「飛んでくる矢を掴むことは物理的に不可能だ」
という科学検証番組は一体なんだったのか…
史上類を見ない弓の早撃ち名人ラース・アンダーソンの最新映像が公開になり、その物理法則を破る超人技に世界中の目が釘付けです。
伝説の弓の名手といえばアルテミス、ウィリアム・テル、源為朝。古書や壁画でしか見たことないですけど、なるほど、こういう目と動き…いやすごいわ。動画全訳でどうぞ。
「Lars Andersen: a new level of archery」全訳
何百年も前の時代、世界には弓の名手がおり、想像を絶する技をもっていた。
長く忘れ去られていたこの古の技術の再現に挑む男がいる。
デンマークの名手ラース・アンダーソンだ。
ラースが使うのは、弓矢を片手に複数構えての連射技。これは古代、広く使われていたテクニックだ。シリアの壁画を見ると、少なくとも5000年前から使われていた技法とわかる。アラブのアーチェリー史書には、
「ベストな射法。威力と精度でこれに勝るものはない」(0:32-)
とある。この技法を応用し、ラースは連射世界記録を次々と打ち立てていった。
そのスピードは2位の射手集団の実に2倍を上回る。
なぜ古代の弓術は忘れ去られたのか?
ラースが弓を始めたのは、約10年前のことだ。最初はクイーバーを背負い、そこに何本も矢を立てて野山を駆け回っていた。
だが、これだとジャンプ着地のとき矢が全部地面に落ちるし、木の枝にも引っかかる。実用にはまったく不向きだった。
でもバック・クイーバー(背中に背負う矢入れ)はハリウッド映画でもお馴染みなら、世界中で今も使われている。なぜなのか? 現代の射手は矢を放つとき、動かないからだ。静止状態で遠くの的を射る――こんなこと昔の人はやっていなかった。
あと、今の射手は矢を弓の左につがえる(西洋式。日本は右)という違いがある。静止した的を射るなら、これで片目で照準を絞うのもアリだろう。この片目照準は自動弓でも採用されている。ただ左に構えると、射る手が逆サイドになるので、いったん矢から手を放して構え直さなければいけない、そこが問題。
その点、古代の絵を見ると、矢はみな右につがえている。この構え方なら矢を当てて放つまでがワンモーション。ロスタイムはない。これがラースの選んだスタイルだ。ラースのようになりたいなら、みんなも古いテクニックを学ばなければならない。
昔のアーチェリーはもっとシンプルで、自然。あたかもボールを投げるようなものだった。シンプルにすれば、もっと技の幅が広がる。結局その方が面白いのである。
伝説の弓の名手の技を再現
技の幅を広げるには、どうすればいいのか?
まず①弓と矢はそれぞれ完全にコントロールできなければならない(弓を空中に放り投げてとって射るラース。矢でも同じことができる)。
そして、②右利きと左利きの両方をマスターしないといけない。
さらに名人アーチャーは、③走りながら刃を射抜き、矢が真っ二つに割れる(2:46)。
④敵の矢を抜いて射返す、⑤ジャンプしながら天井の矢を抜いて着地する前に敵を射る、⑥飛んできた矢を掴んで敵を射るなんてこともできる(3:04-)。
古代と現代、一番の違いは的との距離だろう。今のノロいアーチャーを見ていると、「戦国時代の射手は遠い的を射ていたんだな」と勘違いしてしまうが、ラースは試行錯誤する中で「弓矢はどんな距離でも狙える」ことに気づいた。
無論、至近距離で射るには、それなりの素早さが要求される。
弓術には3つのレベルがある
①腰ベルトのクイーバーから矢を抜いて射る段階
②弓をもつ手から矢を抜いて射る段階
③射る手そのものに矢を何本ももって射る段階
この第3段階をこなすにはかなりの修練が要求される。戦闘が生業の人間にしかできない。
銃の誕生とともに、こうした古武術は忘却の彼方となった。
ラースがこうして再現できるのはひとえに、長い長い修練の賜物である。
難しいのは矢の構え方ではない。ボウの構え方だ。いかにしてシングルモーションで放つかが重要なのであって、どの矢の構え方をとるかは問題ではない(逆さまに射る、ローラーブレードで射る、バイクの後ろに乗って射るデモ)。しっかり構えれば複数の矢を手にもっても、弓を引く力は変わらない。
今のアーチャーは片手で引いて放つ(4:42)。全部片手。だが、昔のアーチャーは両手を動かして矢に勢いをつけていた(4:43)。
また、手にもつ矢の数だが、古文書には片手に3本の矢を持っていた、との記述がある。サラセン帝国(イスラム帝国)のアーチャーは1.5秒で3本連射して合格だった。もっと速いアーチャーもいた。
1938年の映画「ロビン・フッドの冒険」では何度矢を放っても的のど真ん中に当たり、ついには矢で矢が割れてしまう。「究極の名人芸」とされる名場面だが、ラースはそれでは飽きたらず、飛んでくる矢を真っ二つに割って遊んでいる。これはマジで危ないので、真似しないようにね。
source: larsandersen23 - YouTube
(satomi)