コラム
佐々木竹見・王者の眼差し

佐々木竹見 プロフィール写真

佐々木竹見(ささき たけみ)

元川崎競馬所属騎手。“鉄人”の愛称で知られる国内最多勝記録・7,153勝をあげた日本を代表する名手。
現在は地方競馬全国協会の参与として騎手候補生である後進の指導を行うほか、競馬のPRのために各地のイベントなどにも出演している。

令和7年度第2回開催 エンプレス杯JpnII 他

 5月12~16日の開催でメインとして行われたのは、上半期のダート牝馬の頂点に位置づけられるエンプレス杯JpnII。デビューから無傷の連勝を続けてきたオーサムリザルトが断然人気に支持されましたが、これをアタマ差で退けたのがテンカジョウで、ダートグレード3勝目としました。
 この日の最終レースに行われた恒例の川崎ジョッキーズカップ第2戦は、山崎誠士騎手のメイワノワが直線での追い比べから抜け出しました。
 15日のメインとして行われたオーサカナ! オーサカナ! オーサカナ! 特別は、直線を向いたところで馬群を割って抜け出したメンタイマヨが勝利。鞍上の新原周馬騎手は、この開催6勝を挙げる活躍でした。
 今回はこの3レースについて、佐々木竹見さんにうかがいました。(聞き手・構成/斎藤修)

2025年5月14日(水)エンプレス杯

優勝馬テンカジョウ


 人気のオーサムリザルトはスタート後、外の3番手で、まずはいい位置につけました。ただ1周目のスタンド前では、内から動いてきたアンモシエラをそのまま行かせて4番手に下げてしまいました。ここはアンモシエラを行かせず、自分から2番手を取りにいったほうがよかったと思います。すぐ前にはローリエフレイバーもいましたから、動きにくかったのかもしれません。そのあと1コーナーを回るあたりで内に入れたところ、向正面ではテンカジョウが外から一気に仕掛けてきて、さらにネバーモアも続いてきたことで外に持ち出せず、オーサムリザルトは動くに動けませんでした。直線を向いてようやく外に持ち出して、ゴール前ではテンカジョウを交わせるかと思いましたが、テンカジョウがよく粘りました。
 勝ったテンカジョウは、向正面で早めに仕掛けたのが正解でした。
 オーサムリザルトは距離が長くてもバテる馬ではないですから、スタンド前でアンデスビエントと一緒に2番手に行っていれば、ほかの馬に邪魔されずに早めに先頭に立っていたのではないでしょうか。向正面では次から次へと外からかぶせられたことで、幾重にもロスが重なって、仕掛けるタイミングがなくなってしまいました。競馬ではこういうこともあります。

2025年5月14日(水)2025川崎ジョッキーズカップ第2戦

優勝馬メイワノワ

 勝った山崎騎手のメイワノワは、大外14番枠から仕掛けることもなく4番手外のいい位置につけることができました。3コーナー手前では3番手に上がって、あとは前の2頭をとらえるだけという競馬で、直線で抜け出しました。川崎コースは、外を追走するか、内に入れるか、難しいことがありますが、メイワノワは今回外を楽に追走できたことで、6番人気でも勝利につながりました。
 1番人気の新原騎手(リオンポラリス)はゴール前で一気に差を詰めましたが、1馬身届きませんでした。勝ったメイワノワの直後のいい位置につけていましたが、向正面からは馬群の中へ中へと入っていったことで苦しい競馬になりました。メイワノワの外に出していればもう少し楽に競馬ができたかもしれません。揉まれていた中でも4コーナーでうまく外に出せたことで、ゴール前での伸びにつながりました。ここでは2着でしたが、新原騎手は今開催いい競馬が目立ちました。
 3着の田中涼騎手(コミックガール)も直線馬群の中から伸びてきました(3着)。結果的に、前を見ながら3番手集団につけていた3頭の決着になりました。

2025年5月15日(木)オーサカナ! オーサカナ! オーサカナ! 特別

優勝馬メンタイマヨ

 勝ったメンタイマヨの新原騎手は、ここは内枠(4番)でしたからラチ沿いの3、4番手、絶好位につけました。この位置も、4コーナーで馬群をさばくことができれば川崎コースではいい位置取りです。
 前半ペースが落ち着いていましたが、後方につけていたグットディールの櫻井騎手が向正面で仕掛けていってペースが上がりました。ここでレースが流れたことも、内の3番手にいたメンタイマヨにはよかったと思います。4コーナー手前では前がカベになって狭くなる場面もあり、直線を向いたところで新原騎手は一旦は馬の頭を内に向けましたが、前3頭の外、木間塚騎手(セルフメイド)が一杯になって下がっていったので、外に切り替えてそこから抜けてくることができました。
 道中は2番手につけていた1番人気の矢野騎手(ニシノカシミヤ)が直線を向いて先頭に立って、完全な勝ちパターンでしたが、直線ではメンタイマヨのほうが伸びて差し切りました。新原騎手は、追ってからの姿勢もしっかりしていて、いい騎乗だったと思います。