[Giz Explains]なぜ写真はレンズで決まるの?

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    [Giz Explains]なぜ写真はレンズで決まるの?

    デジタル撮影というと、ついメガピクセル、ISO、画像ノイズ、1秒当たりの撮影スピード、イメージ処理…ギークな話になっちゃいますけど、実はそんなのより百倍大事なのはカメラについてるレンズ。

    レンズはカメラの目。考えてみりゃ、センサーとかフィルムに焼き付けられるのは、このレンズを通ってきた像だけですもんね…。

    090302nikkorzoomdai.jpg

    レンズは説明が複雑です。ガラスのトンネルに光子を通す仕事の人が複雑なのと一緒で…。そこで今回は難解な物理や数学的比率の話には一切!踏み込まず、使う上で必要な基礎だけサラリと浅く見てみましょうね。

    レンズの専門用語

    レンズを語る上で欠かせない2つの数、それは焦点距離と絞りです。

    090302focaldiagram_02.jpg

    焦点距離はレンズの光心と、レンズに入る光に焦点を絞るポイント(ピントが合ってる時のセンサー(撮像素子)やフィルムのこと)の間の距離のこと。上図(ソース:Cambridge In Colour)は、焦点距離のなんたるかを単純にあらわしたものです。同じ写真で焦点距離を変えるとどうなるか、サンプルの写真で違いが一目で分かる解説を見た方が早いかも。

    ここで知っておきたいのは、焦点距離がミリメートル表示なことです。18-55mmのレンズとか、400mmの望遠レンズ、超ズームカメラの28-560mmのレンズと言うときのmmは、焦点距離のことだったんですねー(なんて、もうご存知かもしれないですけど…因みに「20xズームレンズ」というスペックは最長の焦点距離を最短ので割った比率で「560割る28」という意味です)。基本的に焦点距離が長いほど、写真は遠くからズーーーームインできます。

    さて、レンズのもう一つの大事なスペックは「絞り」。DSLR使ってる人は特にこれが重要です。 絞りはカメラに光が差し込む穴です。これは大きくしたり小さくしたりできます。穴の大きさは「Fストップ」のナンバーであらわしています。F/2.8とかF2.8とかF8とかF11とか何とかいう、あれが絞り。

    F値(Fナンバー)=焦点距離 ÷ 絞り径(穴の直径)なので;

    F値が大きくなればなるほど絞り(穴)は小さくなります。ややこしいですねえ。

    F値が小さくなればなるほど絞り(穴)は大きくなって、もっと沢山の光が射し込みます。

    絞りが大きくなって得なのは、速いシャッタースピードで撮れるのでブレないところ。暗いところで撮影する際にも穴が大きいと光がたくさん取り込めるので、「暗いボケた写真?それともブチブチと荒い写真にする?」と2択で悩まなくていい。光が足りないならその分は、ISO(光の感度)を上げて埋め合わせできるので。そんなわけで誰かが「Fast(高速/明るい)」レンズと言ったら、それはF/1.8とか「絞りが大きい」レンズのことと考えて間違いないです。覚えるのは簡単ですよね? 「少ない光で、より速いシャッタースピードが切れる」、です。

    (↑「僕はF値が小さい→ひらく、というように丸暗記しました。F値の概念は、学ぶとよけいわからなくなるので、丸暗記が一番です」三浦)

    090303aperturediagrama_02.jpg

    絞りが大きいと被写界深度は浅くなります。― つまりピントを合わせる被写体はシャープなのに、その周りのものは全部ソフトなボカシがかった状態になるのです。

    絞りが小さいと(F値が大きくなる。全くややこしいです)、もっと広い範囲にピントが合います。上の図(ソース:Wikipedia)だと絞りが大きいのが左、絞りが小さいのが右、ですね。

    被写界深度の解説はここにもあります。Fストップを詳しく知りたい人は発狂しそうなぐらい細かい解説がここで読めますよ。日本語の図解付きの解説はこちらです。

    レンズのタイプ

    さ~てと、面白くなってきましたね~はい~。 …レンズはいろいろなタイプのものがあります。マクロとかティルトレンズといった専門的なレンズも死ぬほどあります。が、ここでは基礎だけ浅~くおさらいしましょうね、ね。

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    標準レンズは、人間の肉眼に近い視界を備えたレンズです。35mmあるいはフルフレームのカメラで言えば、大体50mmぐらいのレンズを指します(フィルムや撮像素子のサイズによって違いますが)。例えばこのNikonから新発売の35mmのレンズ製品情報)は同社のDXカメラ用に開発されたもの。つまりフル(35mmフィルムと同じ)センサは備えてないんだけど、このレンズをDXカメラに繋ぐと フルフレームのカメラに50mmのレンズを取り付けたのと同じになる、従って「標準レンズ」というわけですね。

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    広角レンズは基本的に、標準レンズよりうんと短い焦点距離(フィルムや撮像素子によって違いますが)を備えたレンズを指します。ワイドのパノラマ撮影向き。大勢の人を一度に撮る集合写真も、10光年下がんなくてもパシャッと一発で撮れます。像をぐわんと歪める魔法の「魚眼」、あれも広角レンズのクレイジーな亜種です。サンプル写真:Ekilby/Flickr

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    望遠レンズは焦点距離が長~いレンズ(400mmなど)。 望遠鏡みたいな設計なので、焦点距離よりは短いですけど、どうしてもデカくなってしまいます。遠い遠い何かを撮る時はコレ。サンプル写真:Shiny Things/Flickr

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    単焦点レンズはその名の通り、バカの一つ覚えのように焦点距離が変わんないレンズのこと。ズームインもズームアウトもできません。普通はズームレンズよりシャープな写真が撮れます(一番高いズームレンズは別として)。上述のタイプのレンズはどれも単焦点レンズか、下に書いてるようなズームレンズです。魚眼は単焦点レンズ。

    ズームレンズは、焦点距離を伸ばしたり縮めたりできる(ズームインやズームアウトできる)レンズです。レンズ一本でいろんなものが撮れます。「Fast(高速/明るい)」なズームレンズ(すんごく高い)を買わない限り、絞り(開き)は焦点距離に応じて変わってしまいがちです。

    レンズのブランドと互換性

    それにしても1社ずつ見るにしても、レンズは複雑です。例えば、 キヤノンも自社製一眼レフカメラのレンズマウント(カメラとレンズが合体するところ)は何百万種とあります。どれだけ遡るかによって。

    現在、同社のレンズマウントは主に2種類です。: EF(electro-focus)という焦点を絞る駆動用モーターをレンズに内蔵したものと、 EF-Sです。

    EF-Sは、より小さな撮像素子(つまりフルフレームではない/35mm相当でない)に合うよう作られたものなので、使えるカメラは最安~中間価格帯のデジタル一眼レフだけ。標準EFレンズはEF-Sマウント装備のカメラで使えますが、EF-Sレンズは標準EFマウント装備のカメラでは使えません。その前にFDマウントというのがあって、これは アダプラーがないとデジタル一眼レフでは全く使えません。

    その点、ニコンはそこまで互換性は悪くないです。―同じF-マウントを40年ずっと使ってますから、ニコンのレンズは全部カメラに装着できます。ただし、同社のデジタル一眼レフで要注意なのが、FXレンズ(D700など向けのフルフレームレンズ) vs. DXレンズです(キヤノン同様、より小さなAPS-Cセンサー用に開発されたもの)。 フルフレームのカメラで使うと、DXレンズは写真のコーナーがブロックされちゃうんです。もっと小さなイメージ領域用に作られたものなので。 でも総じてニコンには、キヤノンのギアにはない「古めのレンズが使える利点」があります。ケン・ロックウェルさんのNikonのレンズと種別、その他の解説(英語)もどうぞ。

    光学技術はコストが高い

    090302lensdiagrama.jpg

    以上長々と見てきましたが、「レンズはどうしてこんなバカ高いの?」―みんな一番知りたいのは、ここですよね。

    ニコンSLR部門技術マーケティングマネージャーのスティーブ・ハイナー(Steve Heiner)さんの回答は、「みなさんが払ってるのは材料とレンズづくりのプロセスにかかるお金です」 。要はここが画質を改善する部分というわけです。

    高速な絞りをプロのズームレンズで実現するには大きなガラス素材が必要だし、耐久性確保にはメタルのよう重い素材も必要です。暗い場所での撮影でも照り返しを最小限に抑えるためには、ナノクリスタル・コーティングのようなタッチも必要。それやこれやで何百、何千ドルとコストが嵩むんですねー。

    キヤノンの営業担当の方も、こればかりは時間が経ってもあんま安くならないと話してました。精密な光学ガラスは他の機械部品のようにはいかないようですね。

    良いレンズと安レンズは、素材で決まります。どうりで携帯のカメラはダメなんですよね。―思いっきり安く小さく軽くしなきゃならないので、物理的な制約はどうしようもない…。安いデジタル一眼レフのレンズが死ぬほど高いレンズには敵わないのも、当然なわけです。

    以下は、レンズができるまでを追った素晴らしい動画です(情報提供:ダニエルさん)。


    同時に、レンズ技術の世界では今、様々な進歩が起こっています。最近のコンパクトカメラひとつ見ても超広角レンズがにゅっと飛び出してきて、すごいですもんねー。キヤノンによると、これもセンサー(撮像素子)がより小さくなり(上で述べたように、これは焦点距離の関連性を変えるものです)、レンズエレメントが非球面になり(この方が製造コストが安い)、新種の超高屈折率非球面光学ガラス(ど、どういう意味か聞かないでください)が登場し、AFモーターのようなメカニカルパーツの小型化が進んだお陰なんだそうですよ(ぜいぜい)。

    色収差レンズフレア(光のハレーション)など、ここで触れなかったポイントはまだ沢山ありますけど、これがレンズの知識を深めるきっかけになれたら幸いです。プロのみなさんもコメント(+日本語お役立ちリンク)よろしく~。

    [編集部より] 「Giz Explains」は読者からの素朴な疑問にお答えするコーナーです。レンズのこと、コスプレに群がるクレイジーで変な日本人フォトグラファーのことなど知りたいことがありましたら何でも構いませんので、「 [email protected]」にドシドシ(英語で)お寄せください。タイトルには「Giz Explains」をお忘れなく~。―今回レンズの図版はニコン社よりご提供いただきました。ご協力に感謝します!

    matt buchanan(原文/訳:satomi)

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    UPDATE: 開き→絞り、など訂正しました、ご指摘ありがとうございます。