困惑する書店と落胆する出版関係者
『ためしてガッテン』、『英語でしゃべらナイト』などのNHKテキストブックを出版していたことで知られる出版社、株式会社アスコム(東京都千代田区、日暮哲也社長)が21日より業務を停止している。
同社は2002年に(株)アスキーの一般書籍部門として設立された会社で、『田原総一朗責任編集 オフレコ!』や、歌手の松山千春氏の責任編集誌『月刊 松山 捨石』などを刊行。『借りたカネは返すな!』や『裏帳簿のススメ』といったヒット本もあり、順調な経営とみられていた。業務停止の経緯などは不明だが、一部報道によれば、社員は20日づけで全員解雇されている模様。現在、本社には人がいる様子はなく、電話も留守番電話が対応する状態になっている。
都内の大型書店員がインタビューに応えてくれた。
「21日の午前中に取次店(いわば本の問屋)から説明がありましたが、倒産とも、会社更生法適用とも説明がないままで困惑しました。書店では返品ができるのかどうかが、とても気になりますが、今は状況を見ているところです」
アスコムと取引があった出版プロデューサーは、業務停止の理由を、こう推察する。
「ここ2年ほどは、売れている他社の本をきわどくパクッた類似本が多く、編集者と営業部門がうまくいっていない様子でした。NHK出版をさしおいて、テキストを受注できたのは、NHKとアスコム上層部に、なんらかの縁故関係があったという話ですが『編集内容の善し悪しではなく、名前で売れる本』を刊行することになったことで、よい企画が出にくい環境になっていたようです」
名門、草思社が先月に民事再生法をスタートさせたことにつぐ、中堅出版社の業務停止。出版関係者のなかには「出版不況ではなく、本という文化の終わりだ」という声もある。