ストーリーはものすごく簡潔。
少年・西片くんが、隣の席の少女・高木さんに、ひたすらからかわれ続ける話です。
もーね! からかい方がギリギリのラインを攻めてくるので「この子ひょっとしてオレのこと好き……いやでもバカにされてるだけか?!」みたいに振り回されちゃうのよ。
え? つきあうならともかく、からかわれるのはイヤだって?
そう思うのはよくわかる。いい大人だったら腹が立つかもね。
けれど、この作品がネット上で強く支持されているのにはわけがあります。
この作品のヒロイン、高木さんはものすごい女子力が高い。
(注・「女子力」とは、女の子がイキイキと日常を謳歌し、周囲から魅力的に見えるパワー、という意味で今回は使います)
彼女の「からかい上手」女子力7つのポイントを見てみます。
1・思いっきり笑う
高木さん最大の魅力は、笑顔です。
西片くんはいつも、からかわれて悔しい思いをします。その後高木さんを見ると、涙を流して全身で笑っているので、後味がよい。
たとえば、西片くんがからかわれて照れている時、高木さんは「あはははは。顔、真っ赤っ赤になってるよ!」と腹を抱えて大笑い。
人間、幸せそうな笑顔を見ると、不思議と許せることが多いもの。
この時、嫌がらせ的にではなく、全力で楽しそうに笑っていることが重要。
2・いつも目を見て話す
高木さんは、つねに西片くんの目を見て話します。
威圧感を持たせるためではないです。会話のテンポにそって、相手の目をのぞきこむ。
日直で朝早く二人だけ学校にきた西片くんと高木さん。ふっと「このまま誰も来なきゃいいのにね」と言って西片くんをドギマギさせます。
この時「目をそらす」「目を合わせる」の選択肢があると思います。高木さんは合わせるタイプ。
誠実さを感じさせることで、相手のことをよく思っている、と感じさせつつ照れさせる。
読者は西片くん目線なので、必然的に高木さんと目が合いますよ。
3・動揺しない
高木さんは、いたずらを仕掛ける時に、一切慌てません。だからうまく引っかかる。
同時に、自分をしっかりもってちょっかいかけてくる子って、男性は見ていて「この子何か伝えたいのかな?」と考えてしまうことも。
動揺していない相手にリードを握られると、反撃しようとしたくなるのもまた男性の心理。
そうすることで、お互いを意識する時間が長くなる。
やり手ですね。
4・相手に言わせる
高木さんは、西片くんにしゃべらせたり、行動を取らせたりするのが巧みです。
一方通行ではなく相手に語らせるでコミュニケーションを作り出す。
偶然相合傘になってしまってオロオロしている西片くんに、こそっと一言。「今、二人で一つの傘を使ってるこの状況って、なんて言うんだっけ」。
周囲に誰もいなくて二人きりで、かつ3の「動揺や緊張していない」ことで、相手はドキリと揺さぶられるます。
言わせても勝ち。
うん、あざとかわいい。
5・黙っている時と緩急をつける
高木さんは基本的におしゃべりですが、時々無口になります。
このギャップで、相手に自分を意識させます。
西片くんがたまには、からかいかえそうとネタを仕込んでいる時、高木さんは黙々と授業に集中していて反応しない。それを見て西片くんドキッとしてしまいます。
普段1のように明るく笑っている人ほど、黙っている時は視線をひきます。
6・褒める
高木さんは、散々いじわるをした後にちょっとだけ褒めます。
とある理由で筋トレすることになった西片くん。その筋トレをやっぱり高木さんにからかわれます。
でも最後にぽろっと。
「いいと思うよ、ちょっとだけどなんかたくましくなった気がするし」
褒めるべきところはまっすぐに褒める。
この時、2の「目を合わせて」誠意を持って褒めていることがポイントです。
7・自分の好意は隠さない
高木さんが西片くんを好きなのは、ほとんど周知の事実です。
この作品オムニバスで、それぞれの話は西片くん目線。
ところが全体を通してみると、西片くんを好きな高木さん目線で描かれているのがわかります。実は、高木さんがどう好きな相手と楽しい時間を過ごすかのマンガなのです。
堂々と西片くんにアプローチしているので、周囲からも「付き合ってるの?」と聞かれるほど。わかってないのは西片だけ。
リードは握っているけど、相手への好意ははっきりさせている。そこが魅力的なのです。
高木さんは「からかい屋」ではなく「からかい上手」。
相手に嫌な思いをさせずに、むしろ好意を伝えるからかい方ができている。
西片くんの本当にコンプレックスな部分は刺激しません。反撃可能なところをピンポイントで突いていくことで、コミュニケーションを取っていくのが上手い。
さりげなく女子同士での会話も円滑に進めているのも高ポイント。
女子力というよりも人間力が強い高木さん。大人でもドキドキさせられる魅力を、彼女は持っています。
「好きな人をからかいたい系女子」と「からかわれたい系男子」を増産しそうなこのマンガ、オススメです。
山本 崇一朗 『からかい上手の高木さん』
(たまごまご)