80人が山手線一周、メッセージ伝える
すれ違うと死ぬ気が萎えるようなコピーが大書きされた白いTシャツを着て街を歩き、自殺防止をアピールしようというイベントが16日、東京都内で開かれた。10~80歳代の約80人が参加。Tシャツを着て山手線を1周したあと表参道ヒルズを散策し、「死ぬより生きて」とのメッセージを街に発信した。
コンサルティングやデザインを手がける(株)ポジメディア(オキタリュウイチ代表)が今年3月に立ち挙げた「自殺ZEROキャンペーン」の一環。
9年連続で年間自殺者が3万人超という日本の状況に対し、「1年半で自殺者を3分の1から4分の1に減らす」という、一件荒唐無稽(こうとうむけい)な目標を掲げる。
キャンペーンの作戦はシンプルだ。「自殺以外の問題解決策」の事例を集め、「生きテク」としてウェブで公開していく。定期的にフリーペーパーやマンガ版を発行するほか、イベントなどでマスコミに露出する機会を増やし、自殺を考えるほど追い込まれた人たちに問題解決の方法が届くようにしていく。
Tシャツイベントは7月に続く2回目。Tシャツ毎に異なるコピーは100種類以上もある。アーティストが考えたり、mixiなどで呼びかけて「これで救われた」という言葉を集めた。今後は電車の中吊り広告で、車内に「生きテク」を張り巡らすことも計画中だ。
問題解決の方法を社会に広めることで自殺を減らす、というアイデアは、オーストリア・ウィーンの事例から得たという。
センセーショナルな自殺報道というネガティブな情報をメディアが自主規制し、その一方で自殺予防につながる正確な情報や解決事例というポジティブな情報を挙げることで、地下鉄での自殺者が4分の1以下に減った、というものだ。
オキタ氏は、社会問題を解決するための事業を目指す社会企業家の1人。1998~99年には、キレる17歳といわれた世代を対象に、「ヘブンズパスポート」というキャンペーンを仕掛けた。良いことをするたびに1枚シールを貼り、100枚たまると願いがかなう、というもので、15万冊が売れた。
「そのときに、わずか1~2年だけれど社会は変えられるということを知った。今回の『自殺ZEROキャンペーン』で期限を1年半としたのもそのため。意図して働きかければ短期間でも社会は変わる。社会変革は起こせるんだよ、ということも、伝えていきたい」
とオキタ氏。キャンペーンにスポンサーはおらず、ポジメディアの売上をつぎ込んでいるという。
「友達の友達の友達からメールが回ってきて」参加したという67歳の男性は、
「人が1人死ぬというのは大変なこと。私も体の具合が悪いけれど、参加した。水分補給をしながら頑張って歩きます」
と笑顔で話していた。