最高・最強・最終◆上田岳弘『太陽・惑星』
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昨日の投稿の続き。
昨日の投稿はこちら。
◆惑星
作中でも触れられてるけど、映画「マトリックス」の機械に繋がれてる人類の話。
「最高製品」という端末に身体を繋ぐことにより、全人類が連結し、巨大な夢を見る。肉体は最高製品に管理され、世界の均衡は常に保たれた状態になる。
「最終結論」という、全知全能の精神科医が、「最強人間」という「最高製品」を世に送り出す人物に対して出すメールを読む形式でストーリーは進む。最高とか最強とか出てきてよくわかりにくいが、要は全知全能の能力を持つ「神」のような存在が、最強の頭脳や能力を持つ「人間」と対決する、という構図。
ただ、対決といっても直接のやり取りは全然なくて、「最終結論」が過去から未来に至るまであらゆる人物の思考を把握したうえでメールにて「すでに起こっていること」「これから起こること」を滅茶苦茶な時間軸で語り掛ける。
最終結論はなぜ最終結論なのか、結論を知っているのになぜわざわざメールという回りくどい方法で最強人間に語り掛ける形式をとっているのか。この謎は結末で明らかになるけど、そこに至るまでの最終結論の「視点」が超越的で引き込まれる。
そう、「太陽」も「惑星」も、そして先日読んだ「私の恋人」も、この超越的な視点が重要であり、面白さの一因になっている。
「わたしが」のような一人称ではなく、また神の視点やテレビカメラの視点のような完全な第三者の視点でもない。第三者っぽくあるのだが、ストーリーに絡んでくる個を持った者が超越的な視点で綴ることにより、時間や個人の思考を飛び越えて話が進む。この、「何でも知ってる人」が俯瞰した視点で語るので、バラバラに登場する人物や個々の話が一つに繋がっていく様を「見せられる」感覚が新鮮で面白いのだ。世界が今まで経験したことのない世界なので、作者の頭の中がどうなってるのか本当に気になる。
今後の作品もとても楽しみ。こういう出会いがあるから読書はやめられない。