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特撮博物館 雑感

特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技

 遅まきながら、見てきた。
 平日だったし、会期も終わりに近いし、チケット買うのにも並ばなかった。もう混んではいないだろうと思ったら、大間違い。大混雑!というほどではないけれど、人と体がぶつかりそう(あるいは、ぶつかる)くらいの混み具合だった。

 その原因は、緻密かつボリュームたっぷりの展示物とテキスト。テキストは展示物の説明&館長庵野秀明のコメントの二段構成になっていて、そこに成田亨の雑誌インタビューや展示コーナーの概要が加わるので全てに目を通すのは難しい。人が多くてかなり苦労します。拘りっぷりが嬉しいけれど思うように見られないというジレンマ。この辺りは、開催側で入場者を区切る・テキストをコンパクトにするなどして工夫して欲しかったところ。

 音声ガイドは全70項目、当時の番組のSEや(ほんの少しの)BGM、インタビューが含まれてて抜かりのない仕事ぶり。使ってない人多かったけど、五百円程度の金は惜しまずに投資すべき。ペアで借りると、一人あたり四百円になるけれど個人的にはおススメしない。ただでさえ混んでいて身動きが取れないのに、二人で一台のナビを共有するために更に行動範囲が狭まる。連れがいても各々借りた方がいい。

 巨神兵東京に現る、は特撮の手触りと現代映像が見事にミックスされた良短編だった。展示物があまりに素晴らしすぎて目玉であるはずの本作がやや霞んではいるものの、「オトナたちの本気のヤンチャ」ぶりが感じられる。子供の頃、着ぐるみとセットの産物だと分かっていても、特撮に対して抱いていた漠然とした恐怖や不安・憧れ。作り手たちの本気が、そんな感情を揺り起こしてくれる。

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 最後は巨神兵東京に現るのミニチュアオープンセットの展示。実際にセットの中に入って撮影可。特殊効果を体験する撮影スペースも併設されているけれど、こちらは記念撮影が基本になっているのでテンポ悪し。私はスルー。写真撮られるの嫌いだし。

 物販は会期の終了が迫っているためか、売り切れている商品もチラホラ。海洋堂製の500円ガシャ(巨神兵東京に現るヴィネット)はまだまだ余裕がありそう。予想外だったのは、三種+カラバリ三種だった点。数回回せば終わりかと思っていたら……一回で潔く切り上げて、代わりにレジ近くの自販機でガメラのメダルを購入。

megame.jpg

 殆ど注目されてないけれど、出来はよし。
 後ろに映っているのは会場で配布されているEVAのフリーマガジン。会場限定ではないものの、EVAグッズも売られていた。ちゃっかりしてるね。

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 特撮を支えてきた才能と情熱を存分に体感できる、素晴らしい展示会だった。特撮に関心がなくとも、彼らの熱意には心を打たれるはず。足を運べる距離にいる人は是非、特撮世界を体験してきて欲しい。


テーマ : 特撮
ジャンル : サブカル

映画感想:アメイジングスパイダーマン

メイジングスパイダーマン

 設定をリブートしての再出発となったスパイダーマンを撮ったのは、『500日のサマー』にて映画デビューを果たしたマーク・ウェブ。『500日のサマー』のようなポップな映画になるかと思いきや、予想に反して堅実な撮り方をしていた。

 サム・ライミ版との大きな変更点は、ピーター・パーカーに「主人公である必然性」をもたらしていること。ライミ版は偶然からスパイダーマンになるのだが、ウェブ版は運命に導かれるようにしてスパイダーマンとなる。
 この結果、ヴィランとの対峙も「偶然ではなく必然」となり、ライミ版の「偶然ヴィランが誕生して、それと闘います(ライミ版の〝必然的〟な闘いはゴブリン親子のみ)」という流れとは大きく異なるものとなった。よりドラマをスムーズに展開させやすくするための変更点と言っていいだろう。

 二つ目の大きな変更点は、私生活の充実。ウェブ版のピーターは、ガールフレンドを難なく得、学内での立場も(スパイダーマンとなった後は)決して低くない。大してライミ版は、「ガールフレンド? いない。学内の立場? 勉強は出来るけど微妙」と、ないないづくし。
 抑圧された悩めるヒーローは、親しい人の死以外さしたる悩みを持たないヒーローへと変貌した。このトーンの変化もまた、物語に変調をもたらすこととなる。(もっとも、グウェン・ステイシーの行く末によっては、ライミ版の色合いに近くなるかもしれないが)とにかく、話が軽いのだ。悩みは一瞬で、表面的で、葛藤を抱くまでには至らない。抱いていたとしても、それを演出で充分に表現できていない。軽いなあという印象が残る。「ポップなヒーロー」に振り切ったスパイダーマンならそれもアリなのだが、変に「宿命」という重い要素を持ち込んだせいで不協和音を起こしている。ドラマは軽いのに、設定は重い。
 ちょっとシリアスだけど気軽に見られるというラインを目指したのかもしれないが、長編二作目のマーク・ウェブには荷が重かったようだ。

 とはいえ、部分部分は光るものがある。アクションはライミ版より確実に進化しているし、終盤の市民との連携も感動的だ。高校生活の瑞々しさはライミ版とは比べ物にならないし、スパイダーマンならではのユーモアも、ウェブ版が上回っている。ヒロインについてはノーコメント。あくまで個人的にだがライミもウェブも、女の子を可愛く撮れる監督ではないと思う。『500日のサマー』のズーイー・デシャネルは『New Girl』の方が輝いていて、キルスティン・ダンストは『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』が断然いい。

 閑話休題。

 最後の大きな変更点はやはり、3Dの導入だろう。ユニバーサルスタジオの「アメイジングスパイダーマン・ザ・ライド」でスパイダーマンと3Dとの相性はライミ版の誕生よりも前に実証されている。さぞかし素晴らしい画面作りをしてくれるだろうと思っていたのだが……不満の残る結果となった。現在公開中のアベンジャーズよりは遥かにましな3Dだが、アバターにはまったく届いていない。多くの3D映画に当てはまる、中途半端の一言。
 これもまた、ポップにもシリアスにも振りきれなかった本作の宿命なのかもしれない。


 ★★★☆:単純にアクション映画として見るならアリ。他のアメコミ映画と比較すると△。

テーマ : 映画評価
ジャンル : 映画

邦訳アメコミガイド X-MENファーストクラス 明日への架け橋

X-MEN:ファーストクラス 明日への架け橋 (ShoPro Books)X-MEN:ファーストクラス 明日への架け橋 (ShoPro Books)
(2011/06/11)
ジェフ・パーカー

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 WRITER:Jeff Parker
 PENCILERS:Roger Cruz with Paul Smith
 INKERS:Victor Olazaba&Roger Cruz with Paul Smith

 ★★★★

 X-MEN FIRST CLASS#1~#8を邦訳。マーヴェルユニバースにX-MENが登場した時、彼らはまだティーンエイジャーだった。コスチュームも現在のようなスタイルではなく、黒と黄色を基調としたお世辞にも恰好いいとは言えないタイツ姿。そんなかつての彼らの活躍を、このシリーズでは現代風のアートで語り直している。X-MEN創生期ということで、確固たる敵はいない。全編を通して、どこかのんびりとした空気が流れており、ゆったりと物語を楽しむことが出来る。
 アートも健闘している。レトロコスチューム、スカーレットウィッチなど、現代の感覚では受け入れがたいデザインを原型を崩さず(かつ、可愛らしく)描き出す。(ただし、表紙とはアーティストが違うので注意)

 注意点が二つ。一つ、映画Xメンファーストジェネレーションとの関連性は全くない。ノリ自体正反対なので、原作本としては見ないこと。二つ、多彩なゲストキャラクターが登場するが、小冊子などによる補足は一切ない。アメコミの邦訳は現在、小プロ・ヴィレッジ・ジャイブの三本柱。活発に活動しているのが小プロとヴィレッジなのだが、小プロは最近明らかな手抜きが目立つ。ジョーカーの序文のレイアウトは最低だし、小冊子がつかないのが標準となりつつある。往時の小プロならばこんなところで手を抜かないだろう。復刊・復刻ばかりに力を注ぐのではなく、新刊もキッチリ仕上げてほしいところだ。

 尚、X-MEN ファーストジェネレーションのブルーレイは九月二十八日に発売予定。BD+DVDセットが標準で、ケースがDVDサイズのものとBDサイズのものに分かれるという仕様。メモリアルフィルムや非売品オリジナルブック、スペシャルアウターケースを同梱したコレクターズエディションに加え、シリーズ全五作を収録したBOXも発売される。節操のないラインナップだが、映像を楽しむ分には通常版を買えば問題ないだろう。
X-MEN:ファースト・ジェネレーション 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]X-MEN:ファースト・ジェネレーション 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]
(2011/09/28)
ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー 他

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テーマ : アメコミ
ジャンル : サブカル

邦訳アメコミガイド ソー:マイティアベンジャー/マイティソー:アスガルドの伝説

ソー:マイティ・アベンジャーソー:マイティ・アベンジャー
(2011/06/30)
ロジャー・ラングリッジ

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 名タイトルの#1~#8を邦訳。ソーの映画化に合わせてスタートしたシリーズで、既存のユニバースとの関わりは薄く、独立した話となっている。当初は#9以降の刊行も考えられていたようだが、あえなく休刊。後の展開のために張ってあった伏線が機能しないままとなってしまった。
 肝心の内容は、映画と似たり寄ったりで深みはない。それでも映画は演技と映像の力で存分に楽しませてくれたが、コミックではそれがない。アートは悪くこそないものの、魅力的ではなく、決め手に乏しかった。
 映画版のレトロアーマーを独自にアレンジしたアイアンマンは一見の価値ありなのだが。
 ★★★

マイティ・ソー:アスガルドの伝説 (ShoPro Books)マイティ・ソー:アスガルドの伝説 (ShoPro Books)
(2011/07/16)
スタン・リー

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 ャック・カービーのアートを、現代のカラーリングで復刻したシリーズ。表紙と中身ではアートが違うので、要注意。ジャック・カービーの名前を知らず、表紙のアートに惹かれて買うと痛い目に遭う。
 また、通常のコミックと違い、一話ごとのページが少ないため、やや単調な印象を受ける。一話完結でキャラクター紹介に割かれる前半はその傾向が顕著で、読んでいて辛いものがあった。その代わり、後半からはシリーズものになり、ぐっと面白くなる。全ての登場人物が作中で紹介されるため、予備知識を全く必要しないのは魅力と言えるかもしれない。
 ただし、ジャック・カービーの名前とアートを知っていることが大前提。初めての邦訳アメコミ本としても、ソーへの導入としても、おススメ出来ない。
 ★★★~★★★★★(読者の年齢・カービーへの理解度で大きく変わる)

テーマ : アメコミ
ジャンル : サブカル

邦訳アメコミガイド ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト/ニューアベンジャーズ:セントリー


ニューアベンジャーズ:ブレイクアウトニューアベンジャーズ:ブレイクアウト
(2010/05/29)
ブライアン マイケル ベンディス

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 THE NEW AVENGERS#1~#6を邦訳。前身にあたるアベンジャーズが解散を余儀なくされ、ニューアベンジャーズとして再結成されていくまでのストーリーが描かれる。いわばシリーズの再始動であり、アイアンマンやキャプテンアメリカに加えてウルヴァリンやスパイダーマンといった(当時)映像化されていたキャラクターが加入する。日本には馴染みのないルーク・ケイジやスパイダーウーマンといったキャラクターも出てくるが、有名キャラが半数以上を占めるため取っ付きにくさは感じない。
 話の筋は単純に思えて、後々の展開への伏線が細かに散りばめられており、このコミック単体での評価は難しい。その分、アートは上質で、いい意味でアメコミらしい仕上がりになっている。スタンダードで堅実なアートは日本人が抱くアメコミ観にかなり近いのではないだろうか。
★★★


ニューアベンジャーズ:セントリーニューアベンジャーズ:セントリー
(2011/07/30)
ブライアン・マイケル・ベンディス

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 THE NEW AVENGERS#7~#13を邦訳。セントリー編と、シークレット&ライズ編の前編を収録。ブレイクアウトから一年以上の期間を経て邦訳され、続刊は八月に刊行予定。同じく刊行を控えるシビルウォーとの兼ね合いもあるのだろうが、翻訳のスパンが長すぎるというのが本音である。
 セントリー編は試みこそ興味深いものの、ストーリーラインが混濁している印象を受けた。読めるし理解できるが、面白さには繋がっていないような気がする。
★★★

 正直なところ、この両作品を初心者にはおススメ出来ない。アートだけを楽しみたいなら十二分に応えてくれるが、ストーリーを味わいたいならば他の邦訳本を買うべきだろう。

テーマ : アメコミ
ジャンル : サブカル

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