008年 iPhone 3GS
- 2010年 iPhone 4
- 2011年 iPhone 4.s, スティーブ・ジョブズ死去
iPhoneは、Appleの発表したスマートフォンである。そのOSをiPhone OSという。iPhoneは、タッチパネルにボタンが1つだけというシンプル性や、アプリケーションソフトをダウンロードし自分仕様にカスタマイズできることが人気を呼び、日本でのスマートフォンへの関心を高めた。
第3世代携帯電話に対応したiPhone 3GSから、日本ではソフトバンクモバイルがキャリアになり、積極的なプロモーションを行ったので、国内でのスマートフォン熱が高まった。
そして、2010年には大幅なモデルチェンジを行ない、OSの名称をiOSと変更した。このOSは、スマートフォンだけでなくデジタルメディアプレーヤーのiPod touch、タブレットコンピュータのiPadに搭載されている。
2011年に、iPhone 4.sが発表されると同時に、スティーブ・ジョブズが死去した。ジョブスはiPadやiPhpneの開発を指導してAppleの業績を高め、2010年には時価総額がMicrosoftを抜き、2011年には世界トップになった。
Android:Google
- 2008年 Google、「Android」
- 2008年 HTC(台湾) HTC Dream(米国市場名T-mobile G1)
最初のAndroidを搭載スマートフォン
- 2010年 国産Android搭載スマートフォン続出
- 2010年 Nexus One(Google自社ブランドのスマートフォン初号機)
日本では2011年から発売
Googleは、アンドロイド社を買収し、スマートフォンOS「Android」をオープンソースソフトウェアとして公開した。カーネルだけでなくライブラリの多くが、無料で利用でき、改変も自由である。Googleも含む多数のキャリアやメーカーが参加した規格団体OHA(Open Handset Alliance)が管理している。
ヒューマンインタフェースやミドルウエアなどがそろっているだけでなく、OSSなので自由にカスタマイズできること、カーナビや電子ブックなど他の情報機器にも適用しやすいOSであることなどから、急速に採用が広まっている。
Windows Phone 7:Microsoft
- 2010年:Windows Phone 7
- 2011年:Windows Phone 7.5
- 2011年:KDDI、最初の7.5搭載スマートフォン「Windows Phone IS12T」発売
2010年、Microsoftは以前のOSであるWindows Mobileシリーズを大幅に変更したWindows Phone 7を発表した。動画や音楽再生の本格サポートやXbox LIVEで配信されているゲームのプレイにも対応するなど、新たな要素が取り込まれた。
従来のスマートフォンが画面にアプリケーションのアイコンが並んでいるのに対して、7.5では、Windows Phoneはタイル状の大きなボタンで表現した「ライブタイル」によりユーザが画面を階層的にカスタマイズできるの特徴。
2010年前後 スマートフォン市場の激変
日本では、従来の多機能携帯電話(ヒューチャフォン)が普及していたが、次第にスマートフォンに乗り換えるようになった。ヒューチャフォンあるいはスマートフォンを持っている人のうち、スマートフォンを持っている人の割合は、2010年ではわずか5%未満だったのが、2011年では20%を超え、2015年では過半数になり、2021年には90%を超えるようになった。
世界でも、iOSとAndroidの出現により、スマートフォン市場に大きな変化が生じた。2009年から2011年の2年間で、下図のようにOSもメーカーも急激なシェア変動があった。
スマートフォン世界市場規模は、2009年から2011年の間に1.7億台から4.7億台に増大した。その増加分はほとんど iOS とAndroidであり、この2つののシェアは28%から65%に増大した。
旧型スマートフォンの最大メーカーのノキアは、OSにSymbianを採用しており、2009年では47%のシェアをもっていたが、2011年には18%に激減、その後スマートフォン市場から去ってしまった。
日本でも iOS とAndroid の寡占になった。Android がOSSであるのに対して iOS は Apple の iPhone にしか搭載できない。Apple のPC Mac のシェアは低い。そのため、2009年 では Android が多かった。しかし、iPhone はバージョンのたびに高機能化、多機能化を進め、それが多機能携帯電話に慣れていた日本市場に受けたのだろうか、すぐに iOS が大きなシェアを獲得している。
メーカーでは、これまで国産メーカーの多機能携帯電話が普及していた。スマートフォン出現はまさに「黒船の到来だったが、当初は国産メーカーが対応し、一時的には90%のシェアを確保した。
しかし、AppleとSumsong の猛攻に敗れ、2011年には70%近くに下がり、2012年には主なメーカーは、ソニー、シャープ。富士通になり全体でも40%弱になってしまった。
2010年代初頭~現在
スマートフォンOS
現在、世界でも日本でも iOS とAndroid の寡占状態にある。しかし、世界では約3:7で Android が多いのに、日本では約7:3で逆になっている。
世界全体で Android のシェアが大きい理由
世界でAndroidが多いのは、OSSになっており、メーカーが参加しやすく、低機能低価格機種から高機能高価格機種まで提供されているので選択肢が豊富だからである。
欧米では、旧型のスマートフォンが普及していた。新型に移行するにあたって、高機能を重視する層、低価格を重視する層など利用者ニーズが分散しており、選択肢が豊富な Android が有利だった。
スマートフォンが急速に普及したのは、当時発展途上にあった国・地域であった。そこでは電話網の整備が不十分で固定電話すら使えない状態にあった。スマートフォンなら安価な無線局を設置するだけで電話ができるし、インターネットも利用できる。
その地域の人にとって、スマートフォンは必要最小限の機能・性能があればよい。当時の韓国や中国は、安価なスマートフォンを開発、無線局などの環境整備支援とセットにして提供した。また、経済発展に伴い、より高機能の機種を求める層が多くなってきた。
このような環境に呼応して、韓国・中国メーカーは多様な価格設定の機種を提供している。それで、世界では、Android が多く、韓国・中国メーカーが高成長したのである。
日本で iOS(iPhone)のシェアが高い理由
日本でも2010年頃は、一時的に Android が多かった。
メーカー 機種
HTC(台湾) Desire
ソニー・エリクソン(英国)Xperia
シャープ GALAPAGOS
サムソン電子(韓国) GALAXY
富士通東芝MC REGZA Phone
しかし、急速に Apple のシェアが拡大している。
世界市場の観点からは、日本市場は特異だといえる。その理由を列挙する。
- 日本人好み
日本では特にハイエンドiPhoneの人気が高い。おそらく国産多機能携帯電話が日本だけで好評だったのと同じ理由だろう。多機能・高性能だけでなく、美しい外装、独自だが統一されたインタフェースなどが人気を得ていると思われる。
- Appleの広告戦略
Appleは、iOSデバイスの高級感と信頼性を強調し、ブランドイメージの向上、ステータスシンボルとしての価値の向上を訴求している。
- キャリアの協調
人気は人気を呼ぶ。日本の携帯キャリアにとって、Andoroid より iPhone ほうが販売しやすいので、積極的になりがちである。一方、Android は選択肢が広すぎるので、訴求点を絞り込むことが難しい。
- 販売制度
iPhoneは高価だが、携帯キャリアによる割賦販売や補助金制度があり、比較的手軽に購入できる。
スマートフォンメーカー
世界では Samsung(韓国)を Apple(米国)が急追している。近年は中国メーカー(Huawei、Xiaomi、OPPO)の伸びが顕著である。中国市場は巨大で、中国国内でのシェアが世界シェアに反映するようになっている。
日本では、2020年頃には国産メーカーが百花繚乱であったが、急速に変化し、2012年にはApple が圧倒的なシェアをのばし過半数のシェアをもつようになった。国産メーカーは、ソニー、シャープ(当時)、富士通の3社になり、その後次第にシェアが低下している。Samsung のシェアは比較的少ないが、近年増加してきた、Google も急速に増加してきた。
留意すべきことは、機種とメーカーは必ずしも一致しないことである。Apple 以外のメーカーは、自社ブランドの Android 機が主力製品だが、iPhone の受託生産もしていることが多い。
また、メーカーの国籍と実際の生産国も違う(海外生産)。中国メーカーはほとんどが自国生産であるが、
Apple(米国)は、多くの比率で台湾、インドで生産、Samsung(韓国)は韓国だけでなくベトナムでも生産、ソニー(日本)はタイ、楽天モバイルのRakuten Miniは、全量を中国で生産している。
主なメーカー(国籍)ブランド名
- Apple(米国)iPhone
初代iPhoneを2007年に発表して以来、頻繁に新版を発表。
多機能・高性能だけでなく、美しい外装、高度なカメラ機能などで人気を得ている。
日本では圧倒的なシェアを持ち、世界でも Samsung を急追している。
iOS は iPhone 以外では使えないし、逆に iPhone のOSは iOS に限定されている。
Apple は iPhone の一部を自社で製造しているが、全体の生産はインドをはじめ各国にOEM発注している。
- Google(米国)Google Pixel
Android は、Googleが開発したスマートフォン用OSでOSSになっている。そのため、多くのメーカーが独自のブランド名でAndroid機を販売している。
しかし、Googleの自社ブランド製品もある。
2010年 Google Nexus
2013年 Google Pixel
これらはGoogleブランドではあるが、自社生産は行わず全てOEMで海外に発注している。
世界でのシェアは低いが、日本では2020年代になると急速にシェアを伸ばした。
- Samsung(韓国)Galaxy
世界最大の総合家電・電子部品・電子製品メーカー
スマートフォンでも世界のトップメーカーである。
1988年 最初の携帯電話 SH-100 発表
2010年、最初のAndroid機 Galaxy Sシリーズ
2011年 Galaxy Note 高性能機
2016年 Galaxy Aシリーズ 幅広い価格帯、圧倒的に多い出荷台数
- Huaway(中国)Huaway
1987年 設立。当初は電話デジタル交換機の輸入販売
2014年 Leicaとスマートフォン向けカメラの共同開発
(現在はソニーとイメージセンサの共同開発)
高いカメラ性能が有名だった。
2010年後半では世界第3位のシェアを維持
2018年以降、米中半導体摩擦の一環としてHuawayへの制裁強化
Huawayが中国政府と密接な関係があるとの理由
輸出規制。Googleアプリからの排除など
米国に同調する国(日欧)も部分的に同調
その結果、2010年代末期には急激にシェア減少
- OPPO(中国)OPPO
2004年創業。大手通信機器、ソフトウェアメーカーだったが現在はスマートフォン事業のみ
すべて自社生産で、利用者ニーズへの即応、実店舗販売を重視、地方都市でのシェアを伸ばした。
当初は低価格機が主だったが、次第に広範囲のシリーズになっている。
2018年、SIMフリースマートフォンとして日本上陸。
2019年、おサイフケータイなど日本向け機能を搭載した「OPPO Reno A」を発売
2021年 OPPO Reno3 A は一番売れたSIMフリースマートフォンになった。
- Xiaomi(中国)Xiaomi
2010年 スマートフォンメーカーとして設立
2011年 1号機 MI-One発売。
頻繁なモデルチェンジをせず、大量生産によりハイエンドで価格を抑えるという戦略をとった。
Huaweiのシェア低下を埋める勢いで成長している。
日本では、2020年にSIMフリースマホを発表し、主にauと各MVNOで販売している。
- 富士通(日本)arrows
開発・製造・品質管理にいたるまで全て日本国内で行っているのが特徴、シェアは次第に下がり、2023年にはスマートフォン事業から撤退した。
- ソニー(日本)Xperia
2001年 スウェーデンのエリクソンとの合弁企業(ソニー・エリクソン)設立
スマートフォン業界に本格的進出
2012年 合弁解消、ソニーの完全子会社となりソニーモバイルコミュニケーションズとなる。
- シャープ(台湾)AQUOS
AQUOS はTVなど液晶製品のブランド名。スマートフォンにも使用。
高精細で非常に美しいディスプレイ性能が特徴
2016年 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収。その後もシャープの名称は残る。
ホンハイはFoxconn(台湾)の子会社。FoxconnはiPhoneの生産も請け負う
国産スマートフォンメーカーの縮小・撤退
2013年 少数メーカーへの移行
2010年頃までは、国内の通信機器メーカーはヒューチャフォンでは大きなプレイヤーであったが、スマートフォンの波には対応できず、個人ユーザ向けスマートフォン市場から撤退してしまった。
その主な原因は、自社製品販売量の鈍化である。ただし、従来のヒューチャフォンは継続したメーカーが多い。
- 東芝
2007年 東芝から初めて発売されたスマートフォンは、ソフトバンクモバイルから発売された。
2009年 国内外スマートフォン及び au 向けに資源集中。
2010年 auにスマートフォン端末納入
2010年 富士通と携帯電話事業を統合、富士通東芝になる。
東芝ブランド(T-01C)発売。その後の機種は REGZA Phone(富士通レグザ=富士通製)となった。
2013年 T-02Dが生産終了により、「T」を冠する携帯電話は市場から姿を消した。
- NEC
2010年 NECカシオモバイルコミュニケーションズ設立(NECが割、カシオが2割、日立が1割)
2013年 スマートフォン事業からの撤退発表。フューチャフォンは継続
- パナソニック
2003年 携帯電話端末事業に特化したパナソニック モバイルコミュニケーションズ発足。
2011年 スマートフォン事業参入。ドコモとソフトバンクから販売
2013年 基地局事業をパナソニック システムネットワークスへ移管
パナソニック モバイルコミュニケーションズはパナソニックへ吸収合併
2013年 個人向けスマートフォンの新規開発の休止を発表。スマートフォン事業から事実上の撤退
2020年代前半 大手メーカーの撤退
2013年に生き延びたメーカーも、次第に体力が弱ってきた。その主な原因を列挙する
- 市場の飽和
日本だけでなく、これまで市場の伸びを支えてきた中国などでも停滞状態になっれきた。。
- 値引規制
2019年の電気通信事業法の改正により、通信契約と端末の販売を明確に分離することが義務付けられた。端末の値引きも2万円に制限された。メーカーにとっても利益が大きいハイエンドモデルの需要がミドル・ローエンドモデルへと変化した。
- 半導体不足
2020年にコロナ禍に入って以降、複数の要因から深刻な半導体不足が発生した。特に相対的に規模が小さい国産メーカーは、価格高騰の影響を強く受けた。
- 円安による価格高騰
2022年中頃からの急速な円安は、輸入比率が高いスマートフォンメーカーを直撃した。また、スマートフォンの価格高騰は、販売を一層落ち込ませる要因になった。
スマートフォンの大手メーカー、京セラと富士通が事業撤退を表明した。
- 京セラ
1959年 京都セラミツク株式会社設立。
1984年 第二電電(DDI)設立
2011年 DIGNOシリーズの初機種 DIGNO ISW11 発売
2018年 DIGNO J 初心者・シニア向け「かんたんビギナーホーム画面」
Y!mobile から「かんたんスマホ」ブランドで発売
2013年 TORQUEシリーズ初号機 TORQUE 発売
耐久性、耐衝撃性、耐水性などのタフネスが特徴
TORQUE G03 米国国防総省の耐久試験「MIL - STD - 810G」準拠
TORQUE 5G カメラ機能の充実(ナイトモード、マルチカメラなど)
このように、特色のある評価の高いスマートフォンを提供してきた。
docomo, au(KDDI), Softbank, Y!mobile から販売されている。
2023年 2025年3月末を目途に個人向けスマートフォン・携帯電話事業からの撤退を表明
- FCNT(富士通コネクテッドテクノロジーズ)
2016年 富士通がPC、携帯電話事業を分社、「富士通コネクテッドテクノロジーズ株式会社」設立
2021年 ポラリスグループの100%出資会社「FCNT株式会社」となり、富士通との資本関係は解消
2023年 FCNT は民事再生法の適用申請
スマートフォンを含む携帯電話事業をレノボグループ(中国)に譲渡契約締結
富士通のスマートフォンには
arrows:富士通スマートフォンのブランド名、多くのキャリアから販売されている。
らくらくホン:docomoのブランド名だが富士通製品。シニア向けに人気がある。
があるが、その生産は FCNT が行っていた。
すでに富士通は FCNT との資本関係はなく、スマートフォン業務はレノボグループに譲渡されるので、富士通は個人向けスマートフォン事業から撤退したことになる。
残る2社はソニーとシャープ
2014年にソニーはモバイル事業が深刻な事態となり、大規模な事業縮小をした経験がある。現在はカメラを軸としたハイエンドモデルに集中、確実な利益を出すことに重点を置いているが、大規模投資には消極的なようで、シェアは次第に低下している。
シャープは、2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ったが、シャープの社名は残り、AQUOS ブランドでのスマートフォンは、海外拠点も多いが日本の工場で生産されている。
部材調達や製造などでの支援を得て、他の国内メーカーと比べれば規模の面で強みがある。京セラやFCNTの撤退の空白を埋めることが予想される。
日本の携帯キャリア
- MNO(移動体通信事業者)
国から電波の免許割当てを受け、基地局やアンテナを自ら敷設し携帯電話のサービスを提供する(docomo, KDDI, softbankなど)
- MVNO(仮想移動体通信事業者)
MNOからネットワークを借りて携帯電話のサービスを提供する
- 1991年 NTTドコモ
日本電信電話公社の民営化で分離独立し、携帯電話事業を提供開始
- 1999年 KDDI(au)
KDDIがauブランドで携帯電話事業を開始
- 2006年 Softbank
ボーダフォン・ジャパンを買収し携帯電話事業を開始
- 2019年 楽天モバイルの参入
抱え込み規制
上表のように、各キャリアのシェア順位は、参入時期の順位と一致しており、ほぼ安定している。
これは、各キャリアが乗換えを制限して抱え込みをしているからで、公正な競争を妨げているからだとされ、いくつかの規制が行われてきた。各キャリアもそれに従ってはいるものの、それによるシェア変化への影響は限定的である。
- 2006年/2023年 番号ポータビリティ
MNP(Mobile Number Portability)という。キャリアを乗り換え端末を変更しても、同じ番号が使えるという制度である。この制度が始まった2006年では乗換元と乗換先の2か所で手続きする必要があったが、2023年には、乗換先携帯会社のWebサイトで申込むだけで無料でMNP手続きができるようになった。
- 2008年 端末割引の規制
端末料金と通信料金がセットになっていたため、目先の端末料金を下げて契約数を伸ばし、通信料金で利益を得るケースが主流だった。なかには「1円スマホ」すら出現した。
それを規制するために、端末料金と通信料金の分離をして、携帯端末の割引上限を原則4万円とすることになった。
- 2015年 SIMフリー
従来のSIMカードはキャリアごとに設定されており、端末に固定されていたので、キャリアを変更するには端末を買い替える必要があった。それに対して、SIMロックの解除(SIMフリー)を義務化した。どのキャリアのSIMカードでも装着でき、利用者はキャリアに関係なく端末を選べるし、キャリアを変更しても手持ちの端末が利用できるようになった。
- 2020年 中途解約違約金の規制
従来は「2年縛り」として、2年契約を途中解約できず、解約するには多大な違約金が要求された。それを違約金を1000円以下、通信契約とセットの端末値引きを2万円までとすることになった。
通信回線の世代
4Gや5Gなどは、国際通信連合による通信の国際規格(IMT-2020など)の通称。スマートフォンはいずれかの通信規格に準拠しており「4Gスマホ」「5Gスマホ」と呼ばれることもある。
- 1G:1980年代 初期のアナログ携帯電話
自動車電話やショルダーフォンなどに採用された。
国、地域ごとに独自の規格があった。
HiCAP NTT
TACS Motorola
アナログ通信で2000年頃にはサービス終了
- 2G:1990年代 デジタル方式
初期の携帯電話に用いられた。まだ国際規格ではない。
日本ではPDC規格があり、下り最大64kbps程度を実現
1993年 NTTドコモ mova
1999年、NTTドコモ iMode
など、メールやインターネットを携帯電話でも使えるようになった。
- 3G:2000年代 フィーチャーフォンでの通信規格
2000年、国際通信連合は「IMT-2000」を策定。
これに準拠した通信規格を3Gという。下り速度最大3.6Mbps。
2001年 NTTドコモ FOMA
2002年 J-フォン(現Softbank)Vodafone Global Standard
2002年 KDDI(au) CDMA 1X
などのサービス開始
2003年 ハイスピードサービス 下り速度最大14Mbps
これによるハイスペックのフィーチャーフォン全盛時代になる。
4G(スマートフォン)の普及により、各キャリアがサービス終了(予定)
2022年 au、2024年 softbank, 2026年 docomo
- 4G(LTE):2010年代 スマートフォンでの通信規格
2012年 国際通信連合はLTEを「IMT-Advanced」として承認。4Gとしてよいことになった。
LTE(Long Term Evolution)とは、従来の3Gを長期的に進化させたもので、3.9Gともいわれた。
2010年から出現したスマートフォンを有効に活用するには、3Gでは限界があり、各キャリアが独自に検討したものを規格化したものだともいえる。
特に「4G」としての規格はなく、IMT-Advanced を4Gとしているようだ。
下り最大通信速度はlteで300Mbps、LTE-Advancedでは3Gbpsに増加した。
一般にフィーチャーフォンは3G、スマートフォンは4Gになった。
- 5G:2020年代 スマートフォン通信規格の主流に
国際通信連合は、2015年にIMT-2020標準仕様を発行、2020年に規格化した。これを5Gという。
日本では、ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルが2020年から5Gの提供を開始した。
4G 5G
下り通信速度 最大約100Mbps 理論上最大100Gbps
通信遅延 約50ms 1ms未満
接続可能端末数 約1万台/km2 100万台/km2
通信エリア 広範囲をカバー 狭いがビル内や地下でも可能
4Gと比較して格段の向上があり、新規発売のスマートフォンは5G対応が多いが、4G機は広く普及しており、消滅するにはかなりの時間がかかるといわれている。
(注)BWA(Broadband Wireless Access)
上図にはBWAがあるが、これは山間部や離島など、有線の高速回線設置が困難な地域に、国や自治体が設置した無線ネットワークである。通信速度は地域により異なり、4G。5Gが混在している。
本ページでの対象とは直接の関係が低いので省略する。
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