NY原油、141ドル台 連日の最高値更新
27日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、指標となる米国産標準油種(WTI)8月渡しが通常取引前の時間外取引で、1バレル=141・71ドルまで急上昇、26日につけた最高値(140・39ドル)を更新した。 米国、東京に続き、アジア、欧州の株式市場が下落したため、原油など商品市場への資金逃避が加速。主要通貨に対するドル安傾向を材料に、ドル建てで取引される原油の割安感が増し、一気に買い進まれた。 市場関係者は「26日の相場急騰についていけなかった長期資金が流入した」と話した。 【ニューヨーク:6月27日共同】 原油高騰についてこちら(吉岡家一同おとうさんのブログ)経由でこちら(日々一考(ver2.0))で面白い議論があったのでリンク。 クルーグマン教授とカルボ教授の原油価格高騰の原因についての議論ですが、個人的にはどっちかというとカルボ教授の見方に賛成です。原油やコモディティが最終的には需要と供給の一致点で価格がつきます。この場合の需要は単純な消費だけでなく、在庫投資も含みます。 ヘッジファンドや年金によるコモディティ投資ですが、ヘッジファンド等は最終需要者ではないため、どこかの時点で買った原油を必ず売ることになります。つまり、あくまで流動性の供給者でしかないと思います。一方で機関投資家・年金基金などはもっと長期での投資となります。これは個人的には”ウォールストリートのガスタンク”の在庫投資と捕らえています。年金基金や銀行は”先物”という、物流上のコストの安い金融商品をつかって、不動産や森林といった、実物のアセットに投資している、と考えればわかりやすいと思います。 そして、”じゃあなんでコモディティに投資するの?”というのは、たぶん”新しいアセットクラスで資産分散ができて、資産のリスク/リターンが改善するから”というのが答えだと思います。でもこの答えだと、多分議論がすれ違いがちになるんでしょうね。さらに上記のサイトの議論にありましたが、多くの”金融機関”のリスクプレミアムは現物資産の需要者に比べて比較的小さい(規模が大きいため、リスクを取れる)と考えられます。 じゃあこの在庫投資はどれくらい影響があるのか? 世界の原油消費量はここによると、2005年で8245万バレル/日。年間で約300億バレル。一バレル100ドルとすると、約3兆ドル(315兆円!)です。世界の機関投資家・年金基金の資産残高は少なく見積もっても5兆ドルはくだらないと思います。今週のエコノミストかなにかに書いてありましたが、現在年金の1%程度しかコモディティに投資してないと考えると、たとえば500億ドルがコモディティに振り向けられて、そのうち20%が原油だとすると、100億ドル。バレル換算で1億バレル(1バレル100ドル)の在庫投資となります。で、例えば現在のヘッジファンドの残高が約1兆ドルだといわれています。現在のヘッジファンドの多くが機関投資家や年金基金からお金を預かっていると考えると、世界の機関投資家・年金基金がみんなでヘッジファンド向けなみにコモディティに投資すると、ヘッジファンドの預かり資産のざっくり30%が年金のお金だと考えると3000億ドル。同じくらい投資すると原油はさらに500億ドル(5億バレル)投資されることになります。 一方で、現在原油高騰の一つの原因とされている中国の石油消費は昨年3億4000万トン、前年比6.3%増だということは、昨年の中国の原油の消費の伸びは2000万トン、1トンあたり7.5バレルとすると一年で1億5000万バレル!の増加。こっちの方がはるかに影響が大きそうです。 ただ、上記に書きましたが、現在世界の原油がWTIといった”先物”のリンクで価格決定されているとのことで(実際はどうなんでしょうか?)、”先物”という”単なる金融派生商品”が、現物の価格を振り回している、尻尾が体を振り回している印象があります。さらに、上記のようにもし年金基金等がその資金をコモディティに向けたとき、かれらは”現物の”在庫投資ができないため、相対的に規模の小さいな”先物”に集中しがちとなります。 先物の規模を見てみると、一般にWTI原油と呼ばれる、ウェスト・テキサス・インターミディエイト原油はテキサス州を中心に産出される軽質油でニューヨーク商業取引所(NYMEX)においてNYMEX Light Sweet Crudeとして先物が取引されています。 CFTCのサイトからその先物の建玉残を見ると、6月17日現在で13億3500万バレル分の先物が建っています。金額にして1335億ドル(1バレル100ドル)(13兆円)。投資銀行やHF、年金基金等のお金だと思われる、ノンコマースの建玉は約2億バレルです。この市場規模だと、10億ドル程度の資金流入で大きく動くこと間違いなしです。つまり、大手の機関投資家・年金基金(そこそこの機関投資家・年金基金だと100億~200億ドル程度の資金がある)が少しでもコモディティに投資しようもんなら、大きく価格を動かしてしまうこと考えられます。そして、本来 Pf = (i + Sc +1)P (Pf : 先物価格、 i :金利、 Sc:ストレージコスト、P:原油価格) という式のはずが、 Pf / ( i + Sc + 1) = P となり、さらに将来の期待リターンから先物価格が現物から乖離してしまい、それが現物価格に反映されて、、、というポジティブフィードバックが生じているような気がします。 つまり、 Pf = (i + Sc + 1 + RP ) P ( Pf / (1 + Sc + i + RP ) = P もしくは (Pf - P) / P = Sc + i + RP ) (RP:ここでは将来の需要期待:リスクプレミアム、、なのか??:上記リンク先では、iを単純な金利ではなく、リスクプレミアムを含んだ数字としています) として考えると、リスクプレミアムの縮小が価格を押し上げる、、ということになります。 【追記】じゃあなんでリスクプレミアムなんて項目が入ってくるのか?通常、先物は現物の流動性があれば即座にアーブが働きますが、WTIは現物の産出は一日100万バレル以下。現物はどれだけ見積もっても年間4億バレル以下しかありません。つまり、少なく見積もっても建玉の10億バレル分はオープンポジション、もしくはプロキシヘッジ(代替ヘッジ)分だと思われます。プロキシヘッジということは、裏にWTIにリンクした原油が相当数ある、、と考えられます。つまり、先物が”現物”から乖離しているがために、現物価格から乖離する余地があり、リスクプレミアムが入り込む余地がある、、と考えます。 そして、リスクプレミアムの縮小が”先物を通じた在庫投資”を積み上げさせる、そして需給の乱れを起こして先物価格を押し上げる、、、ということではないでしょうか。 、、、まさにこれはバブルのスキームなんですけどね、、、。 あ、これはあくまで個人的な見解です。まったく脈略ありません。為念。 【追記】そして、その在庫投資をはきだすのはリスクプレミアムの上昇、つまり金利の上昇や不況等での需要の後退といったものが考えられます。そうなると、逆回転を始めることになります。ただ、上記にもかきましたが、こうした先物等よりも、中国といった新興国の実需の影響のほうがはるかにでかい、と思われます。また、上記のような”先物から現物へのフィードバック”に関しても、グルーグマン教授は否定しています。 【追記2】もちろん、この話題は”卵が先か、鶏が先か”議論だと思います。現在多くのコモディティが上昇していますので、”それを見越して”先物が上昇しているとも思います。なんせ、上記は原油のことを書きましたが、先物のない鉄鉱石やら石炭やらが2倍になったりしてますしね。
by ttori
| 2008-06-27 21:22
| Market(マーケット事件簿)
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