【米大統領選2016】クリントン氏に肺炎診断 9/11式典で体調崩す

9/11の追悼式典に出席したクリントン氏(中央)とデブラシオ・ニューヨーク市長(後方右)

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11月の米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が11日、ニューヨークで開かれた同時多発攻撃の追悼式典で体調を崩して途中退席した。医師によると、クリントン氏は9日に肺炎と診断され、抗生物質を服用していたという。

リサ・バーダック医師は文書で、クリントン氏は肺炎と診断されていたが、式典の途中で脱水症状を起こしたと述べた。

映像には、クリントン氏が周囲に助けられながら車に乗り込む様子が映っている。

バーダック医師は、クリントン氏の脱水症状は治まり、「順調に回復している」と発表した。「クリントン氏はアレルギー関連の咳をしていた。金曜日には、長引くせきについてあらためて診察したところ、肺炎と診断された」、「抗生物質を処方され、休息して予定を見直す日程を変更するよう勧められていた」という。

12、13両日にはカリフォルニア州で資金集めの集会が予定されていたが、11日夜に、中止が発表された。クリントン陣営が今後の選挙活動をどう変更するかは不明だ。

娘のチェルシーさんの自宅で休息したクリントン氏は、記者団に対し、「すごく元気ですよ。ニューヨークらしい素晴らしい(天気の)日ですね」と語った。

クリントン氏はその後、ニューヨーク州チャパクアに向かった。バーダック医師による文書は11日夜に発表された。これに先立ちクリントン陣営は、式典でクリントン氏が「暑くなり過ぎた」と訴えていたとしていた。

クリントン氏は9日に開かれた資金集めの集会で、トランプ氏支持者の半数は「嘆かわしい人々」だと発言。批判が高まり、クリントン氏は大まかすぎる発言だったと謝罪していた。

対立する共和党関係者からはこのところ、クリントン氏の体力を疑問視する発言が相次いでいた。共和党候補のドナルド・トランプ氏は先月の支持者集会で、クリントン氏が大統領の任務を果たし、「イスラム国」の過激派と戦うために必要な「精神的かつ身体的なスタミナを欠いている」と批判していた。

バーダック医師は先月、クリントン氏が「非常に健康で、合衆国大統領の任務を果たす体力がある」と述べていた。医師によると、クリントン氏は2012年に受けた血栓治療の手術から完全に回復している。

クリントン陣営は、対立陣営が「クリントン氏の健康に関するばかげた陰謀説」を広めようとしていると非難した。

クリントン氏は現在68歳。トランプ氏は70歳。

式典にはトランプ氏も出席していた

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<解説>アンソニー・ザーカー記者(ワシントン)

ジョージ・H・W・ブッシュ大統領は日本の首相のひざの上に吐いたことがあった。その息子はプレッツェルをのどに詰まらせ気を失った。フランクリン・ルーズベルト大統領は重篤な病状を国民から隠していた。ジョン・ケネディ大統領は、慢性的な激しい腰痛について語ったことはなかった。

しかし前任者たちとクリントン氏との立場は違う。クリントン氏は、就任時に最高齢だったロナルド・レーガン大統領とのタイ記録を目指しているのだ。最高齢の大統領のひとりになろうとしている、そのクリントン氏が、肺炎が原因とみられる「高体温」になったのだ。

その上、クリントン氏の健康に関する陰謀説がただでさえ飛び交っている状況だ。トランプ陣営の有力者たちが広めている陰謀説もある。彼らの言い分はこれでさらに勢い付くだろう。

クリントン陣営が肺炎の診断を、明らかに体調を崩していると見て分かるようになるまで、2日間公表しなかったことも、問題をさらに複雑にするはずだ。

70歳のトランプ氏についてももちろん、健康不安がゼロというわけではない。公表されている健康情報といえば、主治医が適当に書いた診断書だけだ。

クリントン氏は今後数日間、選挙運動を控えるかもしれないが、この日の一幕は次第に忘れらられていくだろう。しかし今回のことがなければ健康不安説を、とるにたらないこととあしらっていた人たちは今後、クリントン氏の動向を前より注視しはじめている。

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(英語記事 Hillary Clinton Clinton diagnosed with pneumonia)