経団連(十倉雅和会長)の小堀秀毅副会長、泉澤清次副会長、内田高史審議員会副議長は11月22日、武藤容治経済産業大臣を訪問し、「エネルギー基本計画の見直しに向けた提言」(10月15日公表)および「AZEC構想の推進に関する提言」(7月16日公表)を建議した。
泉澤副会長は、安価で安定したクリーンエネルギーの確保が見通せなければ、国内での設備投資を判断できず、産業空洞化にもつながりかねないと指摘。エネルギー政策、気候政策、産業政策を戦略的に組み合わせ、持続的成長を実現すべきと説明した。特に、再生可能エネルギーの主力電源化に加え、安全性が確認された原子力の活用が不可欠と強調。立地地域の理解を得たうえでの再稼働の加速や、リプレース・新増設に向けた事業環境整備を求めた。
内田副議長は、化石燃料・火力発電について、戦略的なトランジションの重要性と燃料安定調達の必要性を指摘。現実的なトランジションに対する国際社会の理解を促進するよう要望した。エネルギーミックスに関しては、将来の不確実性を踏まえ、次期エネルギー基本計画で2040年度の将来像を複数シナリオの形で示すべきと説明した。
小堀副会長は、NDC(Nationally Determined Contribution=国が決定する貢献)(注1)の35年度以降の目標について発言。イノベーションが効果を発揮する将来に加速度的に削減が進むと見込むことが理にかなうとも言えるとしつつ、わが国の野心を示す観点からは50年ネットゼロに向けた直線的目標が望ましいと説明。そのうえで、実現性の不透明なイノベーション等も織り込んだ高い目標を目指すに当たっては、技術の普及状況等を踏まえた柔軟な施策展開が必要と強調した。あわせて、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)に対する経済界の期待を表明。10月に開催された第2回首脳会合の成果文書に経団連提言の内容が多く盛り込まれたことを評価しつつ、GX(グリーントランスフォーメーション)製品市場(注2)の創造等に向けた一層の取り組みを要望した。
これらに対し武藤大臣は、わが国の産業競争力強化、経済成長や賃上げ実現はエネルギーの安定供給に大きく依存していると指摘。脱炭素電源の不足が、データセンター、半導体、基幹産業等への成長投資を妨げることはあってはならないと強調した。そのうえで、地域と共生した再エネの最大限の導入と技術開発、原子力発電所の再稼働加速、次世代革新炉の開発・建設、現実的なトランジションに向けた燃料の安定調達確保等に取り組むと説明した。
エネルギーミックスについては、将来のエネルギー需給や技術革新に関する不確実性が高まっていることも踏まえて検討すると説明。NDCに関しても、経済の減退や製造業の海外移転が生じないよう、年内の案提示に向けてしっかり検討すると述べた。
AZECを巡っては、第2回首脳会合に出席し、各国の大きな期待を実感したと紹介。ルール形成に向けて政府間で対話を重ねる方針としたうえで、経団連にもアジアの産業界と議論を積み上げることを期待すると語った。
(注1)パリ協定締約国が国連に提出する温室効果ガスの排出削減目標
(注2)脱炭素投資によって生み出された製品・サービスの温室効果ガス排出削減の成果が価値評価される市場
【環境エネルギー本部】