「父さんが美容院」、波平さんが、美容院に行くというものだ。
結果的に、ご本人的にはけっこう気に入ったようだったが、もしも本当に波平さんが美容院に来たら、美容師さんは、どんなことをしてくれるのだろうか。
もし、私が美容師さんだとしたら、あの「こだわりの1本」がうっかり抜けてしまったら……と、前日からプレッシャーで眠れないかもしれない。
いっそ、1本を大切にラップなどで包み、水に濡れないようにするとか。
美容師さんたちに聞いてみた。
「アニメではどんなふうにしていたのか具体的にわかりませんでしたが、実際には波平さんのような人は、サイドや襟足の毛は伸びるので、まずその部分をカットしますね」
と、東京都の美容師さん(30代男性)。
ちなみに、カットせずに、そのまま伸ばしてるのが「御茶ノ水博士」なのだそうだ。では、上の毛は?
「切れないでしょうね。切ったら絶対怒りそうですもん。美容師なら切って、すっきりさせてしまいたいところですが……。結局、今の波平さんの髪型は美容院でもそんなには変えられないような気がします。スキンヘッドにするか、かなり伸ばしてちょんまげにするかですね」
ちょんまげは違和感なくハマりそうだが、スキンヘッドの波平さんは、ちょっとファッションなども変わってきそうだ。
続いて、埼玉の美容師さん(30代女性)の見立ては……。
「波平さんは、まわりに髪があるから、一応ちゃんとしたカットの仕事ができそうです。ちなみに、床屋さんは、カチッと四角いカットをする場合が多く、床屋さんより、美容室のカットの方が、ソフトな印象で、丸いラインになる気がします」
実際に、波平を迎えた想定で「カウンセリング」をやってもらってみた。
「全体の長さ(周りの髪)はどうしましょう? 耳は、スッキリ出した方がよろしいですか? 襟足は、刈り上げない方がよろしいですか? それとも、スッキリ刈り上げましょうか? (一呼吸おいて)それと……トップ長さはどうしましょうか?」
このやりとりのポイントは?
「トップは、かなり大事にしてそうなので、慎重に扱わないと……と思いますね。特に、カットの時より、シャンプーの時にトップの毛に、気を使います。抜けたら、大変ですし……。ちなみに、私の美容室では、バックシャンプー(椅子が後ろにベッドのように倒れるもの)なのですが、おでこが広くなってしまった方でも、昔生え際だったであろうところまで、シャンプーします。波平さんの肌色な部分も、まるで髪があるかのように、他のお客様と同じにシャンプーさせていただきますよ」
余談だが、私の小学生の頃の恩師が、昔、初めて「シャンプー」に出会ったとき、「こんな便利なものがあるんだなあ」としきりに感動していたのを思い出す。
実はそれまでシャンプーというものを知らず、全部せっけんで洗っていたのだそうだ。
波平さんも、初めての美容院体験は、感動だったのだろうか。
(田幸和歌子)