天の川銀河中心の超大質量ブラックホール周囲の磁場構造を解明

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天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A*」付近の電波観測から、ブラックホールのすぐ近くに存在する複雑な磁場構造が明らかにされ、時間変動もとらえられた。ブラックホール周辺の活動的な現象に磁場が重要な役割を果たしているとする説の観測的な裏付けで、物理過程の解明につながる大きな成果だ。

【2015年12月8日 サブミリ波VLBI】

天の川銀河の中心には、太陽の430万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エー・スター)」が存在している。一方その直径は約2600万kmで、約2万5000光年離れている地球から見ると10マイクロ秒角(角度の1度の、3億6000万分の1)の大きさしかない。そのため、いて座A*の周囲の様子を明らかにするには非常に高い解像度の観測が必要となる。

国立天文台の秋山和徳さんと本間希樹さんを含む国際研究グループは、ハワイとアメリカ本土にある4台の電波望遠鏡をVLBI(超長基線電波干渉法)という技術でつないで直径4000km相当の巨大な電波望遠鏡を構成し、いて座A*を観測した。この手法を用いることで50マイクロ秒角の解像度が得られ、いて座A*の周辺を詳しく調べることができる。今回の観測はとくに、従来より高感度化したことによって偏光の計測が初めて可能になったことが最大の特徴だという。

観測の結果、いて座A*のブラックホール半径の6倍ほどの領域から出る放射が、直線的に偏光している様子が初めて計測された。また、その偏光の度合いから、いて座A*の周りの磁力線は一部が渦を巻いていたり複雑に絡み合ったりした「絡まったスパゲッティ」のような状態であることもわかった。磁力線は際限なく絡み合っているわけではなく、ブラックホール1、2個分の大きさまで細かく見るときれいに整列している。

いて座A*のブラックホール極近傍領域の想像図
いて座A*のブラックホール極近傍領域の想像図。磁場構造(磁力線)も描かれている(提供:Harvard Smithsonian Center for Astrophysics / M. Weiss)

さらに、磁場構造が15分程度の短い時間で変動していることも明らかになった。

ブラックホールの周囲では、降着円盤からのガス流入やジェット生成など活動的な現象がエネルギーを生み出す「ブラックホールエンジン」として働くと考えられており、理論モデルではこうした現象に磁場が重要な役割を果たしているとされてきた。今回の観測は、実際にブラックホールの周辺で磁力線が複雑に絡まりながら短時間で変動している様子を初めてとらえたもので、理論モデルを観測的に裏付けるという大きな意義を持つものだ。

また、今回の観測は、ブラックホールの姿そのものを撮像するというEvent Horizon Telescope(EHT)の実現に向けても重要なステップとなる。EHTでは、今回組み合わされた望遠鏡群に加えてヨーロッパや南米にある電波望遠鏡も結合させることで解像度をさらに向上させ、ブラックホールの表面ともいえる「事象の地平面(event horizon)」を初めて直接撮影することを目指している。

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