迷いながらも勉強会に参加していくひとつのやり方。
最近、勉強会やコミュニティの入口で迷子になっている方とお話しました。
その方曰く、勉強会やコミュニティに対してこんなイメージを持っているそうです。
- 技術力/知識がないので、自分が参加してもよいのか悩むことがある
- 基礎がわかってないと「そんなのもわかってないの?」と言われてしまいそう
- エキスパート(モヒカン)たちはなんでも知ってる
- どこまで勉強したらコミュニティに参加しても恥をかかないんだろうか
- 今の発表、よく分からなかったけど、周りの人達は理解してるんだろうな…
- 忙しくて勉強する時間がとれないと、どんどん置いていかれてしまう気がする
あるタイミングで勉強会で何度かお会いした別の方も、表現は違えど似たようなことをおっしゃっていました。
おそらく、僕は勉強会によく出没して発表などもしているので、
彼らの言うエキスパート(モヒカン)に該当しているかと思う*1ので 1エントリー書いてみることにします。
技術力/知識がないという不安
*2
我々が参加しているのは、IT 技術が中心となるコミュニティです。
そのため、どうしても技術力や知識が少ないと話題についていけない部分があります。
ここで言う技術力、知識というのは、IT 技術そのものです。
そこには数多くの開発言語があり、それぞれにいくつものフレームワークが存在し、
さらに多種多様なライブラリが存在します。
また、アルゴリズムやネットワーク、ハードウェアや OS など広範囲な話題があり、
しかもそれぞれのテーマは深淵であるため、どれかひとつに絞って習得するとしてもかなりの労力が必要です。
では、勉強会に参加するのに最低限必要な知識というのはなんでしょうか。
なにかしらの言語をマスターしていることでしょうか。
オブジェクト指向を、デザインパターンを、Linux コマンド群を理解していることでしょうか。
これに対する僕の回答は「なにひとつとして前提はない」です。
もしひとつの言語も知らなくても、プログラミングの定石やコマンドの使い方を知らなくとも、
それを理由に「参加してはいけない」などといわれることはありません。
もちろん、IT 技術に関して一切何も知らない状態で参加をして「楽しい」かといわれると難しいと思います。
何を言っているかほとんどわからないでしょうし、目の前で宇宙語で話されている気分になるかもしれません。
話を理解するために、その勉強会/コミュニティに近い分野のことを知っておいた方が楽しいかもしれません。
それでも、あなたがその勉強会/コミュニティに興味が有るのであれば
前提となる知識などを考えこんだりせず、飛び込んでみてください*3。
僕の知る多くのコミュニティは、初学者が飛び込んできても丁寧に教えてくれていました。
少なくとも門前払いしているところは一度も目にしたことはありません。
ああ、ひとつ書き忘れました。
よく見かける勉強会やコミュニティは同好の士の集いという側面を持っています。
ですから、そのコミュニティで扱っているもの(言語とかツールなど)に興味が有った方がいいかもしれません。
他の参加者がすごく見える不安
*4
はじめて参加した勉強会では、まわりにいる参加者たちがとかくすごい人に見えがちです。
僕はまだ○○について勉強し始めたばかりだけど、隣の人はもうマスターしているんだろうなあ。
発表しているあの人は、○○に関することであればなんでも答えられるんだろうなあ。
きっと○○だけでなく、××も△△もなんでも使いこなせるに違いない。
そんなときは、手のひらに人という字を書いて、おもいっきり噛み付きましょう。
痛みで目が覚めたらしめたものです。
もしかすると、隣の人はまだ始めたばかりで、発表者は先週理解したことをどや顔で離しているだけかもしれません。
あんなこともこんなことも知ってそうな態度なのに、サーバの電源さえ切ることができないかもしれません。
実際に彼らに知識があるかどうかはともかく、知らない人を見てすごい人だと想像するのはあまりいいことではありません。
技術にはいろんな分野があるので、その全てに精通した人なんているわけありませんし、
誰でも最初は初学者でしかないのです。
ネットワークに強い人はプログラミングもマスターしているかは言えませんし、
プログラミングをマスターしているように見える人も苦手なジャンルはあるはずです。
実際に確かめてみるには、その人と話してみるのが近道です。
難しい発表を聞いて、全然分からなかったときは周りの人に聞いてみましょう。
単に発表が下手なだけかもしれませんし、隣の人も理解できなかったかもしれません。
もし理解していたら、どういうことか教えてもらえるかもしれません。そしたらラッキーですね。
常識とか正しさとか
*5
さっきの発表、○○について聞いてみたいけど、基本的なことだったら聞くのも申し訳ないし…。
間違ったことを言えば怒られそうだし、みんなの知ってる常識を物知り顔で話しちゃったらどうしよう…。
そんなことを思ったことはありませんか。僕はあります。
自分の知らない分野のコミュニティに参加すると、まわりに圧倒されて「正しさ」とか「常識」とかを考えがちです。
間違ったことをいうと叩かれてしまうような気がして、自分から声を上げるのが怖くなります。
ここは逆の立場で考えてみましょう。
あなたが質問される側だったら。もしくは、誰かが間違ったことを言っているのを見かけたら。
あなたならどうしますか?
基本的なことを聞かれて、顔を真赤にして怒りますか?
間違った人を指さして、その人のことを笑いますか?
多くの人はそんなことをしないはずです。
2ch や Twitter などでは顔が見えずに強い言葉が飛び交いがちですが、
そういう場所でのバカな人を除けば、間違っていたって常識を知らなくとも怒られることはないはずです。
先程も書きましたが、勉強会やコミュニティは同好の士という側面も持っているので、
多くの人は他の参加者のことを「仲間」と見ているような気がします。
ですから、正しいとか常識とかそういったことに捕らわれずに、何度も声を上げていってみてはいかがでしょうか。
できれば、いつか他の初学者がやってきた時に手伝ってあげられるととてもいいですよね。
マサカリ
*6
先ほど
2ch や Twitter などでは顔が見えずに強い言葉が飛び交いがちですが、
そういう場所でのバカな人を除けば、間違っていたって常識を知らなくとも怒られることはないはずです。
と書いたのですが、実際 Twitter などではマサカリと呼ばれる指摘が飛び交うことがあります。
誤った内容のブログやツイートに対して、厳しいツッコミをしている場面を目にしたことがあります。
あまり意識してはいませんでしたが、もしかすると僕もマサカリを投げていたかもしれません。
大抵の場合、マサカリを投げている彼ら(通称モヒカン)には悪気はありません。
目の前で覚え間違いをしている、もしくは勘違いをしている人がいたので、それをただしているだけなのです。
あなたも「1 + 1 = 6」と言ってる甥っ子がいたら、そうじゃないよ、「1 + 1 = 2」だよ、と訂正を入れるでしょう?
ですから、もしあなたがマサカリを受けたと感じた時は、彼らの言葉に耳を傾けてみてください。
間違えていたのか、もしくは言葉が足りなかったのかもしれません。
おかしいな? と感じたら、聞き返してみると詳しく教えてもらえるはずです。
見ず知らずの人から指摘をうけたとき、つい個人攻撃されていると身構えてしまいがちですが、
多くの場合はシンプルに間違いへの指摘をしているだけということが多いはずです。
むっ、としたら、一杯お茶を飲んでメッセージを見直すといいかもしれません。
でも、ここにネット特有の現象がかさなると頭の痛いことになります。
ひとつはビッグマウス癖。必要もないのにわざわざ強い言葉を使ってしまうという悪癖です。
もうひとつは集中砲火。Twitter などでは話題が広まる速度が早すぎて、マサカリが集中砲火になってしまうことがあります。
もしこういった状況に陥った場合は、一晩寝てからメッセージを見るとよいかもしれません。
ちなみに、この記事を見ているモヒカン諸君はそういうことはしないように。
まとめ
もし勉強会やコミュニティに参加するのを迷っている人は、一度飛び込んでみたらいいんじゃないでしょうか。
もう一度書くと
- 技術力や知識はあとから身につけていけばいい
- 正しいことを言わなくてもいい、間違ったことを言ってもいい
- マサカリは単なる指摘
です。
あなたが感じている不安って、未知への不安から来ているのかもしれません。
懇親会やランチに参加して、他の参加者としゃべってみると簡単に乗り越えられるとおもいますよ。
僕ら(コミュニティにいる側)もあなたが参加してくれるのを待ってますよ。
なにかお手伝いできることがあったら、言ってください!
勉強会とかコミュニティって、やっぱりハードル高く感じるし、恐縮したり緊張したりするよねえ。どうやったらそれを下げられるか、飛び越せるのかみんな考えてるんだよね。
@qryuu 今日、ある人と話してたんですけど、これって常識かな?聞いていいのかな?みんな知ってる(はずだ)から、質問したらバカにされちゃうかも…と考えていたそうなので、そういう概念を壊せる場が欲しいですねえ。
2013-03-19 22:14:52 via Echofon to @qryuu
質問がある人が発表する会とか、できたらいいのかな。普段から疑問に思ってるんだけど、これってどういうことなの?ってのに、会場が応えるやつ。司会力がある人がさばく感じ。
Enjoy hacking!
おまけ: 技術力がものさし論
この話のきっかけになった方とは、もうひとつ話していたことがあります。
技術力が高い人が偉い、という風習です。
確かに技術力が高い、知識が多い人は存在感がありますし、皆から尊敬される傾向にあります。
反対に、勉強をはじめたばかりの初学者はなんとなく自分のことを卑下しがちです。
技術中心のコミュニティですから、そういったヒエラルキーをイメージしがちですが、
このイメージは半分正しく半分間違っています。
出来る人が尊敬されるのはその通りです。
彼らはそれまでの努力が実って、高い技術力や広い知識を持っているのですから、それを讃えて
他の人から尊敬されることが多いです。
しかし、初学者を「馬鹿にする」文化はありません。
誰しも通った道ですし、単にその技術に触れるのが早かったか遅かったかだけの違いでしかありませんから。
もし初学者をバカにしている人を見かけた場合は、その「人間として劣った人」は放っておいて、
自分の興味のある勉強を続けるといいでしょう。
もうひとつ大きな視点で見たとき、技術が出来るというのは大したことではありません。
世の中には楽しいことがたくさんあります。
コミュニティにいると「技術がすべて」と近視眼的になりがちですが、そんなことは全くありません。
旅行に行っても、ゲームをやっても、昼寝してても、映画を見に行ってもいいはずです。
勉強しなくちゃいけないんだ、と強迫観念にかられる必要はありません。
もしモヤモヤしているのであれば、せっかくですから週末は桜でも見に行ってみてはいかがでしょうか。