目的地も任務も極秘のまま米空軍が先月打ち上げた謎の無人スペースシャトル「X-37B」、覚えてます?
もしかして攻撃用か...と盛り上がり中のところ誠に恐縮ですが、あれってただの非殺戮用偵察機みたいですよ? しかもこのステルスっぽいシャトルの現在地は、なんとアマチュア天文愛好家たちが完璧に把握してるんです。
アマチュアを甘く見るなよと。
5月20日南アフリカのケープタウンでアマチュア衛星ウォッチャーGreg Robertsさんと、カナダのブルックヴィルでKevin Fetterさんが別々に観測に成功し、その情報を基にトロント在住スカイウォッチャーの大御所Ted Molczanさんが移動中の軌道を割り出しました。
その次の晩、そのデータを元に見張ってたら、Fetterさんがまたまた観測に成功。これは間違いないな、ということに。その時の動画(wmv)はここ、写真はここにありますよ。
で、気になる移動圏内ですが、Molczanさんは「スペースシャトルの標準と同じ高度約255マイル(410km)を90分軌道(約90分で1周するスピード)で廻っている」とニューヨーク・タイムズからの取材に話してます。「だいたい北緯40度と南緯40度の間」を回ってるらしいですね。
北緯40度というと北はNYシティのすぐ南ですね。そこから南緯40度だと、紛争中のイラク、イラン、アフガニスタン、パキスタン、北朝鮮も圏内です。
そんなこと言ったら「スペイン、ポルトガル、イタリア、ロードアイランド、カリフォルニア、ケンタッキー、コロンビア、エクアドル、ブラジル、ナイジェリア、ジンバブエ、オーストラリア、ニュージーランドも圏内じゃん」と米版にコメントついてますが、まさにその通り。日本もバッチリ入ってますね。
というわけで一体どこを見張ってるものやらさっぱり分からないX-37Bですが、バグダッドにミサイル投下の可能性はなさそう。偵察機みたいですから。
Molczanさんによると、例えばこのX-37Bは4日置きに地球の同じエリアの上を通過するんですが、これは米国が抱える他の撮影用の偵察衛星の行動パターンとぴったり符合する動き。軍部も武器使用の可能性は何度も否定してるんで偵察機かなーと。
フェイントかもしれないけど...。
気になる方は衛星追跡サイト「Satellite Flybys」で郵便番号入れてGO押すと、自分の家の上を何がいつ何時通過するか分かりますよ(米・カナダのみ)。なんか訳者の裏庭は1日2回も来るんだけど重点見回り区域なんでしょうかね。
X-37Bはソーラーパネル装備なので軌道上に最高9ヶ月も残れるとのこと。これからもピトーッと目をはりつけていきますよ!
[おまけ] X-37Bの機密扱いは半端ないです。軌道に投入したアトラスロケットAV-012のアッパーステージの行く先も発表してないんですよ? 「AV-012はおそらく太陽周回軌道が正式に伏せられた米国初の宇宙ビークルだ」と、打ち上げを追跡したハーバード大学の天文学研究者Jonathan McDowellさんは書いてます。
[New York Times, Universe Today]関連:米空軍の無人ミニシャトルX-37B --新宇宙輸送系のコストシリーズ--宙の会
Jack Loftus(原文/satomi)