地名の「王子」は、何のプリンスなのか
王子〜〜ッ!! (写真はイメージです)
東京都北区王子。
ごく当たり前に慣れ親しんでいる地名であるが、はたと、思う。


王子、王子って、結局この町は、は何の“王子”なんだ?
「ハンカチ」か、「ウイリアム」か、はたまた「テニスの」なのか、などというベタな流れはさておき、本当になぜ、王子という、プリンスな地名がついているのだろうか。

まずは“お約束”、『広辞苑』に登場してもらおう。
<おうじ【王子】1・王の息子。また、皇子。2・親王宣下のない皇族の男子。王>
まあ、やっぱりプリンスということ。

北区飛鳥山博物館の学芸員さんにたずねてみた。
「熊野詣の、王子信仰からきているものとされています」
熊野古道には、総称「九十九王子」という、熊野権現の御子神を祀る場所である「王子」が配置されている。参詣者は、古道をこの王子を巡りながら、熊野三山を目指していくということだ。
東京都北区の王子は、この「王子」を、熊野から「歓請」したことに由来を発しているのだということだ。
「ですからプリンスとしての『王子』とは、ちがうわけなんです」
当たり前だが、ロイヤル感あふれる町だから、というわけでは全くない。

『広辞苑』、よく見ると、すぐとなりの項目に、
<おうじ【王子】1・京都から和歌山県熊野神社への参詣の途中、所々に、若王子を歓請して祀ってある土地。
2・東京都北区内の一地区。もと東京市三五区の一。王子権現・王子稲荷などがある>
と、ちゃんとそのへんのことにも触れられていた。
いつごろから王子だったのかまでは、定かではないそうだが、
「戦国時代には、『王子村』という記述がありますが、それ以前にこの名前があったかどうかは、はっきりしていません」

じゃあ、もうひとつ気になるのが、「八王子」の存在だ。
王子が8人もいたということなのか。スグル、マリポーサ、スーパーフェニックス、ゼブラ、ビッグボディ、ソルジャーの「運命の5王子」より3人も多いな。分かりづらい比較ですが。

八王子市役所の文化財課の方にたずねてみたら、今度は、「熊野王子信仰」とはまた別の、当然プリンスやスグルとも違う、「王子」だそう。
「いろんな説があるのですが、主に牛頭天王と8人の王子をまつる信仰が元になっているとされています」
熊野の王子ではないが、やはり神の子の意味合いの王子が、8人。これが、「八王子」の名の由来だそうだ。
「それにともない、八王子神社や八王子権現者などが建立されたりするうちに、地名として定着していったようです」

東京以外にある、八王子という地名も、だいたいそれがもとになっているそうだ。

プリンスを意味する場合と、同じ漢字で表し、同じ読みなのに、「王子」にもいろいろあるわけです。


最後に、大阪にある「天王寺」。これは天王寺区にある、「四天王寺」からきているもの。そもそも「じ」が、「子」でなく「寺」だし。響きはどことなく仲間っぽいのですが、ダウト。
(太田サトル)
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