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2007年6月21日 (木)

WEBサイト運営とコスト削減の取り組みは似ている?

コピー用紙の裏は使うな!―コスト削減の真実

「人件費節約が最も効果的なコスト削減策」「コピーの裏紙を再利用せよ」「事務用品はカタログで一括注文せよ」。これらはすべて、実質的なコスト削減にはつながらないと指摘。問題の1つは効果測定の甘さにあると断じ、例えば自家発電機を導入しさえすれば電気代が下がるといった経営者の安直な考え方が、逆に経費増を招いていたケースなどを示す。さらに、「徹底して経費項目を洗い出す」「『削減可能マップ』を作成する」など、コスト削減の正しいステップを指南する。

この本はコスト削減コンサルを専門に行う企業の社長が書いたものです。コスト削減にまつわる、Tips的な知識が興味を引きます。

しかしこの本の真価はそのような枝葉のTipsにあるのではありません。この本の本当の価値は「いかにして社員のモチベーションを高めるか?」というノウハウが詰まっていることです。この本では様々な実例を挙げながら、社員をいかにして「コスト削減という共通の目標に取り組んでもらうか?」ということをテーマに書かれているのです。

要点はいくつかありますが、ノウハウの大半が以下の3ステップに集約されます。

・コストを見える化(数値化)し
・見える化を通じて、削減目標を定め、全社員が共有する
・目標の達成を通じて、コスト削減が『楽しい』と認識してもらう

「見える化」というのは、トヨタの大成功を受けて社会的ブームにもなりました。トヨタはこの基本をかたくなに守り、毎年2000~3000億円ものコスト削減を達成していますが、それは従業員のモチベーションによって維持されているものです。全社員が一丸となって「見える化」された課題に取り組むことで、トヨタはこれほどのコスト削減を実現しているわけです。

さらに、この本の中ではPDCAサイクルという言葉を使ってコスト削減の取り組みを説明しています。この言葉は業務マネジメントでは良く聞く言葉の一つで

 計画(plan)> 実行(do)> 評価(check)> 改善(act)

を順番に実行することを重要性を表現したものです。

この中でも特に重要なのは『評価(check)』の部分です。何故なら、計画と実行は多くの企業が容易に実践できますが、『評価(check)』の部分では多くの企業が挫折してしまうからです。その結果、続く「改善(act)」プロセスが行われなくなります。実際、セキュリティへの取り組みなどでも、最初は威勢良くやってはみたもの、Checが出来ずに挫折し、続いていない事が殆どです。

実は冒頭のコスト削減コンサルの話も、トヨタの見える化も、『評価(check)』をいかにして行うかというためのノウハウなのです。

例えば、冒頭のコスト削減コンサルの例だと、電気代の削減率をPCが起動するたび表示されるように掲載しました。普通なら総務の社員しか知らない電気代を、数値として見える化し、しかも全社員がそれを共有するという仕組みです。この仕組みであれば否応なしに、削減への取り組みが全社員間で評価されることになります。

そして、評価を現実に突きつけられると、社員は自発的に「改善(act)」を行うようになります。しかも、その改善案はコンサルタントが提案するありきたりの改善案より、効果がある場合がほとんどです。何故なら、現場の社員こそが、自社の業務にもっとも詳しく、課題を解決する方法も心得ているからです。

こうしてPDCAサイクルが回り始めるわけですね。冒頭の本では、このPDCAサイクルを2回以上回せば、企業内に自発的に改善を行う文化が根付き、継続的なコスト削減が可能になると訴えています。


さて‥‥、ここまでコスト削減の話をしてきましたが、この考え方ってWEBサイトの運営でも同じではないでしょうか?WEBサイトにおいても継続的な改善というのは必要です。だとすれば、必然的にPDCAサイクルをまわす必要が出てくるはずです。

ところが、「評価(check)」がないがしろになって、いきなり「改善(act)」に入っているなんてことはないでしょうか?あるいは「評価(check)」の認識がお客様とずれてる、なんてことはないでしょうか?これが冒頭の『問題の1つは効果測定の甘さにある』という言葉につながります。

システムを納品するビジネスなら、ユーザー部門の方と会話をするだけで必然的に「評価(check)」が行われます。そういう意味ではシステムの側は恵まれた環境にあります。ところが、WEBサイト運営ではエンドユーザーは不特定多数のサイト閲覧者であり、評価そのものが困難を極め、その上コストもかかります。評価にかかるコストを削減したくなるのも、自然な成り行きかもしれません。

しかし、評価(check)をないがしろにしては、WEBサイトの運営も回るはずがないのです。

リピーターが何割いて、そのうち何割が自社内アクセスで、何割が一見様で、その一見様はどんなユーザーなのか、数値の裏からそこまで読み取らずして、どうやってエンドユーザーを想像することが出来るでしょうか。また、どうやってサイトを「改善」すればよいのでしょうか。

ユーザーの顔が想像できなくなると、改善の方法が見えなくなるのはもちろん、サイト更新のモチベーションが続かなくなります。そのうち、サイトの更新に飽きて、数年更新されない企業サイトなんてものができあがってしまうかも。

こうした教訓は言い換えれば「アクセス解析をもっと活用しましょう」って言葉だけで表現できてしまう話なのかもしれません。しかし、冒頭のコスト削減の本を読んでいたら「実はアクセス解析ってのは、単なる集計だけでない、もっと重要な意味があったのではないか」そう気づかされたような気がしています。

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