画期的な新型ロボットと言われるものは数多く世に出てきましたが、実際に「あれにも使えるこれにも使える」と想像を掻き立てられるものはなかなか少ないですよね。犬や人の形をしたものがバランス良く歩いたり走る姿に感動はあれど、機能という面ではまだまだ人型ロボットや犬型ロボットは実用的にはなっていないのが事実。
昆虫や鳥の形を真似たロボットや、バルーン構造のロボットが発明されているのは目的に合わせてフレキシブルかつ性能の高いマシーンを作ることが求められているからです。今回、スタンフォード大学とカリフォルニア大学の研究者たちが科学誌「Science Robotics」に発表したバルーン式ロボットもフレキシブルさと実用性で注目を集めています。
研究者たちによるこちらのプレゼン動画、英語ですが「ツルのように伸びて動くロボット」の活躍の姿がたくさん詰まっていて、映像だけでもう感動してしまいます。
「伸びることで動く」デザイン
構造はまさにバルーン。内側に伸びる先のバルーン素材が詰まっているので「内側が外に出てくることで伸びている」という状態のようです。
内側から双方向に素材が広がることで直進します。
バルーン自体も、それぞれのサイドが独立して膨らんで厚みを持つことができるそうです。片側の膜だけ膨らむことでそれとは逆の方向にカーブすることができます。
「菌糸体やニューロン、ツルなどの植物は自身が動くのではなく伸びることによって環境の中を移動する」と論文の冒頭で説明していますが、この「伸びることで移動する」からヒントを得て作られたそうです。
自由な動き
内側が外に出てくることで、伸び、身体が成長することで先へ進む…これだけ聞くとエイリアンしか想像できませんが、ビデオでの御大の活躍の姿を見ると頼もしい気持ちでいっぱいになります。ビデオの最初からドッキリ。なんとクギの間をくぐり抜けるシーンからです。「何この子そんなに強いの」と最初っから感心せざるを得ません。
狭いところに潜り込んで、重い物を持ち上げる力もあります。
上向きにも進めますし、先端にカメラを付けてロボットが侵入した先を確認しながら操作もできます。
これなら人や車輪式のロボット、ドローンが入れない床下や入り組んだ配管スペースなどにも入って中を確認することができます。災害時に生存者を探すのにも役立ちそうです。
バルーンの中にアンテナとなる素材を入れることで非常時のアンテナとしても上に伸ばすことができます。
そして伸びて先に進むということは、ネバネバしたところも関係なく侵入していくことができるわけです。
素材自体は薄いのでほんの少しでもすき間があればそこに食い込んで先に進むことも…いよいよ映画に出てくるエイリアンのようなタフさですよね。しかし自然災害時などを考えると非常に頼もしいです。
関節などがあるわけでも無いので、スーッと直線で障害物をくぐり抜けた後で上に向かって90度方向転換をして進み、目的地で180度転換して覗き込む、という動きもできます。うーん、自由です。
さらに動きも早いです。動画では燃える火をパァーン! と貫いてなんと火を消しております。何なのこの子…。
ビデオでは「一番の課題はできる事が本当に多いこと」と興奮した表情で語っておりますが、納得です。具体的な応用方法が世に出るのが待ち遠しいですね。
Images: Stanford / YouTube, Science Robotics
Source: Science Robotics, Stanford University / YouTube
Andrew Liszewski - Gizmodo SPLOID[原文]
(塚本 紺)