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AppleがSIMフリーiPadを投入した狙い(石川温氏寄稿)

2014年07月03日 20時00分更新

 7月1日、アップルが突然、iPad Air/iPad mini Retinaディスプレイモデルのセルラー版をオンラインストアで発売した。6月10日にNTTドコモがiPadを取り扱い始めて以降、SIMフリー版の発売が期待されていたが、意外と早く現実のものとなった。

 もともと、iPad Air/iPad mini Retinaディスプレイモデルは、海外ではSIMフリーとして使える。そのため、海外で通信費を安価に抑えたいのであれば、そのまま持って行って現地のSIMカードを挿せば使えた。しかし、国内ではキャリアロックがかかっているため、ソフトバンク向けiPadはソフトバンクのSIMカードしか使えないし、KDDIも同様だ。

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SIMフリーになったのは、iPad AirとiPad mini Retinaの全モデルのほか、第4世代iPadと初代iPad miniの16GBモデル。

 アップルストアでSIMフリー版が登場したことで、国内のどのキャリアでも利用可能となった。ただし、ソフトバンクのSIMカードを供給するMVNOがないことを考えると、実質的にはNTTドコモかKDDIのSIMカードを取り扱うMVNOを選ぶことになるだろう。キャリアの縛りがなく、1GBを1000円程度で利用できることもあり、iPad Air/iPad mini Retinaディスプレイモデルを手軽に持ち歩けるというメリットは大きそうだ。

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格安SIMの市場は活況で、各社が魅力的な料金プランを次々と打ち出している。写真は、ワイヤレスゲートの『ワイヤレスゲート WiFi+SIMカード』で、料金プランは月額480円から。

 ここ最近、人気が出始めているMVNOにとって、今回のiPad SIMフリー版の発売は相当な追い風になりそうだ。キャリア縛りのあるiPadを購入すると2年間縛られるうえに、通信料金も手軽だとは言いがたい。MVNOであれば、縛られることなく、自分の使いたいぶんだけの通信料金を支払えばいい。iPadは1年に1度、新製品が出ることを考えると、キャリアに縛られずに購入したほうが、フットワークが軽くなっていいはずだ。

 iPad SIMフリー版の販売は、MVNOにとってみれば、自社のブランドを売り、認知度を上げる絶好のチャンスだろう。最近、MVNOは「格安スマホ」として話題となっているが、一般人からすれば「名前を聞いたことの会社にMNPするのは不安」という人も多い。まず、iPad向けSIMカードを使ってもらってブランド力を高め、信頼を得られれば「次はスマホもMVNOにしよう」という流れになってもおかしくない。一般的なユーザーに「お試しでMVNOを使ってもらう」というのに、iPad向けSIMカードは最適なはずだ。

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Apple Storeでは、Wi-FI+Cellular版をキャリアを選ばすに購入可能。
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Wi-Fi版に比べると1万3000円高い価格設定になっている。

 今回、アップルが日本でSIMフリー版を投入した背景にあるのは、ひとつには日本が夏のボーナス商戦に突入したという点が大きいだろう。iPad Air/iPad mini Retinaディスプレイモデルは発売されてから半年以上が経過する。NTTドコモ版の発売、さらにSIMフリー版の投入となれば、注目も浴びるだろうし、消費者に選ばれるようになる。

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マイクロソフトのWindowタブレット『Surface Pro3』。日本では7月17日に発売予定。

 もうひとつの理由として推測できるのが、日本マイクロソフトの動向だ。同社では7月17日に「Surface Pro3」を発売する予定だ。12インチのタブレットとして、ペン入力を売りとしているが、こちらも夏のボーナス商戦を狙っているだけに注目度はかなり高い。実際、日本マイクロソフトの樋口泰行社長も「発表後、予想以上の反響に驚いている」と語るなど、販売に手応えを感じているようだ。

 一般的な消費者とすれば、初めてタブレットを買おうと思ったときに「iPhoneのように手軽に使えるiPad」と「パソコンとしても使い勝手のいいSurface Pro 3」でかなり悩ましい選択肢となるはずだ。そんななか、iPad Air/iPad mini Retinaディスプレイモデルには「自由にSIMカードを挿せ、外出先でも手軽にLTEが使える」というメリットがある。WiFi版しかないSurface Pro3の弱点を突けるというわけだ。

 もしかすると「Surface Pro3」の盛り上がりに水を差すために、アップルはこのタイミングを狙ったのかもしれない。

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