「安倍政権、結構、期待してたんですけどね」
今回の鳥越インタビューのお相手は、小林よしのり氏。小林氏は、『ゴーマニズム宣言』をはじめとする漫画家としての顔だけでなく、最近では言論人としても活躍する。インタビューでは、影響を受けた父親の話から、安倍政権、戦時体制、言論へのテロまで、率直な考えを語ってくれた。(編集部)
* * * * *
鳥越 小林さんの生まれは福岡ですね?
小林 はい、そうです。福岡です。
鳥越 (私と)同じですね。福岡はどこでしたっけ?
小林 生まれたところは今、大野城(おおのじょう)市といわれているところの寺です。そこで生まれて……。
鳥越 大野城っていうのは春日の隣だよね。
小林 そうそう、そうです。
鳥越 うちのおふくろは今春日に住んでいます。
小林 ああ、そうですか。
鳥越 で、何歳までいたの?
小林 かなり幼いときまでです。ずっと転々として。その寺には日曜のたびに、夏休み・冬休みのたびに帰るような感じだったから、そこの記憶が大きいです。あとは(福岡市南区の)大橋近辺……。
鳥越 大橋、うん。
小林 で、仕事するようになったら、(福岡市南区の)那の川とかね。
鳥越 那の川はどっちかなあ? 博多に近いほうかな?
小林 かなり天神にも近い方ですね。あとは天神でもマンションで仕事していました。
鳥越 基本的には福岡のあのあたりで。いくつまで?
小林 長いなあ。4年間描いて、引っ越したのかな。ということは、28ぐらいかなあ。
鳥越 じゃあ福岡県人じゃないですか、もう。生粋の。
小林 そうですよね、はい。
鳥越 そのわりに福岡の訛(なま)りはあまり出ないよね。
小林 いえ、いつも訛りがあるっていわれるけどねえ。
鳥越 あっ、そう。
小林 編集者とか周りの人間に伝わらないから、博多弁でしゃっべっていたら。いちいち聞き返されるのも面倒だから、一応共通語に直そうとしていますけど、訛りがあるっていわれます。
鳥越 僕はね、もっと田舎の吉井(町)っていうところ。久留米わかります?
小林 ああ、久留米。うん。
鳥越 久留米からさらに久大(きゅうだい)線で北の方へグーッと行ったところ。
小林 へーえ。
鳥越 そこに18までいたの。まあ、今おふくろが春日に住んでいて、きょうだいは皆、福岡なので、すごく近いですよ。
小林 福岡で描いているときまではまだ無難な漫画をでしたから、福岡県人として結構もてはやされていました。福岡で描いていたしね、『東大一直線』の頃までは。
鳥越 最初のは、『おぼっちゃまくん』?
小林 一番最初は、『東大一直線』。
鳥越 ああ、『東大一直線』か。
小林 で、それから東京にやってきて、『おぼっちゃまくん』っていうのを描いて、それから『ゴーマニズム宣言』ですね。
■理想主義者の親父
■「その感覚はわしの中にも残ってますよ」
鳥越 小林さんというとね、僕の印象ですよ、『朝まで生テレビ』なんかで、確か小林さんのお父さんは社会党かなんかの活動家だったって……。
小林 違うんですよ、活動家じゃない。マルクス主義者ではありました。
鳥越 マルクス主義者ね。
小林 共産党支持ですね、共産党員じゃないけど。
鳥越 社会党よりも左なんだ。
小林 もう共産党ですよ。共産党支持ですよ。『赤旗』取っていましたから。
鳥越 『赤旗』とっていた。うーむ。
小林 小学校のときにねえ、夏休みの研究課題で、ベトナム戦争の経緯を『赤旗』の新聞切り抜いて、全部貼って、感想文とか書いて出したら入賞してね。体育館みないなところに貼られてね。それをうちの母親が見て、『全部赤旗の記事じゃないか!』ってね。『恥ずかしい、赤の記事や』ってね、それで怒られた。
鳥越 お母さんは、『赤の記事』って言っていた。
小林 うちの母親は仏教だから、お寺で。『アカアカ』って言っている。寺のじいちゃん、ばあちゃんはみんな『アカ』って言っている。
鳥越 お母さんがお寺の娘さん? 何宗?
小林 真言宗。
鳥越 真言? 密教系だ。うちは浄土真宗なんですけどね。あのう、私のところも親父が『赤旗』取ってました。
小林 ああ、本当に?
鳥越 だからねえ、わりとね、小さいときずっと影響受けてますよね。
小林 結構ね。だから、ベトナム戦争はアメリカが仕掛けたっていうのも『赤旗』で知ってましたしね(笑)。
鳥越 はっはっは。うちの親父はね、要するに浄土真宗でね。それが基本なんだけど、その上にちょっとこう『赤旗』が乗っかっているみたいな。死ぬときは親鸞上人に帰依(きえ)するということで、亡くなりましたけどね。
小林 うちの親父の方は、浄土真宗です。でも、親父は唯物論者です。今年亡くなりました。
鳥越 そうですか……。亡くなったときはどうでした? ソ連がもう崩壊してましたよね。
小林 うちの親父は、自分が管理職になった段階で組合に対して疑惑の目を持ってましたね(笑)。何で自分だけが仕事をしなくちゃならないんだ、という感じで。管理職になったあたりから、だんだんちょっと懐疑的になってきて。ただ、理想主義者でしたからね、うちの親父。理想主義者で平等じゃないといけないって思っていた人間だから。なので、その感覚はわしの中にも残ってますよ。
鳥越 なぜ聞いたかというと、うちの親父もね、すごく精神的に弱くてね。で、やっぱり、弱い人の立場に立ちたいというのがあって。それが宗教とくっついちゃってる。だから亡くなるときは、マルクス主義とは絶縁したのかどうかは知りませんけど、まあ親鸞上人に本卦(ほんけ)帰りして。それで、小林さん見て、何かちょっと近い感じがしたのね。小林さんの場合は、単なる右翼ではないなと。実際、今の若い人たち、右翼的な考え方、タカ派的な考え方を持っている人が、小林さんの『ゴーマニズム宣言』とかをバイブルのように持っているのを知っていますか?
小林 なんかそう聞きますね。具体的に見たことはあまりないですけれど。まあ、若い人がかなり熱狂的に読んでるとかっていうことは、いろんな人から聞きますけどもね。
鳥越 それはうれしいですか? どうですか?
小林 うん、うれしいですね。読んでくれてるってことは。ただ、どんなふうに読んでくれてるかっていうのはわからないですから。どこまでわかってくれてるかっていうのは、これもわからないですね。例えば、『東大一直線』にものすごく影響を受けて、親を殺したっていう子どももいたんですよ。
鳥越 えっ、そんな人いたんですか?
小林 いたんですよ。バットでぶん殴るなんていうのがはやっていたときに、『東大一直線』を読んでた受験生がいたんです。作品ていうのは……、どうしてもフィクションは、何を描いていてもすぐに影響されて動く人は出てきますね。そこは、関知しないとまではいわないけど、どうにもそういうもんですね。自分の作品が与える影響力とか、ある意味、力があるっていうことにもなるんですよ。(そのことに関しては)不満ではないっていうところですね。
鳥越 何でそういう話をしたかっていうと、小林さんの中では一定の考え方の変遷がね……。要するに『赤旗』を見て、ベトナム戦争を懐疑的な目で見ていた。いろんな変遷があって、今の『ゴーマニズム宣言』がそういうところにきているわけですよね。しかし、そういう変遷なしに、今の若い人たちはいきなりポッときているわけですよ。僕は、ちょっと違うだろう、という気持ちがするわけね。
小林 まあね、うん。
鳥越 さっきおっしゃったみたいに、小林さんは自分の中に、父親のね、平等な精神というものがどっかにあると……。
小林 ありますね。
鳥越 そういうものをね、果たして今の若い人たちが持っているのかっていうとね、今のように格差がどんどん開いている中でね、勝ち組とか負け組とかいうふうになっているときに、どうなんだろうなと。
小林 なるほどねえ。これね、今の若い人って言っても、わかんないですよ。なぜかというと、わしの『ゴー宣』はもう10年以上になるでしょ。初期のころからずっと読みつづけてる人って30代なんですよ。
鳥越 そうか。若者とはいえないね。
小林 そうなの。だから初期の『ゴー宣』の時は、もっといわゆる“リベラル”な感じなんですよ。それで、『新ゴー宣』からですよね、右の方に寄っちゃったのは。
鳥越 右の方にね(笑)。
小林 だから、『新ゴー宣』から入ってきた人間は、その前は知らないかもしれない。20代もどうやらいるらしいし、どうも高校生くらいもいることはいるみたいなんですよね。握手求めてくる子には、高校生もいますしね。ということは、高校生は最近読み始めたってことになりますからね。
鳥越 小林さんとしては、その前もトータルに知ってほしいよね。
小林 そりゃ、そうですね。最初から読んでもらうのが一番いいですね。そういう要素の中から来たっていうのを全部わかっていってもらった方がいい。だけど、そうもいかないですね。『(新ゴーマニズム宣言)戦争論』一発で入ってきたやつの方が多いかもしれません。部数的にものすごく売れちゃってますからね。
鳥越 なるほどね。
■安倍政権と美しい国
■「『郷土愛』なくして『美しい国』は本来ありえない」
鳥越 小林さんは、安倍政権についてはどういうふうにお考えですか? 70%くらいの支持率で成立しましたけどね。
小林 安倍政権ねえ……(苦笑)。結構、期待してたんですけどね。いよいよ自分の知った人間ばっかりが入ってるなぁっていう。安倍晋三にも会ったことあります。中川昭一は内閣じゃないけど政調会長で、あと高市早苗とかねえ。結構、知った人間ばっかりが入ってるんですよね。それで期待してたんだけど、早くもだんだん失望が始まってるけどね。
鳥越 どうして?
小林 うーん、歴史認識の方でね、結局、こう言わざるをえないのかという感覚ですね。ガックリかなっていう感じがありますね。
鳥越 例えば?
小林 村山談話・河野談話、全部踏襲するし、あと東京裁判。まああれは、諸判決受諾っていうのが本当なんだけれど、裁判そのものを受諾っていうような、以前、後藤田正晴のときに出した政府見解を踏襲しちゃったから。結局、(諸判決受諾っていうのが本当だということを)全部知ってるのにこうなるかと。安倍晋三は全部知っている。小泉(純一郎・前)首相の場合は、ほとんど無意識にやっている感覚だったけど、安倍晋三は全部知ってる。知ってるのに、今まで出しちゃった政府見解っていうのを、やっぱり踏襲することになるのかってことが失望。それと、歴史認識の問題と、もう片方では構造改革の問題も。これは最初から、わしは反対でしたから。小泉の構造改革をそのまま踏襲するっていうことは、日本の共同体っていうのが次から次へと破壊されていく。共同体とか組織っていうのは日本人のモラルの基盤になる。日本人が帰属する部分を破壊しながら、教育基本法改正と言ったって、効果ないとわしは思っていますから。だから、これじゃしょうがないよなって思っているところがあるんですよ。
鳥越 つまり、小泉さんが始めた構造改革。もっと言うと、おそらく竹中(平蔵)さんが、アメリカから年次改革要望書っていうのを毎年突きつけられて、これやれあれやれと言われて、それを実行したのが竹中さんだと僕は思ってますけどね。それをやることによって、かなり日本は、地方は痛みましたよね。地方の商店街はシャッターが降りてるしね。
小林 そうですね。
鳥越 こういう、いわば日本の土台みたいなところがかなりガタガタになっている。これを安倍さんは、そのまま受け継ぐって言いましたからね
小林 そう言いましたからね。その時点でわしはもう……。要するに、経済の問題っていうのは、社会の横軸です。歴史は日本の縦軸です。それが交差するところに個人があるというふうに思っていますから。ですから、歴史感覚の方を維持するのか、あるいは横軸の経済で作る社会性を維持するのかというふうになったときに、本当は両方必要なものなんですけれど、でも結局、経済によって日本の組織を破壊していってね。それで、信頼の基盤である会社組織も全部破壊されていく。リストラをやって、非正規社員ばかりになっちゃって。もちろん、所得の格差もできるし、地方の格差もできる、教育の格差もできる――という新自由主義の路線そのものが、日本の国柄そのものを破壊していくと、わしは思っているわけですから。だから小泉氏のときから、この経済政策には反対する、ってずっと言っているわけ。でもマスコミなんか誰も反対しないですからね。「自民党をぶっ壊す」っていっただけで、大喜びしているわけで……。
鳥越 僕は反対してましたよ(笑)
小林 あ、そうですか。それだったらいいんだけど(笑)。既得権益がどうのこうの、っていう自民党の体質自体が問題だってずっと思っていたもんだから、マスコミは。だから、「自民党をぶっ壊す」っていったときに喜んで。しかも、なおかつ自由主義の方がいいということだけを考えるわけでしょ。
だいたい、漫画家こそまったくの自由主義なんですよ。全部人気投票ですからね。(漫画が)20本あったら、20位まで出ますから。それで、下位の方をうろうろしてたら、切られますからね。必ず上位にいなくてはならない。もう弱肉強食だけの世界なんです、漫画家の世界って。
鳥越 そのままだよね。わかる。
小林 だからもう、負けるやつは負けますよ。ギャグ漫画家なんて、4年でギャグドランカーになっちゃうっていうね。
鳥越 ギャグドランカーになる……(笑)。
小林 うん、ギャグドランカーになっちゃって、もう役に立たなくなっちゃうんですよ、社会人としても。そのくらい過酷なところですから。何ていうのかな、やっぱり、誰も彼もが競争に勝ってね、再チャレンジ、再チャレンジとかっていったってね、いくらケツ叩いたって、そんな活力誰もが持ちませんよ。
鳥越 そうするとね、安倍さんが「美しい国」っていう言葉を出したでしょ。「美しい国」っていうのとね、小泉さんがやった構造改革っていうのはね、どうも僕には成り立たないと思うんですよね。その点について僕は、小林さんとおそらくかなり認識は一緒なんですよ。つまり、新自由主義というのは日本の国の伝統とかね、旧来の美しいものを壊していったんだと、僕は思ってるわけです。
小林 安倍晋三は、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』がいいっていうでしょ。『ALWAYS』のときは、教育基本法は現行の教育基本法ですからね。ただ、共同体がしっかりしてるから、あんな麗しい人間関係があるんですから。あれをどんどん壊してきたわけで、それをもっと加速したわけですから、改革路線というのは。だから、改革路線を続けて、あんな世の中、あんな人間関係が再生できるわけがない。だから、もうあの「美しい国」っていうのは間違っている。パトリなき「美しい国」ですから。パトリなき「美しい国」っていうのは成立しない。
鳥越 パトリオット、パトリオティズムっていうのは……。
小林 郷土ですね。
鳥越 郷土愛という……。
小林 「郷土愛」っていうものをなくして、「美しい国」っていうのは本来ありえない。
鳥越 安倍さんの場合、“国家愛国”主義みないなものがいきなりきて、それを支える郷土愛みたいなものがないのが気になるんですよね。
小林 そうですね。だから、下部構造が全部砂粒の個人になって、上から教育基本法っていってみたりというふうになると、これはもう本当に純粋なナショナリズムになるから。ファシズム的ですよね。
鳥越 小林さんは、ファシズムとかナショナリズムとか国家主義っていうのは反対だよね?
小林 うん、そうですね。ただ、その「ナショナリズム」っていう言葉は人によってバラバラになってますから。いわゆる国家主義といったり、ステイティズム(Stateism)という政府主義みたいな形をナショナリズムって人々は言っていたりしてますから。
■国家主義と戦時体制
■「民主主義とファシズムを区別する考え方は間違い」
鳥越 そこで、やや本論に入ってくるんだけど、おそらくここで小林さんと僕の認識が多少違ってくると思うんだけど、じゃあ戦前のあれは何なのかと、国家主義、戦時中のね。これはどう思いますか?
小林 あれはねえ、つまり戦時体制ですね。戦時体制っていうのはああいうものですよ。アメリカだって同じ。9.11のあとには星条旗だらけになってしまって、なおかつ……。
鳥越 「愛国法」っていうのを通したからね。
小林 そうそう、戦時体制ですよね。その戦時体制のときは、ファシズムではない。だって、議会制民主主義はあったんだから。議会がどんどん変わってますから。東条英機も倒れてますから。これはファシズムでは全然ない、戦前から戦後まで一貫して。ヒトラーだってそうですよ。そもそもヒトラーのファシズムというのは、民主主義からなったんですからね。民主主義でナチスの一党独裁を決めたんですから。民主主義の結果、すべてナチスドイツに預けちゃったんですからね。だから、民主主義とファシズムを完全に区別して考えているという日本の論壇・知識人の考え方自体が間違っている。
鳥越 民主主義がそういうものを選んでしまうことだってあるってことですね。
小林 そうです。それに比べて、日本というのは政権は交代していますから。
鳥越 政権交代っていうけど、あれは天皇制度の下で、元老がいてね、西園寺(公望)さんとかが誰にするみたいな形で決めて……。
小林 けど、例えばそのときだって、斎藤隆夫とか粛軍演説とかやっているんですよ。
鳥越 やってますけどね。
小林 粛軍演説やって、また選挙に出て、再当選してくるんですよ。だからそのときですら、言論の自由はあるんですよ。反対を唱(とな)えたってかまわなかったんですよ。
鳥越 最後はなかったけどね。戦争が始まってから。
小林 戦時体制のときっていうのは、基本的には言論というのは収縮していきますけれどもね。それは今だって同じですよ。何にも変わりゃしないですよ。構造改革って言ったら、みんな構造改革。郵政民営化っていったら、みんな郵政民営化で。
鳥越 なるほど。反対もできない。
小林 うん、だって抵抗勢力っていわれるんだから。反対できないじゃないですか、全然。だから大した変わりはないですよ。
鳥越 でも、ああいうものがいいとは思わないでしょ?
小林 全然思わないです。それはもちろん思わない。軍が力を持って、それに政治家が怯(おび)えるっていう状況があったわけですから。それは全然いいとは思わない、もちろん。
鳥越 戦時中に小林さんが生きてたらね、おそらくパクられてるね(笑)。
小林 たぶんね(苦笑)。
鳥越 軍当局のお気に召すことばっかり描くとは思えないから。
小林 たぶんそうでしょうね。
鳥越 まあ、そういう時代にならないようにしたいんだけれども、ただ最近ちょっと嫌なのは、例えば、僕と小林さんが意見は違っても話ができるというのはすごくいいと思うんだけれども、違うやつは実力で排除しちゃうみたいな空気がね。例えば、溝口敦さんの息子さんが刺されたとかね。いくつかあるじゃないですか。
小林 あれは暴力団でしょ。
鳥越 暴力団も含めて、加藤紘一さんのところも暴力団か右翼かよくわからないですけどね。まあ右翼と称してますけど。そういうのが、なんとなく「唇寒し」みたいなね、あんまりいわないほうがいいんじゃないかと。
小林 けどねえ、例えばこういうのもありますよ。加藤紘一が、みのもんたの『朝ズバッ!』とかいう番組に出てね、最近の自民党の政治家は「小林よしのり系」みたいなやつばっかりだって。それで、こういう言葉で言ったときにね、「『小林よしのり系』みたいなやつがいっぱいいる」っていうのは、いったい何なのだろうってことですよね。これはもう、どこかに、はっきりと危険分子というレッテルだけ貼って、わしの言っていることを吟味しているわけでも何でもないんですよ、彼は。彼とわしは主張が違う。違うから、違う人間は非常に危険分子だと。危険分子っていう言い方よりも、むしろ「小林よしのり系」って言った方が、もっとダメージがあるだろうと、そういう感覚ですよ。
鳥越 なるほど。
小林 これを政治家が朝の番組で、言い放っちゃうんですよね。
鳥越 聞いてたんですか、言ってたの?
小林 そうですね。主婦がね、会社員がね、それをパッと見たときにその言葉を聞くと、読む読まない、個人の主張なんか関係なく、どこかでレッテル貼りして、パンと切り捨てて、差別していく。そういう言葉の使い方が横行しているわけですよね。それで、これはテロじゃないのかと。こういう言葉が何とでも言えるのならば、じゃあ、何でも許されるという話なのかということになりますよね
鳥越 そういうことを小林さんは言いたい、と。なるほど、それはおもしろい。