NASAのアポロ計画以降、最大の月探査計画であったかぐやによる月面調査は無事任務終了しました。
かぐやは2007年10月4日月の軌道に乗り、ハイビジョンカメラによる撮影や、地形の凹凸の観測、月表面の元素/鉱物組成、地形、表面付近の地下構造などを貴重なデータを本日まで収集し続けました。みなさんもかぐやが撮影したハイビジョン動画はご覧になったと思います。
かぐやは1.6トンの質量をもち、ハイビジョンカメラをはじめとする、月の測定に不可欠な装置をたくさん搭載していました。なかでもNHKが開発した宇宙探査機用ハイビジョンカメラは理論衝撃耐久能力は120G、実行衝撃耐久能力は15G/hを誇るもの。あの神秘的な動画は高感度CCDカメラだけでなく、かぐやの持つ堅牢な構造によって撮影が可能になったものだったんですね。
でも、今回の月面探査を大成功へと導いたのはかぐやだけでなく、おうなとおきなという子衛星の活躍も重要でした。
かぐやが月を周って撮影したハイビジョン動画などのデータは電波によって送信されますが、たとえば月の裏側だったりすると直接地球へ送ることができません。そこで、子衛星のおきなが月の裏側にいるかぐやの電波を中継し、地上へ送信していたのです。
かぐやの送る電波をおきなが中継して地球へと送る。しかしこれも非常に難しいことだったそうです。なんでも宇宙からハイビジョンの動画の送受信をして、圧縮されたデータの展開をするには実時間の約20倍かかってしまうので、その間、ずーっと、電波を途切れずに正常な通信を行う必要があり、絶え間なく動き続けるかぐやとおきなには常に電波の不安定が問題になっていたのです。
そこでもう一つの子衛星、おうなが重要な役割を持っていました。
動き続ける衛星の電波を保つためには、精密な衛星の位置情報が必要とされます。子衛星、おうなはかぐやとおきなの位置を正確に測定して、正常に電波を送り届ける手助けを行っていたのです。
こうしてかぐや、おきな、おうなの3機1体の活動によっての大規模な月面探査が行われ、たくさんの成果をのこしました。月南極のクレーターには露出した氷がほとんど存在しなかったことや、従来より精度の高い月の地形図の作成。月の裏側の重力異常の観測にも成功し、多大なる成果を宇宙研究の分野に残したのです。
しかし始まりのあるものには終りがあるもので、運用開始から約2年後の2009年2月12日、まずおきなが月の裏側にあるミヌールDクレーター付近に落下。運用を終了。そして、あとを追うように6月11日、かぐやもGILLクレータ付近へ落下し、運用を終了しました。
残されたおうなはどうなるかっていうと、JAXAによるとあと数年間は月を周回するようです。
かぐや、おきな、おうな3機1体となって行われた今回の月面探査。おきな、かぐやを失ったおうなは今頃何を思っているのでしょうか。
(遠藤充)
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