60年飼い続けている京都大学にまず拍手です。
1954年から京都大学では暗闇でショウジョウバエを飼い続けています。暗闇で子孫を繁栄させてきた通称「暗黒バエ」と普通のハエを交配した結果、研究者チームは完全な暗闇で育ったショウジョウバエがどのように遺伝適応を行なっているかがわかってきたようです。驚くべきことに、暗黒バエは普通のハエと見かけはほとんど変わらないそう。1,500世代以上暗闇で育ったハエは、暗闇でも周りを感知しやすいように、少しだけ体毛が長くなったそうです。でもハエの研究者でさえ気づかないほど、本当にわずかな長さの差だったとか。おそらく京都大学の研究チームにしかわからないでしょうね。彼らはGenes Genomes Geneticsというジャーナルにこの研究の結果を発表しています。
京都大学チームはまず、暗黒バエと普通のハエを交配しました。そして、その暗黒と普通のミックスされたハエを、もともと暗黒育ちのハエとは分けて、暗闇で飼育し始めました。こうして「暗黒バエ」、「普通のハエ」、「ミックスバエ」がそれぞれどんな遺伝子を持っているかを調べました。
結果、研究者チームは暗黒バエと普通のハエで違いの見られる遺伝子を約84個発見。外見の違いはないものの、暗黒バエの遺伝子はシグナル伝達力と感覚能力が高まっているとのこと。簡単に言うと、暗黒バエは匂いを嗅ぐのも、出すのも両方に敏感になっているということです。暗闇では嗅覚が頼りになるので、より多くのフェロモンを出し、そしてより敏感にフェロモンを嗅ぐ能力が身につくということですね。暗闇では匂いによってオスとメスが精子と卵子を作り交尾するため、普通の交尾のリズムとは若干変わってくるという可能性もあるそうです。
研究チームは、暗黒バエがどのような適応性を身につけ、どのような適応性を失うのかを現在も研究中なんだそうです。現在では、1,000世代以上にわたって暗闇で飼育されたにもかかわらず、暗黒バエは約24時間周期の「概日リズム」を保持していて、光を見るとちゃんと光へ向かっていくという反応を見せるということがわかっています。どんなに暗闇で長い時間過ごしても、概日リズムは深く遺伝子に刻まれているんですね。そしてやはり、状況や環境に応じて遺伝子や能力が変わってくるということも今回の実験でわかりました。60年間しっかりと暗黒バエを飼育し続けている京都大学の皆さんの根気よさも驚きですけどね。
image by Francisco Romero Ferrero
source: Genes Genomes Genetics , Nature
Esther Inglis-Arkell - Gizmodo US[原文]
(リョウコ)