テスラの「モデル3」が自動車を変える!

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    テスラの「モデル3」が自動車を変える!

    フォードの「モデルT」以来の革命と言えるかもしれません…

    テスラの新しい電気自動車、モデル3。一見すると何の変哲もない普通のセダンです。3万5,000ドルという価格もごくごく一般的な物ですが、このモデル3は自動車の歴史においてフォードのモデルTと同様に非常に重大なマイルストーンとなるはずです。

    3万5,000ドルという価格がどんな特別な意味を持つかはテスラの現在のラインアップを見る事で分かってきます。まず、10万ドルのコンヴァーティブル、そして7万ドルの高級セダン。両者ともマーケットは限定的です。確かにモデルSはテスラの目標販売台数を上回っていますが、それでも昨年の販売台数は2万3,000台程度です。トヨタ自動車のカムリが最初の20日間で売り上げた台数程しか売り上げてないのです。

    今まで、電気自動車と言うと非常に高価で、ハリウッドスターが購入するような価格帯と言えたかもしれません。しかしこのモデル3ではその価格という最も大きな障害を乗り越えたと言えます。3万5,000ドルと言うとトヨタのアヴァロンや、シェルビーのインプラと同価格。あなたのお子さんのバスケットチームのコーチでも購入できる価格と言えます。

    インフラ構築

    ちょっと待ってください。普及のための障害は価格だけではないと思う方は少なくないでしょう。日産リーフや、三菱i-MiEVなんかは2万ドル台半ばから購入できるのに、あまり普及していませんよね。

    でも、みなさんリーフやi-MiEVってどうやって充電するか考えてみてください。自宅のガレージ、もしくは、近代的な都市にお住まいなら近くの駐車場に備え付けられている充電器を利用できますが、数は限られています。リーフやi-MiEVは航続距離が160kmほどしかないので、家から少し離れたところには行けません。

    確かに160kmもあれば普段の移動には十分といえます。実際に9割のアメリカ人が行なう9割の移動は160km以下です。ただ隣人の車がその気になればアメリカ横断を出来るのを考えると、見えないコンセントにつながれた電気自動車のコードが気になる人も少なくありません。一方モデル3ではリーフやi-MiEVの倍以上の航続距離があるのです。

    テスラの充電器はガソリンスタンドほど数は多くありませんが、それは少しずつ変わってきています。テスラは現在20分程度で満充電ができ、しかも無料で利用できるスーパーチャージャースタンドを北米に102カ所、設置しています。

    テスラは今年末までに、アメリカの人口の8割をカヴァーする数のスーパーチャージャースタンドを、設置することを約束しています。現在でもスタンドの場所をしっかりと確認しながら予定を立てれば、アメリカ横断することだって出来るのです。

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    現在のスーパーチャージャースタンドの位置とそこからモデルSが満充電で移動できる範囲

    想像してみてください、一部の人々しか買う事が出来ない高級セダンを数千台販売するのではなく、大衆車として、ホンダ アコードやフォルクスワーゲン パサートと同じような事ができ、近くの充電スタンドでタダで充電できる、航続距離320km以上の電気自動車を数百万台と販売する事を。電気自動車はより一般的な物となり、スーパーチャージャーの設置が加速する事でしょう。

    この前、テスラがバッテリ技術の特許を無料で公開しましたが、これにより将来、ホンダや、フォルクスワーゲンがテスラのスタンドで充電できるようになるかもしれません。電気自動車の数だけ、充電器を設置する理由が増えるのですから。

    電化製品のような電気自動車

    自動車の世界では見た目はインフラと同じくらい大切です。特にアメリカの消費者はプレーンで面白みのない外観だと、それだけで、避ける傾向があります。ここ20年のSUVの人気は全てミニバン見た目の野暮ったさから来ているといっても、過言ではありません。では、電気自動車の場合はどうでしょうか?以下の写真を見てください。リーフは掃除機を大きくしたようなデザインに、i-MiEVは間抜けなゴルフカートのようにも見えますね。

    140723Tesla3.jpg

    左が三菱i-MiEV、右が日産リーフ

    それに比べて、モデル3の予想画像はとても洗練されていると言えます。実際に販売される時には、全く同じ形とはいかないでしょうが、このようなテスラテイストなデザインになるのは間違いないでしょう。

    モデルTとモデル3

    テスラがモデル3を今に持ってきたのは単なる偶然ではありません。速いけど、どこかハリボテ感のあるロードスターに始まり、次により洗練され、Motor Trend Automobile Magazineによって2013年のカー・オブ・ジ・イヤーに選ばれたモデルS、その間にテスラは着々と電気自動車を普及させるための充電スタンドインフラの準備をしてきました。

    今、電気自動車普及のための基礎が出来上がったのです。充電スタンドは今でも最低限使えるレヴェルの数まできていて、これからも拡大していく事でしょう。テスラはモデル3によって、単に、アイアンマンのモデルとなったギークで有名なブランドから、一家に一台の自動車メーカーとしての地位を確立する事でしょう。

    大衆向け乗用車を販売するなんて、火星旅行や、ロケット作りに比べたら、小さい事のように思えるかもしれませんが、手頃な価格の実用的な電気自動車を作る事は、20世紀、ヘンリー・フォードが大衆向けガソリン車を作った事と同じような革命である事をマスク氏は分かってはずです。

    フォード モデルTとの共通点はとても興味深いといえます。フォードは自動車を発明した訳ではなく、テスラも電気自動車を発明した訳ではありません。1908年に最初のモデルTが発売されたときはまだ、馬車が主流でした。四輪の馬なし客車は、有名ではあった物の庶民には手が届かない物でしたし、道路もまだ馬車向けに設計されていました。その頃走っていた数少ない自動車は、ガソリンが動力の物から、電気や、蒸気で動いている物までありました。

    時は、1927年に進みます。ミシガン州ディアボーンの工場にて最後のモデルTが出荷されたときには、道路は既にガソリン車の為に設計され、マーケットは大衆車であふれていました。

    私たちの孫の世代でも、フォードモデルTがアメリカの歴史を大きく変えた事を学校で教わる事でしょう。しかし、そこにもう一台の車が加わる事になるかもしれません。突如現れ、自動車を化石燃料から独立させたある一台の車、テスラ モデル3が…

    Image: Flickr

    Robert Sorokanich - Gizmodo[原文] (ゆたかつむら)