斗比主閲子の姑日記

姑に子どもを預けられるまでの経緯を書くつもりでBlogを初めたら、解説記事ばかりになっていました。ハンドルネーム・トップ画像は友人から頂いたものです。※一般向けの内容ではありません。

壇蜜さんの人生相談が炎上気味だけど、最初から壇蜜さん宛と考えれば見方が変わるかも

この人生相談が話題になっています。

(悩んで読むか、読んで悩むか)困った男子には「大人」な対応で 壇蜜さん:朝日新聞デジタル

■相談 中学校で男子からセクハラ、イライラ

 「今日のブラジャー何色?」と毎日のようにクラスのある男子に聞かれます。最近では「胸をもませるかパンツを見せて」と言ってきます。私はスポーツをしていて、ショートカット。筋肉質だし、エッチな体形でもありません! もちろん「嫌だ!!!!」と毎日言っていますが、一向にやめようとしません。塵(ちり)も積もればなんとやらで、すごくイライラします。

 (福岡県 女子中学生・12歳)

■今週は壇蜜さんが回答します

※以下、壇蜜さんの回答

正確には相談自体よりも、壇蜜さんの回答について、賛否がはっきり分かれる形で盛り上がっていている感じですね。今は批判が優勢です。セクハラに「大人」の対応をさせることを推奨させるアドバイスなんておかしいみたいな感じで。

私は壇蜜さんの回答自体はあまり興味がなかったので、自分ならどう回答するかを考えてみたりしました。

どうしよう

※今年2月発売なのにKindle Unlimitedの対象になってる!

 

相談は壇蜜さん宛のものだった

昨晩、相談記事を改めて読み直していたら、最後にこんな文章があったことに気付きました。

◇次回は社会学者・詩人の水無田気流さんが回答します。悩みを募集します。住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記し、郵送の場合は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールは[email protected]へ。採用者には図書カード2000円分を差し上げます。

※太字は筆者

「あれ、この人生相談って誰が回答するか分かっていて、悩みを送る形式なのか?」と思って、壇蜜さんの前の回答者の記事の文末を見てみたら、やはり、

(悩んで読むか、読んで悩むか)経験で人は変わる、見守る勇気を サンキュータツオさん:朝日新聞デジタル

◇次回(8月7日)はタレントの壇蜜さんが回答します。悩みを募集します。住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記し、郵送の場合は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールは[email protected]へ。採用者には図書カード2000円分を差し上げます。

※太字は筆者

壇蜜さんが回答することは分かっていたようです。相談者さんは壇蜜さんに答えて欲しくてあの相談をした。そうすると、この人生相談の回答は見方が変わってきます。

 

ファンならば喜ぶ回答かもしれない

セクハラに対し、壇蜜さんは、本人としては「大人」と考える、手をぎゅっと握って微笑む対処を推奨し、いたずらであって愛情表現の裏返しだから「困らせても私は好きにならない」と答えるのも効果的とします。そして新聞に投稿して相談した相談者さんはもう「大人」と言う。これを12歳の女の子への、実行すべき、ピュアなアドバイスとしてみれば、果たしてどうかという批判はありえると思います。

 

ただ、壇蜜さんというキャラクターを知って、この相談を送っている相談者からすれば違和感のない回答かもしれないません。私自身は壇蜜さんのファンでも何でもないですが、姑が大好きで、時々壇蜜さんの話をします。

姑と壇蜜 - 斗比主閲子の姑日記

私の理解では、壇蜜さんは自分のポジションをよく分かってコメントをする聡明な人です。「大人」の女性の壇蜜さんが、相談者さんを「大人」扱いするというのは、相談者さんはそれだけで喜びそう。回答内容自体も、壇蜜さんらしさがあり、壇蜜さんに憧れている人なら「さすが!」と思うのではないでしょうか。(実際、ネットでも賛美の声は確かにある。)

この人生相談の回答というのは、壇蜜ファンの中では綺麗に完結していると読めるわけです。

 

相談自体がセクハラではないか?

ここで終わりにしてもいいんですが、私はまた違う見方もできると考えています。ここまで来ると考え過ぎと言われるでしょうけどね。

相談文について、

「今日のブラジャー何色?」と毎日のようにクラスのある男子に聞かれます。最近では「胸をもませるかパンツを見せて」と言ってきます。私はスポーツをしていて、ショートカット。筋肉質だし、エッチな体形でもありません! もちろん「嫌だ!!!!」と毎日言っていますが、一向にやめようとしません。塵(ちり)も積もればなんとやらで、すごくイライラします。

これを書いているのが、12歳の女の子でないとしたらどうかという見方です。

「私はスポーツをしていて、ショートカット。筋肉質だし、エッチな体形でもありません!」は、つまりは、ロングヘアーの、筋肉質でない、エッチな体形の人であればセクハラ発言をされるだろうということです。壇蜜さんは、ロングヘアーで、恐らくエッチな体形の人と思われている。塵も積もればなんとやらという表現も賢さではなく、単に(古い表現を使う)素が出ているとも見ることができる。

そうすると、実はこの相談者は、実は少し年のいっている人で、壇蜜さんにセクハラ目的でこの相談文を送りつけたという解釈もできます。壇蜜さんなら「今日のブラジャー何色?」「胸をもませるかパンツを見せて」と言われてもおかしくないよね?と。

この辺は、相談者本人が本当に実在するか確認しないと分からないのでどこまでいっても推測でしかありません。ただ、相談者がセクハラをするつもりだとして、壇蜜さんの回答を読むと、またこれが面白い。

冒頭で『きまぐれオレンジ☆ロード』というある年齢以上の人にヒットする作品をチョイスしたのも、

「塵も積もればなんとやら……」の言い回しが妙に聡明(そうめい)で大人びている貴女

単に『聡明』ではなく、『妙に聡明』としているのも、

貴女はもう大人です。だって、新聞の相談欄に相談する聡明さがあるのですから。

と最後に締めるのも、実は壇蜜さんは相手が12歳の女の子ではないと思って回答しているようにも取ろうと思えば取れます。

そして、

ちなみにその困った君はきっと貴女が好きで、ちょっかいを出すしか愛情を示せないのでしょう。「困らせても私は好きにならないよ」も効果的なセリフとしてここに書いておきますね。

この部分も、「(私が好きでちょっかいを出すしか愛情を示せないけど、こんな相談で私を)困らせても私は(相談者さんを)好きにならないよ」というメタ的な「大人」のいなしをしているとも受け取れます。相談者さんが喜ぶかもしれない「嫌だ!!!!」という対応はしていない。

こう考えると、凄い情報戦に見えます。実際はそうではないでしょうが、あくまでそう読める可能性もあるということで。

 

締め

私は人生相談系では、読売新聞の『人生案内』が一番好きなんですよね。

『人生案内』では、この朝日新聞の人生相談のように回答者が誰になるかは決まっていません。また、回答者には生粋のトラブルシューターが多く、相談を自分の個人的な経験だけに基づいて回答しようとはしません。特に野村総一郎さんのスタンスが素晴らしい。

今回の壇蜜さんの人生相談でも、先日話題になった高橋源一郎さんの毎日新聞での人生相談でも、相談自体は脇役扱いです。メインは回答。

回答者のファンからすれば、それが当たり前だし、確かに読み物としての面白さはあります。

ただ、私はやっぱり、相談を誰もが実現可能な方法で提案している(読売新聞の『人生案内』のような)人生相談の回答が好きだなとつくづく思いました。

追記:私だったらどう回答するか。⇒ 壇蜜さん宛の人生相談に勝手に回答してみる - 斗比主閲子の姑日記

 

ぼーっとしている人が「自分の人生と向き合う」ためのQ&A30

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